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SBTとは?認定要件やメリットを詳しく解説


 

SBTとは?認定要件やメリットを詳しく解説

2016年11月4日にパリ協定が発効し、途上国を含む多くの国を対象として、温室効果ガスの排出削減義務が課されました。(※)
SBT(Science Based Targets)は、いわばその企業版です。

近年は、大口の投資家の間でESG投資という考え方がトレンドになりつつあります。目先の利益率やキャッシュフローだけでなく、環境問題や社会問題に取り組み、持続可能な経営を行っているかが投資判断に重要な影響を及ぼすようになりました。

SBTは環境問題の解決だけでなく、環境に配慮した経営をしていると投資家にアピールすることで、新たなビジネスチャンスを呼び込める取り組みです。

本記事では、SBTの認定要件や加入するメリットについて詳しく解説します。

資源エネルギー庁:今さら聞けない「パリ協定」〜何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~

 

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<目次>

1.SBTとは?

2.SBT認定を受けるメリット

3.SBTに認定されるための要件

4.【まとめ】SBTの認定要件や加入するメリットを知ろう


 

SBTとは?

SBTとは?

環境省によると、SBTとは「パリ協定が求める水準と整合した、申請時から5年~10年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標」のことです。[1]
2016年に発効したパリ協定では、温室効果ガスの主要排出国に対し、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つこと、そして1.5℃に抑える努力をすることが義務付けられました。[2]

SBTはこの削減目標を企業に適用したものです。SBTでは、企業自らの排出量削減だけでなく、サプライチェーンを3つのScopeに分類し、各Scopeで削減目標を達成することが求められます。[1]

 

中⻑期排出削減⽬標等設定マニュアル

【参照】中⻑期排出削減⽬標等設定マニュアル(P19)

 

サプライチェーン 定義
Scope1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

 

もしSBTの目標を達成した場合、投資家、顧客、サプライヤーなどのステークホルダーに対し、パリ協定の基準を満たす持続可能な企業であるという事実を示せます。

[1]環境省:SBT 概要資料

[2]資源エネルギー庁:今さら聞けない「パリ協定」〜何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~

 

SBTに参加する企業は年々増えている

環境意識の高まりにより、SBTに参加する企業は世界全体で年々増加しています。環境省によると、2023年3月時点で、SBT認定(SBT認証)を受けた企業は世界全体で2,554社、コミット(2年以内にSBT認定の取得を宣言)している企業は2,256社です。2022年3月の統計と比較すると、それぞれ82%、78%の増加となっています。


また日本企業のみに絞ると、2022年3月から2023年3月にかけての1年間で、261社がSBT認定を取得しました。すでに建設業や電気機器メーカーを中心として、601社の日本企業がSBTの認定を取得しています。
[1]

 

RE100との違い

SBTと並んで注目を集めているのが、RE100と呼ばれる国際的なイニシアチブです。環境省によると、RE100とは「2014年に結成した、事業を100%再エネ電力で賄うことを目標とする企業連合」を意味します。[3]RE100の目標は、化石燃料がもたらすさまざまなリスクを回避するため、事業活動で使用する電力を再生可能エネルギーに100%置き換えることです。

 

中⻑期排出削減⽬標等設定マニュアル

【参照】中⻑期排出削減⽬標等設定マニュアル(P39)

 

SBTもRE100も、どちらも地球温暖化などの気候変動対策を目標としているという点では変わりません。そのため、SBTやRE100は国際機関が中心となり、企業や投資家に温暖化対策を呼びかけるWe Mean Business(WMB)というプラットフォームの一部として位置付けられています。

 

中⻑期排出削減⽬標等設定マニュアル

【参照】中⻑期排出削減⽬標等設定マニュアル(P15)

[3]環境省:RE100について

 

SBT認定を受けるメリット

SBT認定を受けるメリット

企業が温室効果ガスの排出削減に取り組み、SBT認定(SBT認証)を受けるメリットは3つあります。

 

  • 環境問題に貢献できる
  • 投資家へのアピールにつながる
  • 従業員の環境意識を高められる

 

それぞれのメリットについて解説します。

 

環境問題に貢献できる

パリ協定に準じたSBTの削減目標を達成することで、さまざまな環境問題の解決に貢献できます。

 

  •  将来の気温上昇を抑制できる
  • 異常気象の増加を抑制できる
  • 生態系への悪影響を防止できる
  • 気候の変化による食料問題や水資源の枯渇を防止できる

 

投資家へのアピールにつながる

近年、機関投資家をはじめとした大口の投資家は、企業の環境問題への取り組みに注目しています。そうした企業は、これから気候変動、水資源、生物多様性などの環境問題に直面しても、事業活動が損なわれるリスクが低いからです。

このように企業の持続可能性を重視し、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)などの非財務情報を投資判断に組み込むことをESG投資と言います。

SBTの認定を取得すれば、ESG投資を重視する投資家に大きくアピールすることが可能です。ESG投資の広がりにより、SBTは競合他社との差別化や、新たなビジネスチャンスに結びつくものとなっています。

 

従業員の環境意識を高められる

SBTにコミットすることにより、従業員の環境意識を高めることも可能です。温室効果ガス削減という野心的な目標を提示することで、省エネ・再エネの導入、業務効率化や働き方改革の推進など、従業員の主体的行動を促す効果が期待できます。実際にP&Gの事例では、従業員のアイデアにより、2,500万ドルを超える規模の省エネ実現の可能性が生まれました。[4]

[4]環境省:SBT 詳細資料

 

SBTに認定されるための要件

 

SBTに認定されるための要件

SBTに認定されるかどうかは、サプライチェーン排出量(Scope1+2+3)に基づいて決まります。SBTで設定された削減目標は、申請した時点から5年以上先、10年以内という短期間で達成されなければなりません。

ここでは、SBTに認定されるための要件をScopeごとに解説します。[1]

 

サプライチェーン 削減目標
Scope1~2 1.5℃水準(少なくとも年4.2%削減)
Scope3 Well below 2℃水準(少なくとも年2.5%削減)

 

Scope1~2:1.5℃水準(少なくとも年4.2%削減)

Scope1〜2では、世界の平均気温上昇を1.5℃以内に抑えられるよう、温室効果ガスの排出量を少なくとも年4.2%削減することが求められます。

 

Scope3:Well below 2℃水準(少なくとも年2.5%削減)

Scope3では、パリ協定における「Well below 2℃水準」が適用され、温室効果ガスの排出量を少なくとも年2.5%削減しなければなりません。ただし、Scope3の排出量がサプライチェーン全体の排出量の40%を下回る場合、Scope3の目標設定は免除されます。

 

【まとめ】SBTの認定要件や加入するメリットを知ろう

SBT認定(SBT認証)とは、パリ協定に準ずる温室効果ガスの排出削減目標のことです。SBTの目標を達成すると、環境問題に貢献できるだけでなく、投資家へのアピールにもつながります。今後、大口の投資家を呼び込むには、目先のリターンだけでなく、企業としての持続可能性を示すことが欠かせません。

SBTの認定要件や加入するメリットを知り、温室効果ガス削減に向けて取り組みましょう。

 

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