バイオマス発電の仕組みと持続可能性:FIT/FIP制度の新基準やライフサイクルGHG削減率、地域貢献の価値を徹底解説

2024.03.06
2026.08.27
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近年、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速する中で、太陽光や風力と並び、重要な役割を担っているのが「バイオマス発電」です。バイオマス発電は、生物由来の資源(バイオマス)を燃料として発電する仕組みであり、単なる再生可能エネルギーとしての価値だけでなく、廃棄物の有効活用や地域産業の活性化といった多面的なメリットを有しています。
しかし、その一方で、燃料の調達過程における環境負荷や、ライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)排出量など、真に「持続可能」であるかどうかが厳しく問われるようになっています。2023年度からはFIT(固定価格買取制度)やFIP(フィードインプレミアム)制度においても、ライフサイクルGHGの削減率が認定要件に加わるなど、制度面での大きな変化が起きています。
本記事では、バイオマス発電の基本的な仕組みから、最新の制度動向、電力調達における選択基準、そして地域社会に与える影響までを詳しく解説します。

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バイオマス発電の定義と主な種類

バイオマス発電は、動植物などの生物から生まれた有機性資源を燃料として利用する発電方式です。化石燃料とは異なり、資源が再生可能であること、また植物が成長過程で吸収するCO2と燃料として燃焼する際に生じるCO2が理論上相殺されることから、「カーボンニュートラル」なエネルギー源と位置づけられています。ただし、栽培・伐採、加工、輸送、土地利用変化などを含むライフサイクル全体ではGHGを排出し得るため、燃料の由来や調達方法を踏まえた評価が必要です。

バイオマス発電の仕組み

バイオマス発電は、その燃料の性質や変換プロセスによって大きく以下の形態に分かれます。

  • 直接燃焼方式: 木質チップやペレットなどをボイラーで燃焼させ、発生した蒸気でタービンを回して発電する方式です。
  • ガス化方式: バイオマスを熱分解して可燃性ガスを取り出し、そのガスを燃料としてエンジンやタービンで発電します。
  • 生物化学的変換(メタン発酵): 家畜排せつ物や食品廃棄物を微生物の力で発酵させ、発生したメタンガスを燃料にします。

特に、発電時に発生する熱を同時に利用する「熱電併給(CHP:Combined Heat and Power)」は、「コジェネ(コージェネレーションシステム)」とも呼ばれ、発電時の排熱も有効利用できるため、熱需要と組み合わせられる場合には、燃料が持つエネルギーをより有効に活用できる手法です。

燃料となる資源の分類

バイオマス燃料は、その由来によって多岐にわたります。

燃料区分具体的な資源例
木質系間伐材、林地残材、製材端材、建設資材廃棄物
農業・食品系稲わら、もみ殻、パーム核殻(PKS)、食品加工残さ
廃棄物・畜産系家畜排せつ物、下水汚泥、一般廃棄物(ゴミ)
FIT/FIP制度の買取時の区分についてはこちらをご確認ください

これらの資源は地域に分散して存在するため、地域分散型・地産地消型のエネルギー源としての価値が高いのが特徴です。

バイオマス発電の持続可能性と評価基準

バイオマス発電が自然エネルギーとして認められるためには、燃料の調達が持続可能な形で行われていることが前提となります。無秩序な森林伐採や、食料との競合を引き起こすような燃料利用は、環境・社会の両面で不適切とみなされるためです。

 FIT/FIP制度における燃料の持続性要件

日本のFIT(固定価格買取制度)およびFIP制度の認定においては、「燃料を安定的に調達することが見込まれること」が要件の一つとなっています。資源エネルギー庁は、バイオエネルギー発電に利用する燃料の持続性に関して、環境面だけでなく社会・労働の観点、さらに食料との競合についても適性を問う方針を示しています。

https://denki.marubeni.co.jp/column/fip

第三者認証(RSPO・ISO)の重要性

特定の燃料・燃料区分については、燃料のサプライチェーンにおける持続可能性やライフサイクルGHGを確認できる認証・証明の取得が求められます。

■バイオエネルギー燃料の持続性評価基準(一例)

  • RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議): 環境破壊や人権侵害のない、持続可能な方法で生産・流通されたパーム油であることを証明する国際認証制度。
  • RSB(持続可能なバイオ燃料に関する円卓会議):持続可能なバイオ燃料生産を保証する規格。
  • GGL(Green Gold Label):バイオマスや関連製品のサプライチェーンにおいて、合法性・持続可能性・社会的責任を保証する国際的な認証制度。

電力を購入する企業や自治体は、契約対象の発電設備そのものではなく、使用燃料、調達先、認証・証明書、トレーサビリティおよびライフサイクルGHG情報を確認することが重要です。

ライフサイクルGHG排出量の削減基準

近年、世界的に「ライフサイクルGHG(温室効果ガス)排出量」を重視する動きが拡大しています。これは、燃料の燃焼段階だけでなく、植物の生育、収集、輸送、加工までの全工程で排出されるGHGを算定し、バイオエネルギーの真の利用効果を明確にする考え方です。

 2023年度から導入された削減率要件

日本では、2023年度から木質バイオマスや農産物由来燃料等を対象に、ライフサイクルGHG(温室効果ガス)排出量の削減率がFIT/FIPの認定要件に追加されました。(削減率の基準は燃料区分によって異なります)

2022年度以降に新規でFIT・FIP認定を受けた1,000kW以上の発電設備は、従来の火力発電(2030年度の想定値)と比較して、一定以上の削減率を達成しなければなりません。また、2024年度からは廃棄物系のバイオマスに対しても同様の基準が適用されています。

 2030年度に向けた段階的な目標値

この削減率基準は、今後さらに厳しくなることが決まっています。

■FIT/FIP制度におけるライフサイクルGHG削減率の基準

適用対象・時期求められる削減率(火力発電比)
2022年度以降の認定設備(比較対象電源のライフサイクルGHGに対し)50%以上の削減
2030年度以降(比較対象電源のライフサイクルGHGに対し)70%以上の削減
(出典:資源エネルギー庁 調達価格等算定委員会への報告(案)について

2022年度より前に認定を受けた設備についても、ライフサイクルGHG排出量を自主的に開示することが求められており、需要家側はこれらの情報を確認した上で電力を選択することが望ましいとされています。

電力調達におけるバイオマス発電の選択基準

企業や自治体がバイオマス発電による電力を調達する際、単に「再生可能エネルギーだから」という理由だけで選ぶのではなく、以下の4つの基準を考慮することが推奨されています。

■自然エネルギーの電力を選択する基準

基準要件不適切な例
環境負荷建設・運転時の環境影響が小さい森林を過度に伐採して建設された発電所
持続性燃料調達が持続可能である燃料の供給源が不明確なバイオマス
追加性新設再エネ設備への投資・導入を促す調達である運転開始から極めて長期間経過した設備
地域貢献地域経済や雇用に寄与している利益がすべて地域外に流出する事業
(出典:自然エネルギー財団「電力調達ガイドブック」に基づき作成【埋め込み式内部リンク設置希望】

 環境負荷と持続性の確認

  • 環境負荷と持続性:発電設備の建設や運転が地域環境に悪影響を及ぼしていないかを確認します。例えば、森林に悪影響を及ぼすような燃料調達や、燃料供給に限界がある設備は、持続可能性の観点から不適切とみなされる可能性があります。

追加性と地域貢献の考慮

  • 追加性(Additionality): 新しい自然エネルギー設備を新設することで、新たな再エネ電源設備に対する投資を促進する効果があるかどうかを重視します。運転開始から長期間経過した設備よりも、新しい設備の方が脱炭素への寄与(追加性)が高いと評価されます。
  • 地域貢献: 地域社会が発電事業の恩恵を受けているかどうかも重要な指標です。地元での雇用創出(伐採や発電所運営)、産業振興、廃棄物削減などが含まれます。

地域分散型エネルギーとしての価値と課題

バイオマス発電は、地域資源を活用する比較的小規模な設備では、地域に根ざした分散型エネルギーとして機能し得ます。一方で、輸入燃料に依存する大規模設備もあるため、すべてのバイオマス発電が地域分散型であるわけではありません。

地産地消とレジリエンスの向上

バイオマス発電は、災害時のレジリエンス(回復力)向上に大きく寄与します。例えば、自営線を用いたマイクログリッドを構築することで、停電時でも公共施設や避難所に電力を供給し続けることが可能です。

高知県梼原町や岡山県高梁市の事例では、地域の木質バイオマスを活用した熱電併給システムを導入し、地元の雇用創出(伐採会社や発電所での雇用)とエネルギーの地産地消を同時に実現しています。

※参考:高知県梼原町 森林資源の循環利用を目指す町「梼原町」(高知県)
※参考:岡山県高梁市 高梁木質バイオマス発電事業に伴う熱供給事業(環境省)

燃料安定調達とコスト低減の課題

一方で、バイオマス発電には特有の課題も存在します。燃料の調達・加工・輸送にかかる費用は、バイオマス発電の事業性を左右する主要なコスト要因です。そのため、燃料需給の逼迫や価格高騰が事業の安定継続に影響します。

今後の展望として、以下の対応が求められています。

  • 国産燃料の供給拡大: 林地残材の利用体制構築や、早生樹の育林手法の確立。
  • エネルギー効率の向上: 熱利用・熱電併給の推進による地域内エネルギー循環。
  • 自立化の検討: FIT/FIP期間終了後を見据えたコスト構造の改善。

また、九州や東北エリアなどでは、再生可能エネルギーの出力制御が実施されるケースが増えていますが、専焼バイオマス発電所の中には、技術的な理由や契約上の位置づけにより、出力制御下でも一定の稼働を維持している事例も見られます。

まとめ

バイオマス発電は、カーボンニュートラルの実現だけでなく、廃棄物処理、地域経済の活性化、そして災害時のエネルギー保障という多面的な役割を担う重要な電源です。
しかし、その価値を最大限に引き出すためには、「燃料の持続可能性」と「ライフサイクルGHGの削減」という二つの高い壁を越える必要があります。2023年度から導入されたライフサイクルGHG削減率の基準は、一定規模以上の2022年度以降認定案件について、2030年3月末までに使用する燃料は50%以上、2030年度以降に使用する燃料は70%以上の削減を求めるものです。バイオマス発電が真にクリーンなエネルギーであることを証明するための重要な指標となります。
電力を利用する企業や自治体にとっては、発電事業者が提供する情報の透明性を確認し、地域に貢献し、かつ環境負荷の低い電力プランを選択することが、持続可能な社会への大きな一歩となります。今後、技術革新によるコスト低減と燃料供給網の整備が進むことで、バイオマス発電が地域の自立を支える柱となることが期待されます。

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