ESGの意味やSDGsとの違いをわかりやすく解説

2024.05.31
2024.05.31
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機関投資家や金融機関を中心として、ESGの要素を取り入れた投資(ESG投資)が拡大しています。ESG投資とは、投資先の企業価値を社会問題や環境問題など、非財務情報(環境・社会・ガバナンスに関する情報)の観点から評価する手法です。機関投資家・金融機関だけでなく、企業にとっても企業ブランドの向上やESG投資に関心のある機関投資家・金融機関からの信頼獲得(資金調達において優位)などのメリットがあることから注目を集めています。

また、ESGの類似用語にはSDGsやCSRがあります。SDGsは持続可能な世界を目指す国際目標、CSRは企業の社会的責任を示す概念です。どちらもESGと関連する部分があるものの、根底は異なります。

本記事では、ESGの意味や、CSRとSDGsとの違い、ESG投資の代表的な手法について詳しく解説します。

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注目が集まるESGとは?

ESGとは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)という3つの英語の頭文字を合わせた言葉です。企業経営において従来の基準となるキャッシュフローや利益率などの財務情報に対してだけでなく、気候変動問題などの環境問題や、企業の社会的責任などの非財務情報を重視する考え方をESGといいます。

ESGという言葉は、2006年に国連が策定した、責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)をきっかけとして、今では世界的に広がりました[1]

ここでは、ESGの意味やESGの考え方を元にしたESG投資について簡単に説明します。

[1]経済産業省 資源エネルギー庁「令和2年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2021)」

ESGの意味

ESGにおける環境・社会・企業統治には、それぞれ以下のような意味があります。

ESGの3要素意味
環境(Environment)気候変動や資源の枯渇など、企業の長期的な業績に影響しうる環境問題の視点
社会
(Social)
ダイバーシティや女性活躍、労働問題など、企業の信用や評判に影響しうる社会的責任の視点
企業統治(Governance)経営の透明性や内部統制、株主の権利保護など、企業の投資リスクに影響しうるコーポレートガバナンスの視点

環境・社会・企業統治の3つは、いずれも企業活動の持続可能性に影響を与える要素です。例えば、気候変動が進行すると、将来的に資源の枯渇や災害によるダメージを受けたり、政府による事業規制の対象になったりと、企業活動を続けていく上で無視できない影響が生じる可能性があります。

ESG投資とは?

こうしたESGの考え方を投資判断に組み込んだのが、ESG投資と呼ばれる手法です。財務省は、ESG投資を財務的な要素に加えて、非財務的な要素であるESG(環境、社会、ガバナンス)を考慮する投資と定義しています[2]

ESG投資は、2015年9月に厚生労働省所管の年金積立金管理運用独立行政法人が国連責任投資原則に署名し、資産運用にESGを取り入れたことで、日本国内で急速に広がりました[3]。2016年には約56兆円だったESG投資額は、2022年には493兆円を超え急増するなど、大きな関心を集めています[4]

ESG投資を積極的に推進しているのは、GPIFをはじめとした機関投資家や金融機関です。機関投資家や金融機関は、運用する資産の規模が大きく、また運用期間も長期にわたります。投資先企業の長期的なリスク・リターンを評価するには、従来の基準とされているキャッシュフローや利益率などの財務情報だけでなく、非財務情報であるESGの視点が必要不可欠です。

ESG投資の広がりは、企業にとって新たな投資や資金調達を呼び込む機会でもあります。企業活動にESGの視点を導入し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを公表すれば、企業ブランド向上の他、ESG投資に積極的な機関投資家や金融機関からの信頼獲得といったメリットを享受できます。

ただしアメリカでは、ESG投資市場が縮小傾向にある点に注意が必要です。特に共和党系の団体は反ESGキャンペーンを掲げており、米大統領選でトランプ氏が大統領に返り咲いた場合、ESG投資がさらに伸び悩む可能性があります。

一方、日本はこうした動きと逆行しており、世界でもESG投資市場の動きが活発な地域の一つです。

[2] 財務省「ESG投資について」
[3]年金積立金管理運用独立行政法人「国連責任投資原則への署名について」
[4]国土交通省「民間投資による良質な都市緑地の確保に向けた評価のあり方検討会中間とりまとめ」

ESGとSDGsやCSRの違い

ESGとSDGsやCSRの違い

ESGとよく似た言葉として、SDGs(Sustainable Development Goals)やCSR(Corporate Social Responsibility)があります。ここでは、ESGとSDGsとの違い、ESGとCSRとの違いをそれぞれ説明します。

ESGとSDGsの違い

SDGsとは、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称で、2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された国際目標です。SDGsは、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」をスローガンに掲げ、経済社会の持続可能性を高めるため、2030年にあるべき姿である17のゴールと具体的な目標を掲げた169のターゲットを設けています。[5]

ESG(企業・投資家が主体)における環境・社会・企業統治の3つの要素も、国連を主体としたSDGsの目標に含まれているため、企業はESGを取り入れた活動を通じて、SDGsにも貢献することが可能です。

[5]外務省「SDGsとは?」

 ESGとCSRの違い

CSRとは、日本語で企業の社会的責任と訳され、ESGにおける社会(Social)の部分とよく似た考え方です[6]。ただし、ESGには企業が社会的責任を果たし、長期的な投資価値を向上させる意味があるのに対して、CSRは社会の一員として、さまざまな社会課題の解決に取り組むべきという倫理的な視点が根底にあります。

[6]厚生労働省「CSR(企業の社会的責任)」

ESGを経営に取り入れるメリット

ESGを経営に取り入れるメリット

従来のキャッシュフローや利益率といった短期的な利益を重視する経営戦略に加えて、将来を見据えたESG経営を取り入れるメリットは以下のとおりです。

  • 企業の長期的な投資価値が高まる
  • 従業員の働きがいが生まれる
  • 優秀な人材を確保しやすくなる

 企業の長期的な投資価値が高まる

1つ目のメリットは、企業の長期的な投資価値が上昇し、機関投資家や金融機関からの信頼獲得につながる点です。

日本では、ESG関連の資金の流れが拡大傾向にあり、企業の環境・社会・企業統治に向けた取り組みへの関心が高まっています。見せかけだけの環境活動(グリーンウォオッシュ)への忌避感は見られるものの、長期的なリスク・リターンを重視する機関投資家や金融機関にとって、ESG経営に取り組む企業は魅力ある投資先となっています。

企業の投資価値向上につながるESG経営の一例として、電力の再エネ化・脱炭素化が挙げられます。温室効果ガスを排出する化石エネルギーから、環境にやさしい太陽光、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーに転換する取り組みは、RE100などの国際的な影響力が大きい指標の存在もあって、投資家から好まれやすい活動の一つです。

こうした電力の再エネ化・脱炭素化は、再生可能エネルギーの発電設備を持たない企業も実現可能な取り組みです。例えば、Jクレジットや非化石証書といった環境価値の購入によって、発電事業者にも利益を還元しながら再エネ電力を調達できます。

従業員の働きがいが生まれる

2つ目のメリットは、従業員の働きがいやモチベーションが生まれる点です。さまざまな社会的課題に対し積極的に取り組む姿勢を見せれば、従業員が働くことを誇りに感じられる(組織へのエンゲージメントが高くなる)ようになります。

実際に従業員の定着率や勤続年数は、ESGスコア(企業の社会的課題への取り組みレベル)と関係があります。経済社会システム総合研究所によると、ESGスコアが上位25%に入る企業は、その他の企業と比べて従業員の定着率が約4%高く、勤続年数の平均も約2年長くなっています[7]

[7]一般社団法人 経済社会システム総合研究所「社会的課題への取組みが企業の人材確保力に及ぼす影響の分析」

優秀な人材を確保しやすくなる

3つ目のメリットは、優秀な人材を確保しやすくなる点です。環境活動などへの取り組みを通じて、企業イメージを向上させることで、人材確保力を高められます。

先ほどの経済社会システム総合研究所の調査によると、ESG スコアが上位25%に入る企業は、就職情報サイトにおける就職ランキングの上位に入る確率も高くなっています[7]

このようにESG経営は、企業の投資価値向上につながるだけでなく、採用活動や従業員の働きがいの面でもメリットのある取り組みです。

【まとめ】ESGの正しい意味を理解して、持続可能な経営を実現しよう

ESGは、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の3つの視点から、企業活動の持続可能性を評価する考え方です。従来の短期的な利益獲得を目指す経営軸と並行して将来を見据えたESG経営を積極的に行うことで長期的な投資価値を高め、機関投資家や金融機関からの信頼獲得(資金調達において優位)といったメリットを得られます。

また日本では、ESGの考え方に基づくESG投資への関心は依然として高いので、ESGの正しい意味やメリットを理解し、経営戦略に取り入れましょう。

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