EV充電インフラと企業のモビリティ戦略:持続可能な未来に向けた重要な取り組み

近年、気候変動への対応として環境意識が高まり、電気自動車(EV)の普及が急速に進んでいます。この流れを受けて、EV充電インフラの整備は企業にとって重要な課題となっています。企業のモビリティ戦略において、EV充電インフラの導入は持続可能な経営を実現するための鍵となる要素です。本コラムでは、EV充電インフラの重要性と、それを活用した企業のモビリティ戦略について、国内外の政策動向や最新のエネルギー需要の推移を踏まえながら詳しく解説します。
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目次
EV充電インフラの現状と課題

国内外の政策動向
世界各国が脱炭素社会の実現に向けて様々な政策を打ち出しています。特にEUや米国では、EV普及を後押しするための補助金や税制優遇措置が多数導入されています。例えば、EUは再工業化を加速し、グリーン産業を支援する施策を発表し、EV充電インフラの整備を推進しています。米国のインフレ削減法(IRA)は、バイデン前大統領下で制定された法律で、クリーンエネルギーへの投資を10年間にわたりサポートし、EVインフラの拡充を後押ししています。
一方、日本では、環境に優しい技術への投資を促進するために『グリーンイノベーション基金』が設立されました。この基金を利用して、1,130億円の予算内で、電気自動車(EV)の普及と充電ステーションの整備が進んでいます。また、COP28の決定文書では、世界全体の進捗と1.5℃目標の間に隔たりがあることが指摘され、「世界全体で再エネを3倍、省エネを2倍」推進する必要性が強調されています。加えて、「原子力」が気候変動対策として初めて明記され、日本も「原子力3倍宣言」に賛同するなど、エネルギー政策の多様化が進んでいます。
インフラ整備の現状
日本国内では、都市部を中心にEV充電インフラの整備が進んでいますが、地域ごとのインフラ整備の格差が課題となっています。ASEAN諸国の電力需要の推移を見ると、エネルギー需要が急増しています。このような状況下で、日本のGX(グリーントランスフォーメーション)の取り組みは、アジア全体のエネルギー需要増加に対応するための基盤として期待されています。さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)によるエネルギー需要の増加や、テレワーク率の減少、節電・省エネの動き、データセンターや半導体工場の新設などが、日本の電力需要に影響を与えています。総合エネルギー統計や第6次エネルギー基本計画に基づくと、カーボンニュートラルとエネルギーセキュリティの両立が求められており、これに対応するためのEV充電インフラの整備が急務となっています。
企業のモビリティ戦略におけるEVの役割

環境負荷の低減
EVは従来のガソリン車に比べてCO2排出量が大幅に削減できるため、企業の環境戦略において重要な役割を果たします。特に運輸部門におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、商用電動車の導入は不可欠です。COP28の決定文書でも強調されたように、グローバルな気候目標に貢献するためには、EVの普及が重要な鍵となります。
コスト削減と経済的メリット
EVの運用は、燃料費の削減やメンテナンスコストの低減につながります。さらに、V2H技術を活用することで、非常時の電源としても利用可能となり、エネルギーコストの最適化が図れます。日本のエネルギー需要の増加に対処するためには、再生可能エネルギーと連携したEVインフラの導入が経済的なメリットを提供します。企業は長期的なコスト削減と経済的なメリットを享受できるだけでなく、エネルギー自給率の向上にも貢献できます。
EV充電インフラ導入の具体的なステップ

インフラ整備のための政府支援
政府はEV充電インフラの整備を支援するために、様々な補助金や助成金を提供しています。例えば、再エネ自給率最大化や防災向上を目指した自立・分散型エネルギーシステムの構築支援があります。これらの支援を活用することで、企業は効率的に充電インフラを導入できます。政府の支援策は多岐にわたりますが、充電インフラの設置に必要な初期投資を軽減するための補助金、設置場所の確保や整備に関する技術支援、さらには運用後のコスト削減を目指した税制優遇措置などが含まれます。企業はこれらの支援を最大限に活用し、充電インフラの設置を迅速かつ効率的に進めることが可能です。また、自治体レベルでのインセンティブやパートナーシップの構築も、インフラ整備を促進するために重要な要素となります。
【主な政府の支援策など】
支援策 | 内容 | 対象者 | 補助率・上限額 |
---|---|---|---|
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金 | EVやPHVの購入および充電設備の設置に対する補助金 | 個人、法人、地方公共団体 | 車両購入:最大85万円(軽EVは最大55万円)、給電機能付きで上乗せ補助あり。 充電設備設置:本体価格の50%、設置費用の100% |
充電インフラ整備補助金 | EV・PHV用の充電設備導入を支援する補助金。 | 地方公共団体、法人、マンション管理組合等(個人宅向けは対象外) | 充電器本体費用:最大50%補助、工事費用:補助対象経費の100%または一部(上限額あり) |
自立・分散型エネルギーシステム構築支援 | 再生可能エネルギーの自給率最大化や防災機能向上を目指したエネルギーシステム導入への支援。 | 地方公共団体、法人(地域エネルギー事業者、自治体と連携する事業者) | 補助対象経費の1/2または2/3(事業規模による)大規模モデル事業では数億円規模の補助あり |
税制優遇措置 | EV導入や充電インフラ整備に伴う税制上の優遇措置。 | 法人、個人 | 環境性能割(EV等は0%)、エコカー減税(重量税免除)、グリーン化特例(翌年度自動車税75%減税)、法人向けグリーン投資減税(即時償却または10%税額控除) |
EV充電インフラとエネルギーマネジメントの連携

V2H(Vehicle-to-Home)技術の活用
V2H技術により、EVのバッテリーを家庭や企業の電力供給源として活用することが可能です。これにより、エネルギーの自給自足が促進され、電力需要のピークシフトや防災対策にも寄与します。日本のエネルギーセキュリティ確保のためには、V2H技術の普及が重要なステップとなります。さらに、V2H技術はエネルギーの効率的な使用を助け、再生可能エネルギーの不安定な供給を補完する役割を果たします。これにより、企業はエネルギーコストの最適化と同時に、持続可能なエネルギー使用を実現できます。
再生可能エネルギーとのシナジー
EV充電インフラと再生可能エネルギーを組み合わせることで、持続可能なエネルギーマネジメントが実現します。例えば、太陽光発電や風力発電と連携した充電インフラの導入により、クリーンエネルギーの利用率を向上させることができます。これにより、日本の再エネ自給率向上にも貢献し、エネルギーの安定供給が実現します。太陽光発電システムとEV充電ステーションを連動させることで、昼間の余剰電力を効率的に充電インフラに供給することが可能となり、エネルギーの無駄を最小限に抑えることができます。
また、風力発電との統合も重要です。風力発電は昼間や夜間といった特定の時間帯に電力を供給することが多いため、EV充電インフラとの連携により、再生可能エネルギーの変動を吸収し、安定した電力供給を実現します。これにより、企業は再エネの利用を最大化しつつ、電力コストを削減することが可能となります。
未来に向けた企業の取り組み

スマートモビリティ社会の構築
未来のスマートモビリティ社会の実現には、EV充電インフラの高度な整備が不可欠です。企業は、IoT技術を活用した充電ステーションの管理や、データ分析による効率的なエネルギー使用を推進しています。さらに、生成AI等の先進技術を活用することで、充電インフラの最適化や需要予測が可能となり、効率的なエネルギー運用が実現します。これにより、企業はエネルギーリソースの最適な配分を可能にし、持続可能なモビリティを支えるインフラを構築しています。また、スマートモビリティ社会では、車両間のコミュニケーションや自動運転技術との統合も進められています。これにより、交通の効率化や安全性の向上だけでなく、エネルギー消費の最適化も図られます。企業は、これらの技術を積極的に導入することで、競争力を高めながら持続可能な社会の実現に貢献しています。
持続可能なエネルギー戦略の推進
企業は、持続可能なエネルギー戦略の一環として、EV充電インフラの導入を進めるとともに、再生可能エネルギーの利用拡大にも力を入れています。これにより、環境負荷の低減とエネルギーコストの最適化を両立させることが可能となります。さらに、「AZEC」の取り組みを通じて、日本の技術やファイナンスを活用し、アジアのGX(グリーントランスフォーメーション)、そして世界のGXに貢献することが期待されます。また、企業はエネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入し、リアルタイムでのエネルギー使用状況を監視・管理することで、エネルギーの無駄を削減し、効率的なエネルギー運用を実現しています。これにより、企業は持続可能なエネルギー戦略を推進し、長期的なエネルギーコストの削減を図ることができます。
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まとめ

EV充電インフラと企業のモビリティ戦略は、持続可能な未来を築くための重要な要素です。政府の支援策を活用し、企業は環境負荷の低減と経済的なメリットを両立させる戦略を策定する必要があります。さらに、V2H技術や再生可能エネルギーとの連携を深めることで、エネルギーマネジメントの最適化を図り、スマートモビリティ社会の実現に向けて取り組むことが求められます。これらの取り組みにより、企業は持続可能な経営を実現し、社会全体の環境改善に貢献することができるでしょう。今後、日本およびアジア全体のエネルギー需要の増加に対応するため、EV充電インフラのさらなる拡充が急務となります。企業は、この動向を踏まえ、積極的にEV充電インフラの導入とエネルギー戦略の見直しを行うことで、持続可能な社会の実現に向けたリーダーシップを発揮することが期待されます。