非化石証書とは?メリットや注意点を徹底解説
2018年5月から、電力の需要家向けに非化石証書の取引が始まりました。[1]非化石証書を購入すれば、環境にやさしい再生可能エネルギーを実質的に導入したものとして扱われます。RE100など、再エネ電力に関連した企業連合への参加を検討している方にとってもおすすめの制度です。
本記事では、非化石証書の種類やメリット、購入するときの注意点を分かりやすく解説します。
[1]資源エネルギー庁:2018年5月から始まる「非化石証書」で、CO2フリーの電気の購入も可能に?
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目次
非化石証書とは?制度の概要や仕組みを解説
環境省によると、非化石証書とは、石油や石炭などの化石燃料を使っていない「非化石電源」で発電された電気が持つ「非化石価値」を取り出し、証書にして売買する制度を意味します。[2]
非化石電源とは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどのFIT電源(固定価格買取制度の対象となる再エネ)や、大型水力、原子力などの非FIT電源など、化石燃料に依存しない発電方法を表す言葉です。非化石証書は、非化石電源で発電された電気と環境価値(CO2を排出しない)を分離し証書化したものです。電気と合わせて非化石証書(環境価値)を使用することでCO2を排出せず環境に負荷をかけない電気として利用することが可能になります。主に小売電気事業者や電力の需要家(企業など)が、再生可能エネルギーを調達する手段の一つとして利用しています。
非化石証書の仕組み
非化石証書の取引は2018年5月から始まりました。[注1]非化石証書が創設された理由は、非化石電源のうち、主にFIT制度の対象となる再エネ電力の取引を行う市場構造に原因があります。
FIT制度とは、「再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度」です。[3]
FIT電源を買い取るためのコストは、これまで再エネ賦課金という形で国民一人ひとりが負担してきました。
しかし、再エネ電力には、「環境にやさしい電力を利用したい」「温室効果ガスの排出量を削減したい」といった企業から大きな需要があります。こうした再エネ電力の需要(=環境価値)をもっと活かすため、非化石電源の価値自体を証書化し、希望する企業がオークション形式で入札できるようにしたものが非化石証書です。
2018年5月の時点で、非化石証書の購入は小売電気事業者にしか認められていませんでしたが、2021年11月から企業などの需要家も取引が可能になりました。[2]
企業向けの電力メニューにも、FIT電源と非化石証書を効果的に組み合わせ、事業の非化石電源比率を大きく高められるプランが登場しています。
3種類の非化石証書
非化石証書といっても、大きく3種類に分けられます。
- FIT非化石証書
- 非FIT非化石証書(再エネ指定あり)
- 非FIT非化石証書(再エネ指定なし)
非化石証書の購入を検討している企業は、3つの非化石証書の特徴や違いについて知っておきましょう。
FIT非化石証書
FIT非化石証書とは、固定価格買取制度(FIT)の対象となる再エネ電源の環境価値を証書化したものです。FIT非化石証書を購入すると、実質的に再エネ電源を導入したものとして扱われます。FIT非化石証書の対象となるのは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの5種類の電源のみです。FIT非化石証書は、日本卸電力取引所(JEPX)のオークションを通じて購入でき、最低価格は1kWh当たり0.3円に設定されています。[2]
非FIT非化石証書(再エネ指定あり)
FIT非化石証書に対し、固定価格買取制度の対象とならない非FIT電源を証書化したものを非FIT非化石証書と言います。非FIT非化石証書には、再エネ指定、再エネ指定なしの区分があり、再エネ電力を導入したという扱いになるのは「再エネ指定」の区分です。非FIT非化石証書(再エネ指定)には、大型水力の他、固定価格買取制度による買い取り期間が終了した再エネ電源(卒FIT)などが含まれます。
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)とは、非化石エネルギーであるものの、再生可能エネルギーでない電源を証書化したものです。主に原子力エネルギー等があります。
非FIT非化石証書(再エネ指定なし)を購入しても、再生可能エネルギーを導入したという扱いにはなりませんが、小売電気事業者の場合、高度化法(「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」)の要件を満たすことが可能です。
非化石証書を利用するメリット
企業が非化石証書を利用するメリットは2つあります。
- ESG経営の実現につながる
- RE100などの企業連合への加盟に利用できる
非化石証書の購入は、今注目を集めるESG経営に有効なだけでなく、RE100をはじめとした国際的な企業連合への加盟にも利用できます。
ESG経営の実現につながる
ESG経営とは、環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)という3つの視点に立った、持続可能な経営手法を指します。
将来、気候変動や水資源の減少、生物多様性の危機といった環境問題が深刻化すると、事業活動にさまざまな負の影響が生じる恐れがあります。ESG経営は、目先の利益率やキャッシュフローではなく、環境問題や社会問題の解決に向けて積極的に取り組み、事業の持続可能性を高める経営手法です。ESG経営には、長期的な投資リスクを重視する機関投資家の関心を集められるというメリットもあります。
RE100などの企業連合への加盟に利用できる
非化石証書を購入すれば、既存の電力契約を見直すことなく、自社の再エネ電力の比率を高められます。非化石証書は、再エネ電力の導入を目的としたRE100などの企業連合への加盟に利用することも可能です。ただし、団体によって利用可能な非化石証書が異なるため、事前に要件を確認してください。例えば、RE100への加入を目指す場合、トラッキング付き非化石証書という種類の証書しか利用が認められていません。
非化石証書を利用するときの注意点
非化石証書の利用に当たって、注意点が2つあります。
- 種類によって発電方法が異なる
- 購入のための費用が発生する
非化石証書のメリットだけでなく、デメリットの面についても目を向けることが大切です。非化石証書のさまざまなリスクを考慮した上で購入してください。
種類によって発電方法が異なる
前述したように、非化石証書は大きくFIT非化石証書、非FIT非化石証書(再エネ指定あり)、非FIT非化石証書(再エネ指定なし)の3種類に分けられます。それぞれの証書によって、発電に利用される電源の種別が異なるため、自社の取り組み内容に合致しているか事前に確認しましょう。
購入のための費用が発生する
また非化石証書の購入には、一定の費用が必要です。非化石証書の購入価格はオークションによって決定されますが、種類ごとに最低価格が決められています。[2]
FIT非化石証書 | 非FIT非化石証書 | |
価格帯 | 最低価格:0.4円/kWh | 最低価格:0.6円/kWh |
非化石証書の価格はkWh単位で決定されるため、予算に合った量の証書を購入してください。
また、トラッキング付きの非化石証書の購入にあたり、トラッキング手数料という費用が追加されることも検討されており、制度の変更にも注意する必要があります。
【まとめ】非化石証書のメリットや注意点について知ろう
非化石証書は、化石燃料に依存しないクリーンなエネルギーを証書化し、自由に入札できるようにした制度です。2021年11月から、小売電気事業者だけでなく、一般企業などの電力需要家も非化石証書の取引が可能になりました。
非化石証書には、FIT非化石証書や非FIT非化石証書などの種類があります。非化石証書によっては、再エネ指定がないものもあるため、事前に電源の種別を確認しておくことが大切です。