高圧電力と低圧電力の違いや確認方法をわかりやすく解説

2024.03.06
2024.11.07
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2000年に電力の小売自由化(大規模工場やデパート・オフィスビル等が利用する特別高圧のみ対象)が始まり、電力会社(新電力)の新規参入が段階的に認められてきました。2004年4月・2005年4月には、高圧区分の電力小売(高圧電力)の自由化も決定し、中小規模のビルや工場において、利用者が電力会社を自由に選べるようになりました。[1]

高圧電力は、主にどういった用途で使われているのでしょうか。
また、一般家庭や商店などで利用される低圧電力との違いは何でしょうか。

本記事では、高圧電力の特徴や低圧電力との違い、高圧電力と低圧電力を見分ける方法を詳しく解説します。

[1]資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化って何?」

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高圧電力とは?

高圧電力とは?

高圧電力とは、電力会社によって提供される電力の契約区分の一つです。主に高圧電力は、中小規模のビルや工場などに供給されています。

高圧電力は、契約電力が50kW以上~2,000kW未満のものを指します。また、電気設備に関する技術基準を定める省令によって、供給電圧が直流で750V超~7,000V以下、交流で600V超~7,000V以下と基準が定められています。[2]

契約区分電圧契約電力電力自由化供給先
低圧直流:750V以下
交流:600V以下
50kW未満2016年4月から一般家庭や商店など
高圧直流:750V超~7,000V以下
交流:600V超~7,000V以下
500kW以上
50kW~500kW未満
2004年4月・2005年4月から中小ビルや中小規模工場など
特別高圧7,000V超2,000kW以上2000年3月から大規模工場やデパート、大型のオフィスビルなど

高圧電力は、標準電圧6,000Vの電気で送られてくるため、利用する際は受電設備(キュービクル)を設置し、利用者側で100Vや200Vに変圧する必要があります。

[2]e-Gov法令検索「電気設備に関する技術基準を定める省令」第2条

高圧電力は2種類ある

先述したように、高圧電力の契約電力の範囲は50kW以上~2,000kW未満と幅が広く設けられています。そのため、高圧電力の料金プランは、電力消費量が少ない事業者向けの高圧電力A(高圧小口)と、電力消費量が大きい事業者向けの高圧電力B(高圧大口)の2種類に分かれています。

料金プラン契約電力契約方法供給先
高圧電力A(高圧小口)50kW以上~500kW未満実量制小規模な工場やオフィスビルなど
高圧電力B(高圧大口)500kW以上~2,000kW未満協議制中規模の工場やオフィスビル、スーパーマーケットなど

高圧電力Aは50kW以上~500kW未満の電力が供給される方式で、主に小規模な工場やオフィスビルで利用されます。一方、高圧電力Bは500kW以上~2,000kW未満の電力が供給され、高圧電力Aの利用者よりも消費電力量が多い、中規模の工場やオフィスビル、スーパーマーケットなどで利用される場合がほとんどです。

また高圧電力Aと高圧電力Bでは、契約方法も異なります。高圧電力Aは実量制によって契約電力を決定し、高圧電力Bでは電力会社と利用者の協議に基づく協議制で契約電力を決定しています。

実量制は、過去1年間でピークとなる最大需要電力(デマンド値)に基づいて契約電力が決められますが、高圧電力Bは電力会社と利用者の協議によって契約電力が決まる方法です。ただし、協議制を採用する場合も、契約電力を協議する際に最大電力需要を参考にする点は変わりません。

なお、契約区分が特別高圧(2,000kW以上)の場合も、契約電力の決め方は協議制です。

高圧電力と低圧電力の違い

高圧電力と低圧電力の違い

前項で述べたとおり、中小規模のビルや工場に供給される高圧電力に対して、主に一般家庭や商店で利用されている電力を低圧電力といいます。

高圧電力と低圧電力では、特に電気料金が決まる仕組みが大きく異なるため、それぞれの違いをしっかりと把握しておくことが大切です。

ここでは、高圧電力と低圧電力の違いに関して、契約電力、電気料金、供給方法、敷設方法の4つの観点から詳しく説明します。

契約電力の違い

高圧電力と低圧電力では、毎月使用できる電力(=契約電力)が違います。高圧電力の場合、電力を50kWから2,000kWまで利用できますが、低圧電力は毎月50kW未満の電力しか利用できません。

電気料金の違い

電気料金のうち、基本料金の部分は契約電力に基づいて決められています。そのため、契約電力が大きいほど基本料金も高くなります。また高圧電力の場合、後述する受電設備(キュービクル)を設置する費用など、電気代以外の固定費がかかるのも特徴です。

ただし、高圧電力の場合、供給電力の変圧を利用者側が行う仕組みになっていることから、1kWh当たりの電力量料金単価は低圧電力よりも低く設定されているのが特徴です。毎月電気をたくさん使う場合は、キュービクルの設置費用を考慮しても、高圧電力の方が電気料金(電力量料金)を抑えて使用することが可能です。

電気料金を少しでも抑えたい場合は、工場や事業所で使用している電力量に見合った受電契約を結びましょう。

供給方法の違い

高圧電力も低圧電力も、発電所で作られた電気が送られてくる経路そのものは同じです。電気抵抗によるロスを軽減するため、まず超高圧で電気を送り出し、その後段階的に電圧を下げていきます。

  1.  発電所
  2.  超高圧変電所
  3.  一次変電所
  4.  二次変電所
  5.  中間変電所
  6.  配電用変電所

低圧電力の場合、配電用変電所に送られた電力は柱上変圧器(トランス)を経由し、一般家庭や商店などに送られます。高圧電力の場合は、利用者側で専用のキュービクルを設置し、電圧を100Vや200Vに下げる必要があります。

キュービクルが必要な理由は、高圧電力では標準電圧6,000V(公称電圧6,600V)の高圧で電気が送られてくるからです。低圧電力の場合、750V(交流は600V)以下の低圧で電気が送られてくるため、通常の柱上変圧器だけで対応できます。

敷設方法の違い

高圧電力と低圧電力では、電気を引き込む際の電線(引き込み線)の敷設方法も異なります。敷設方法には、一般家庭向けの単相(単相2線式、単相3線式)と、工場やオフィスビル向けの三相(三相3線式、三相4線式)の2種類があります。

敷設方法特徴
単相一般家庭や商店など、小規模な施設の電源として用いられ、電線が2本の場合は単相2線式、電線が主幹3本、分岐2本の場合は単相3線式と呼ばれる
三相工場やビルなど、大規模な施設の電源として用いられ、電線が3本の場合は三相3線式、電線が主幹4本、分岐が2本または3本の場合は三相4線式と呼ばれる

低圧電力を受電する場合、単相を選ぶことが一般的です。ただし業務用のエアコンなど、200Vで動作する設備を利用する場合は、追加で三相電源を敷設するケースもあります。

高圧電力や特別高圧電力では、三相3線式か三相4線式のいずれかの方式で電気を引き込みます。低圧電力とは異なり高圧・特別高圧電力の場合、キュービクルで電圧を変換するため、複数の電源を設置する必要はありません。

低圧・高圧・特別高圧の特徴や主な使用例

低圧・高圧・特別高圧の特徴や主な使用例

電力の契約区分には、低圧電力や高圧電力に加えて、特別高圧電力という区分があることを説明しました。

一般的な企業が契約を結ぶのは高圧電力ですが、小さな商店の場合は一般家庭と同じ低圧電力を選択するケースもあります。また大規模な設備を導入し、より多くの電力を必要とするオフィスビルやデパート、大規模工場などの場合、電力需要に合わせて高圧電力か特別高圧電力を選ぶことになります。

ここでは低圧・高圧・特別高圧の3つの契約区分について、具体的な利用シーンを挙げながら、それぞれの特徴をまとめます。

低圧電力は主に一般家庭や商店で使われる

低圧電力は、一般家庭や商店・一部の工場など幅広く利用されています。一般家庭や商店で使われる設備は100Vまたは200Vの電圧に対応しています。(例:一部のエアコンや冷蔵庫、IHキッチン、電気自動車の充電設備など)

基本的には、一般家庭や商店などで低圧電力を利用する際には、受電設備を敷設することはありません。そのため、大規模な工事等の手続きをすることもなく電気を利用することが可能です(※100Vから200Vに切り替える場合は、敷設方法によって追加の工事が必要になるケースもありますが、ブレーカーの切り替えやコンテントの交換等で対応可能なものもあります。)。

一部、マンションなどの集合住宅では、電気代の削減を目的として、全戸分の高圧一括受電を行っているケースもあります。

高圧電力は主に中小ビルや中小規模工場で使われる

高圧電力は、主に中小ビルや中小規模工場、学校、病院、スーパーマーケットなどの施設で利用されています。高圧電力は、契約電力に応じて一度にたくさんの電力を供給できるという特徴があります。そのため電力需要が大きい施設では、高圧電力か特別高圧電力のいずれかの契約区分を選ぶことが一般的です。

高圧電力を電圧で言うと、直流の場合は750V超~7,000V以下、交流の場合は600V超~7,000V以下の電圧となります。低圧の場合は、発電所からいくつもの変電所を経由し、最終的に電柱の上部に設置されているトランスから各家庭または事業所に送電されますが、高圧電力の場合は、各施設に電力を供給する際、トランスの代わりにキュービクル(自家用変圧器)と呼ばれる受電設備を敷設する必要があります。最終的に、高圧で電気を供給し、建物内に設置されたキュービクル(変圧器)で低圧(100Vや200V)に変換して使用されます。

特別高圧電力は大規模工場やオフィスビルなどで使われる

大規模工場やオフィスビル、デパート、空港、商業施設など、電力需要が非常に大きい施設の場合は、特別高圧電力の契約を結ぶことが一般的です。

また、特別高圧電力の供給を受けるには、近くの変電所から送電線を直接引き込む必要があります。高圧電力よりも、設備投資や維持管理コストが増える可能性があることを知っておきましょう。敷地面積が広い大規模工場などの場合、送電線を安定して支える必要があるため、敷地内に鉄塔を設置しなければならないケースもあります。

高圧電力と低圧電力の確認方法

高圧電力と低圧電力の確認方法

自社の受電契約が高圧電力か、低圧電力かが分からない場合、確認する方法は2つあります。

  • キュービクルの有無で確認する
  • 請求書で確認する

キュービクルの有無で確認する

キュービクル

先述したように、高圧電力は受電設備(キュービクル)を設置する必要があります。工場や事業所内にキュービクル(変電設備と書かれた機器)があれば、低圧電力ではなく、高圧電力で受電契約を結んでいることが分かります。

請求書で確認する

請求書が手元にある場合は、契約種別の欄を確認しましょう。契約種別の欄に「高圧」の記載があれば、高圧電力を利用していることが分かります。契約種別の欄に電力会社独自のプラン名が書かれている場合は、供給電圧の項目を確認してください。供給電圧が6,000V以上の場合、低圧電力ではなく高圧電力が供給されています。

まとめ

高圧電力は、主に中小規模のビルや工場に供給される電力のことで、契約電力は50kW以上~2,000kW未満です。契約電力の範囲が広いため、契約電力が50kW以上~500kW未満のプランは高圧電力A(高圧小口)、500kW以上~2,000kW未満のプランは高圧電力B(高圧大口)と区別されています。高圧電力の種類によって契約方法が異なるため、受電契約の仕組みについて知っておきましょう。

中小規模のビルや工場で利用される高圧電力に対して、一般家庭や商店向けの受電契約を低圧電力といいます。受電契約が高圧電力か低圧電力かは、キュービクルの有無や請求書の契約種別の欄で簡単に確認できます。高圧電力と低圧電力の違いを知って、自社に合った受電契約を結ぶことが大切です。

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