力率割引とは?力率割増、効率との違いや改善する方法を紹介
電気料金の請求書に、力率(りきりつ)という言葉が記載されているのに気が付いた方もいるでしょう。
力率は、毎月の電気料金に関わる要素のひとつです。設備の改修等によって力率を改善することで、電気料金の「力率割引」を受けられる可能性があります。
本記事では、力率割引の意味や、力率が電気料金に与える影響、力率を改善する手段や、力率割引以外で電気料金を安くする方法について紹介します。
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目次
力率割引とは?
毎月の電気料金は、さまざまな方法で安くできます。そのひとつが、電力会社が設ける力率割引を利用する方法です。
電力会社によっては、2024年から低圧電力や臨時電力、農事用電力など、一部の契約区分において力率割引を廃止する動きも見られます(例:東京電力)。見直しの理由は、ほとんどの利用者が力率割引の対象となっていることや、電力会社が定める託送供給等約款において、そもそも低圧供給の力率割引・割増が規定されていないことなどが挙げられます[1]。
しかし、法人向けの高圧・特別高圧電力の場合、引き続き力率割引を利用できる電力会社が一般的です[2]。
ここでは、力率割引における力率(りきりつ)の考え方や、間違いやすい「効率」との違い、力率割引・力率割増の意味を解説します。
[1]東京電力エナジーパートナー「低圧の料金メニューの見直しについて」
[2]東京電力エナジーパートナー「特別高圧・高圧のお客さま向けの新しい電気料金プランについて」
力率とは?
力率とは、電動機器や照明器具などを使用する際に、送られてきた電力が無駄にならず、実際に働いた割合を指す言葉です。力率は、機器に送られた見かけ上の電力である皮相電力と、実際に働いた有効電力の2つによって求められます[3]。
力率=有効電力(kW)÷皮相電力(kVA)
電力が全て有効に使われた場合、力率は1(100%)です。しかし、実際には回転磁界や磁束が生じ、機器内部で無駄に消費される電力(無効電力)が発生するため、供給された電力の全てが有効に働くわけではありません。
一般需要家の力率は、平均して85%程度だと言われています。つまり、電力会社から送られる電力の約15%が、実際には有効に使用されていない無効電力として消費されている計算です[3]。
法人向けの高圧電力の場合、受電設備(キュービクル)に設置されている力率計を使って、その瞬間の力率(瞬間力率)を計測できます[3]。ただし、電気料金には1カ月間の平均値(平均力率)から、後述の力率割引または力率割増が適用されるか決まります。
[3]独立行政法人 中小企業基盤整備機構「(受電)力率とは?」
力率と効率の違い
力率とよく似ているのが、効率という言葉です。
力率:交流電圧と交流電流の位相差のこと
効率:入力に対する出力の比率のこと
発電所で作られ、供給される電気のことを交流電源と言います。交流電源には、電圧や電流の向きが周期的に変わるという特徴があり、この向きが変わるタイミングがずれる(位相差が生じる)と、無効電力が発生します。
力率とは、厳密にはこの交流電源における位相差のことです。
一方、効率とは、電子機器に流れる電気(入力)に対し、どれだけ有効な出力を得られるかを表す指標です。効率は、変圧器や照明、発電機などさまざまな電子機器の仕様を表わす指標の一つです。多くの電源は、定格出力時に効率が最もよくなります。出力電圧や電流を小さくすると、入力電力も小さくなりますが、効率が悪くなります。
力率割引と力率割増の計算式
力率割引とは、1カ月の平均力率が一般的に85%を超える場合、超えた分だけ電気の基本料金が割引される制度です。法人向けの高圧・特別高圧の場合、力率を1%改善すると、基本料金が1%割引される仕組みになっています[4]。
例えば、東京電力における高圧電力(契約電力500kW以上)の基本料金は、以下の計算式になっています[4]。
基本料金=料金単価×契約電力×(185-力率)÷100
逆に力率が低く、基準となる85%を下回る場合、下回った分だけ電気の基本料金が割増されます。この仕組みを力率割増と言います。
力率割引・割増が存在する理由は、月々の電気料金が、実際に消費された有効電力に基づいて決まるため、力率が低い(無効電力が多い)と、電力会社はその分だけ多くの電力を供給しなければなりません。そのため、電力会社は力率改善を促すインセンティブとして、力率割引・割増を設けています。
[4]東京電力エナジーパートナー「高圧電力(契約電力500kW以上)」
力率割引によって電気料金はどう変わる?
力率割引の有無によって、電気料金はどのように変わるのでしょうか。
法人向けの高圧電力の場合、毎月の契約電力が500kWとすると、力率によって年間の基本料金が以下のように変化します(例:東京電力のベーシックプラン、2024年7月時点)[5]。
力率 | 料金単価 (税込) | 契約電力 | 力率割増・割引 | 基本料金 (12カ月・税込) |
95% | 1,890円/1kW | 500kW | 0.90 | 1,020万6千円 |
90% | 0.95 | 1,077万3千円 | ||
85% | 1.00 | 1,134万円 | ||
80% | 1.05 | 1,190万7千円 |
例えば、力率が95%の場合と80%の場合を比較すると、年間の基本料金に約170万円もの差があります。電気料金を削減する上で、力率をどのように改善するか、という点も大切になってきます。
[5]東京電力エナジーパートナー「特定小売供給約款 III.契約種別および料金」
力率を改善することは可能?
前述のとおり、力率は交流電源における電圧と電流の位相差です。力率を改善するには、電圧と電流の向きが変化するタイミングのずれを小さくし、無効電力を低減する必要があります。
コンデンサーを設置する
一般的に、電動機や照明器具などの主要な機器で生じるのは、電圧に対して電流の変化が遅れる「遅れの無効電力」です。そのため、進みの無効電力を発生させるコンデンサーを設置し、無効電力を相殺すれば、力率を改善できます。
こうした用途で使われるコンデンサーを力率改善コンデンサーと呼びます。
力率割引以外で電気料金を安くする方法
力率割引以外にも、毎月の電気料金を安くする方法は3つあります。
- 節電ルールを設定する
- 省エネ性能の高い機器に変える
- 電力会社の見直しを検討する
節電ルールを設定する
毎月の電気料金には、基本料金だけでなく、消費電力に基づく電力量料金も含まれます。従業員向けの節電ルールを設定し、消費電力を減らすことで、電気料金を抑えられます。
例えば、夏季は無理のない範囲で冷房の室内温度を上げたり、カーテンやブラインドを活用して日中の日射を避けると、オフィス全体で約4%の節電効果があると経済産業省資源エネルギー庁は公表しています[6]。
省エネ性能の高い機器に変える
また消費電力が大きい機器を、省エネ性能の高いものに更新することでも、電気料金の削減につながります。
例えば、製造業を例に挙げると、60Wの白熱電球から、電球形蛍光ランプや電球型LEDランプに交換すると、約85%の節電効果が期待できます[7]。
電力会社の見直しを検討する
法人向けの高圧電力は、電力の小売自由化に伴い、2005年以降電力会社を自由に選ぶことが可能になっています[8]。
新規参入した新電力(新電力会社)では、業界・業種ごとの電力使用状況に応じ、最適な単価となるようなプランを提案することが可能です。電気料金を今よりも安くしたい方は、電力会社の見直しを検討してみましょう。
[8]経済産業省 資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化って何?」
電気料金の削減方法についてもっと詳しく知りたい方は、【電気代削減に向けて企業が取り組むべき対策5選】や【工場の電気代削減に最適な5つの方法やメリットを詳しく解説】をご覧ください。
【まとめ】力率割引を有効活用して電気料金を節約しよう
力率割引とは、1カ月の力率が85%を超えた場合に、電気の基本料金の割引を受けられる制度です。電動機や照明器具など、主要な機器の力率を改善することで、電気料金の削減につながります。
力率割引以外にも、節電ルールの周知徹底や、省エネ性能の高い機器への更新、電力会社の見直しなど、さまざまな方法で電気料金を安くすることが可能です。