工場の電気代削減に最適な5つの方法やメリットを詳しく解説
2021年以降、原油などのエネルギー価格が世界的に高騰しています。[1]
資源の大部分を輸入に頼っている日本は、エネルギーの価格変動に左右されやすく、電気・ガス料金への影響も避けられません。
特に消費電力が多い工場や製造業では、原油価格の高騰により電気代の負担が急増する恐れがあります。照明や空調の交換、太陽光発電の導入など、電気代削減のためにできることはいろいろあります。
本記事では、工場の電気代削減が必要な理由や、電気代削減の一環として太陽光発電を導入するメリットを解説します。
[1]資源エネルギー庁「令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022) 第3節 世界的なエネルギー価格の高騰が日本に与える影響」
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目次
工場における電気代削減が重要な理由
さまざまな業種の中でも、特に工場(製造業)は電気代削減に向けた取り組みが重要だと言われています。工場における電気代削減が重要な理由は2つあります。
- 消費電力が多い
- 電気代が高騰している
消費電力が多い
製造業は、製造工程でさまざまな設備機器を動かすため、産業界で最もエネルギー消費量が多い業種です。資源エネルギー庁の「総合エネルギー統計」によると、製造業全体のエネルギー消費量は約42.2%(2022年)を占めています。[2]
部門 | エネルギー消費の割合(2022年) | |
企業・事業所他部門 | 製造業 | 42.2% |
農林水産鉱建設業 | 3.3% | |
業務他 | 15.9% | |
家庭部門 | 15.1% | |
運輸部門 | 旅客部門 | 13.6% |
貨物部門 | 10.0% |
また製造業9業種(パルプ・紙・板紙、化学工業製品、化学繊維、石油製品、窯業・土石製品、ガラス製品、鉄鋼、非鉄金属地金、機械器具)の中小企業のみを対象とした統計でも、製造業のエネルギー消費量が全体に占める割合は34.7%です。[3]
このように工場(製造業)は、他業種と比較してエネルギー消費量が多いため、毎月の電気代の負担も比例して大きくなります。
[2]資源エネルギー庁「令和4年度(2022年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(速報)」
[3]資源エネルギー庁「令和3年度エネルギー消費統計結果概要」
電気代が高騰している
世界的なエネルギー価格の高騰により、国内の電気代の値上げが続いていることも、工場にとって大きな打撃となっています。2022年はロシア・ウクライナ情勢などの影響により、発電に使われる化石燃料の価格が軒並み上昇しました。例えば、天然ガスが史上最高値を記録し、原油価格も一時130ドル/バレル(2024年1月時点:約80ドル/バレル)を超えるなど、記録的な燃料価格高騰が続いています。[4]
日本は資源の大部分を海外からの輸入に依存しているため、エネルギー価格が上昇すると、その影響で電気・ガス料金も値上がりします。電力消費量の多い工場は、電気代の値上がりの影響を受けやすく、早急に対策を考えなければなりません。
[4]資源エネルギー庁「令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)第2節 世界的なエネルギー価格の高騰とロシアのウクライナ侵略」
工場で電気代を削減する5つの方法
工場の電気代を削減するなら、以下の5つの方法が効果的です。
- 電力会社を変更する
- 照明・空調設備を交換する
- 生産設備の節電を図る
- ユーティリティ設備の節電を図る
- 太陽光発電を導入する
電力会社の見直しや、照明・空調設備の交換などで電気代は削減できます。あわせて電気代をもっと抜本的に削減したい場合は、太陽光発電の導入も検討しましょう。
電力会社を変更する
1つ目のポイントは電力会社を見直すことです。工場向けの高圧区分では、2004年4月・2005年4月から電力の小売自由化が行われ、企業が電力会社を自由に選べるようになりました。[5]新規参入した「新電力」の中には、従来よりも電気代が安い電力会社や再エネ電力を安価に供給している電力会社も存在します。事業所所在地に電力を供給する電力会社を比較検討し、現在のプランよりも電気代が安いプランがないか探してみましょう。
照明や空調設備を交換・調節する
電気代を削減する2つ目のポイントは、照明・空調設備の交換および調節です。工場の照明や空調設備をよりエコなものに交換するだけでも、消費電力を大きく減らすことができます。
照明を交換するなら、消費電力量が少ないLED照明がおすすめです。経済産業省の試算によると、冬季に白熱灯(60W)をLED照明に交換した場合、製造業では85%の節電効果が期待できます。[6]
空調の設定温度も電気代を削減する上で大切なポイントの一つ。消費電力量を減らすため、設定温度を無理のない範囲で下げるようにしましょう。
【例】冬季に空調の設定温度を22度から20度に下げた場合、14%の節電効果が得られます。[6]
また工場の場合、換気ファンの間欠運転を実施するなど、外気取入量(換気によって取り入れる外気の量)を調整することも大切です。冬場なら、冷たい外気の流入を少しでも減らすことで、空調にかかる負荷を抑えることが可能です。
【例】外気取入量を30%低減すると、得られる節電効果は34%に及びます。[6]
このように照明や空調設備を交換・調節することで、消費電力を減らし、月々の電気代を節約する効果が期待できます。
生産設備の節電を図る
また以下のような生産設備の節電を図ることで、夏季・冬季の電気代を削減することが可能であると経済産業省は試算しています。[6][7]。
生産設備の節電 | 建物全体に対する節電効果 | |
不要又は待機状態にある電気設備の電源オフ及びモーター等の回転機の空転防止を行う | – | |
電気炉、電気加熱装置の断熱を強化する (節電効果:保温施工の実施例) | 7% |
※一定の条件の下での試算結果の為、各々の建物の利用状況により削減値は異なります。
生産設備の断熱強化など、電気代削減に向けて省エネ設備へ更新を行う場合は、資源エネルギー庁などが実施する補助金制度(2024年時点)を利用するとよいでしょう。
[注7]経済産業省 資源エネルギー庁「夏季の省エネ・節電メニュー」
ユーティリティ設備の節電を図る
生産設備の稼働に欠かせないユーティリティ設備も、省エネ・節電が可能なポイントの1つです。
例えば、以下のような取り組みを実施することで、夏季・冬季ともに工場全体の電気代を削減できると経済産業省は試算しています[6][7]。
ユーティリティ設備の節電 | 建物全体に対する節電効果 |
弁の閉め忘れや継手・ホースからの空気漏れをなくす | – |
使用側の圧力を見直すことによりコンプレッサの供給圧力を低減する (節電効果:単機における0.1MPa低減時) | 8% |
コンプレッサの吸気温度を下げる (節電効果:単機において吸気温度を10℃下げた時) | 2% |
負荷に応じてコンプレッサ・ポンプ・ファンの台数制御を行う (節電効果:コンプレッサ5台システムでピーク負荷60~80%の場合) | 9% |
インバータ機能を持つポンプ・ファンの運転方法を見直す (節電効果:弁の開閉状態の確認・調整によりインバータ機能を活用し全圧が80%となった場合) | 15% |
冷凍機の冷水出口温度を高めに設定し、ターボ冷凍機・ヒートポンプ等の動力を削減する (節電効果:利用側の状況を確認しながら7℃→9℃へ変更した場合) | 8% |
※一定の条件の下での試算結果の為、各々の建物の利用状況により削減値は異なります。
太陽光発電を導入する
工場の電気代を抜本的に削減するなら、太陽光発電の導入がおすすめです。太陽光発電設備を設置し、自社に必要な電力を賄う仕組みを「自家消費型太陽光発電」と呼びます。自家消費型太陽光発電なら、本来電力会社から購入するはずの電力量を自社で発電し、電気代を大幅に削減することが可能です。
太陽光発電を導入するメリットや、自家消費型太陽光発電以外の太陽光発電の仕組みについては、後の項目で詳しく解説しています。
工場の電気代を削減するメリット
工場の電気代削減に取り組むメリットは3つあります。
- ランニングコストを削減できる
- 設備の経年劣化を遅らせる
- 企業評価の向上につながる
ランニングコストを削減できる
毎月の電気代を抑制することで、ランニングコストを削減できます。
短期的には省エネ設備への更新など、設備投資が必要な場合もありますが、中長期的に見るとコスト削減につながります。前述のとおり、節電・省エネを目的とした設備投資は、政府による補助金制度(2024年時点)を利用可能です。
設備の経年劣化を遅らせる
電気代削減のため、工場設備の稼働時間を見直すことで、設備の故障や経年劣化が遅らせることができ、生産設備やユーティリティ設備の節電・省エネと長寿命化の両方が期待できます。
企業評価の向上につながる
節電・省エネに向けた取り組みを対外的にアピールすることで、環境問題への関心が高い顧客や投資家からのイメージ向上につながります。
単に電気代を削減するだけでなく、どのように環境活動のPRと結びつけていくか、という視点も持って節電・省エネに取り組むことが良いでしょう。
工場の電気代削減には太陽光発電が最適
太陽光発電設備を導入すべき理由は3つあります。
- 屋根や敷地を有効活用できる
- 昼間に電力を多く使える
- BCP対策につながる
屋根や敷地を有効活用できる
太陽光パネルは、工場の屋根や駐車場など、敷地内のさまざまな場所に設置することができます。太陽光発電用の土地がなくても、余剰スペースを有効活用して発電することが可能です。
ただし、自家消費型太陽光発電の場合、太陽光パネルの設置費用を自社で負担しなければなりません。初期費用をなるべく抑えて太陽光発電を導入したい場合、オンサイトPPAという手段もあります。
オンサイトPPAとは、「発電事業者が、需要家の敷地内に太陽光発電設備を発電事業者の費用により設置し、所有・維持管理をした上で、発電設備から発電された電気を需要家に供給する仕組み」です。[8]
長期契約が前提ですが、太陽光発電設備の設置費用・メンテナンス費用が不要のため、初期費用がかからない太陽光発電として注目を集めています。
昼間に電力を多く使える
太陽光発電は工場と相性の良い発電方法です。太陽光発電では、太陽電池を利用して光エネルギーを電力に変換しているため、発電量は昼間が最も多くなります。
日中にさまざまな設備機器を動かす工場は、太陽光発電の発電量のピークと合致しているため、発電した電力を効率良く消費でき、ムダな電力が発生しにくいという特徴があります。
BCP対策につながる
また太陽光発電設備は、非常用電源としても利用できます。自社の敷地内に太陽光発電設備があれば、停電時でも電気を使うことが可能です。自然災害などを想定したBCP計画(事業継続計画)の一環として、太陽光発電の導入を検討しましょう。
【まとめ】工場の電気代削減なら、太陽光発電の導入を!
世界的なエネルギー価格の上昇によって、電気・ガス料金にも影響が出ています。特に工場は電力消費量が多いため、毎月の電気代の高騰に悩んでいる方もいるでしょう。
工場の電気代を削減する方法として、電力会社の見直しや、よりエコな照明・空調設備への交換などがあります。また災害時のBCP対策も兼ねて、太陽光発電の導入も検討しましょう。オンサイトPPAなら、初期費用なしで太陽光発電設備を設置できます。