グリーン電力証書とは?非化石証書・J-クレジットとの違いを徹底解説
2024.04.15
2024.05.21
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再エネ電力の大きな課題の一つが、土地の制約などにより自社で発電設備を保有するのが難しい、というものです。しかし、発電設備を持たない企業・自治体でも、使用する電力を実質的に再エネ電力に置き換えられる方法があります。

それが2008年6月から本格的に運用が始まったグリーン電力証書制度です。[1]グリーン電力証書は、RE100などの各種イニシアティブへの報告にも利用できるため、環境貢献活動に取り組む企業から注目を集めています。

本記事では、グリーン電力証書の概要や、非化石証書・J-クレジットとの違い、購入方法の流れについて解説します。

[1]日本品質保証機構「グリーンエネルギー認証」

>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン

グリーン電力証書とは?

グリーン電力証書とは?

グリーン電力証書とは、環境省によると「グリーン電力価値の購入を希望する需要家が一定のプレミアムを支払うことにより、電気とは切り離されたグリーン電力価値を証書等の形で保有し、その事実を広く社会に向けて公表できる」という仕組みです。[2]

グリーン電力価値(グリーン電力環境価値)は、太陽光・バイオマス・小水力・風力などの再生可能エネルギーによって発電された電力の環境付加価値を意味します。本来、このグリーン電力価値は発電事業者のみが保有するものです。

しかし、グリーン電力証書を購入すれば、中立的な第三者認証機関である日本品質保証機構[3]の認証に基づいて、証書に記載された電力量(kWh)に相当するグリーン電力価値が発電事業者から購入者へ移転されます。再生可能エネルギーの発電設備を持たない企業・自治体でも、グリーン電力証書の取得により、化石燃料からの脱却や二酸化炭素の排出量削減といった環境対策に貢献できます。

グリーン電力証書は、環境対策に向けた取り組みを対外的にアピールする手段としても活用可能です。グリーン電力証書を購入すると、グリーン電力の利用を示すグリーン・エネルギー・マークなどのマークが交付されます。こうしたマークは製品やサービス、イベントのPRなど、さまざまな環境コミュニケーション活動に利用できます。

またグリーン電力証書は、CDPやSBT(Science Based Targets)、RE100(Renewable Energy 100%)といった国際的なイニシアティブにも対応しており、自社の再エネ電力の使用実績として報告することが可能です。環境対策に貢献したい企業はもちろん、RE100などの各種報告制度への参加を目指す企業は、グリーン電力証書を有効活用しましょう。

[2]環境省「グリーン電力証書の概要」
[3]日本品質保証機構「グリーン電力証書の概要について」

非化石証書・J-クレジットとの違い

非化石証書・J-クレジットとの違い

グリーン電力証書とよく似た制度として、非化石証書やJ-クレジットが挙げられます。それぞれの違いは以下の表のとおりです。

グリーン電力証書非化石証書J-クレジット
購入者企業・自治体企業・小売電気事業者企業・自治体
発行者グリーン電力証書発行事業者低炭素投資促進機構経済産業省/環境省/農林水産省
対象再生可能エネルギーに由来する電力の環境価値を証書化化石燃料に由来しない電力(原子力も含む)の環境価値を証書化二酸化炭素の削減量・吸収量をクレジット化
購入方法発行事業者から直接購入取引所によるオークション代理購入事業者との相対取引J-クレジット制度事務局によるオークションクレジット保持者や仲介事業者との相対取引
転売不可不可

グリーン電力証書や非化石証書は、再生可能エネルギーなどに由来する電力の環境価値を証書化し、環境対策に取り組む企業が購入できるようにした制度です。ただし、非化石証書は化石燃料に由来しない電力全般を対象としており、証書の種類によっては原子力も含まれます。

またJ-クレジットは、再エネ電力そのものではなく、再エネ電力などの導入による二酸化炭素の削減量・吸収量をクレジット化した制度です。非化石証書と同様に、原子力も制度の対象に含まれます。

ここからは、それぞれの購入単価や活用方法の違いについて詳しく解説します。

単価の違い

グリーン電力証書や非化石証書、J-クレジットは、いずれも1kWhを販売単位として証書やクレジットを購入できます。各制度の購入単価は以下のとおりです。

グリーン電力証書非化石証書J-クレジット
単価2~7円/kWh0.4円~/kWh
※入札最低価格
※FIT非化石証書の場合
1~4円/kWh

それぞれの単価を比較すると、グリーン電力証書はやや割高となっています。ただし、グリーン電力証書はオークションではなく、発電事業者から直接購入する制度です。発行事業者との関係性によって購入価格が変化する場合があるため、上記の表はあくまでも参考程度にしてください。

活用方法の違い

グリーン電力証書をはじめとした制度は、いずれもCDPやSBT、RE100といった国際的なイニシアティブへの報告に利用できます。ただし、証書やクレジットの種類によっては利用できないケースもあります。

グリーン電力証書非化石証書J-クレジット
CDP
SBT
RE100
※再エネ由来かつ、トラッキング付きの証書のみ

※再エネ由来のクレジットのみ

3つの国際イニシアティブの中でも、RE100は基準が厳しいため、非化石証書やJ-クレジットの一部は報告に利用できません。ただし、グリーン電力証書はRE100の基準に適合しており、安心して利用できます。

グリーン電力証書の購入方法

グリーン電力証書の購入方法

グリーン電力証書は3つのステップで購入可能です。

  • 購入先を決める
  • 費用を見積る
  • 購入する

購入先を決める

グリーン電力証書は発行事業者から直接購入できます。

証書発行事業者によって、再エネ電力の種類や、発電設備がある地域、最低購入単位などの条件が異なります。まずは証書発行事業者の中から、予算や目的に合った購入先を選びましょう。証書発行事業者の一覧は、日本品質保証機構などのホームページで確認できます。

費用を見積る

次にグリーン電力証書の購入費用を見積りましょう。グリーン電力証書の購入価格は、以下の計算式で求められます。[4]

グリーン電力証書価格=使用予想電力量(kWh)×グリーン電力使用割合(%)×単価(円/kWh)+証書発行手数料+消費税

まずは自社の使用予想電力量や、電力使用量におけるグリーン電力使用割合を概算し、単価を証書発行事業者に問い合わせましょう。グリーン電力証書の購入には、証書発行手数料や消費税が別途必要です。

[4]グリーン購入ネットワーク「「グリーン電力証書」購入ガイドライン」

購入する

費用の見積りが完了したら、注文フォームに必要事項を記入し、グリーン電力証書を購入します。グリーン電力証書を購入すると、製品やサービスに使用できるマークや、発電所の写真などが送られてくるため、環境コミュニケーション活動に利用可能です。

【まとめ】グリーン電力証書を購入し、RE100やSBTへの報告に活用しよう

グリーン電力証書は、再生可能エネルギーに由来する電力の環境付加価値を証書化した制度です。グリーン電力証書の購入により、発電設備を持たない企業や自治体も間接的に環境対策に貢献できます。

グリーン電力証書を購入すると、グリーン・エネルギー・マークなどのマークが交付されるため、製品やサービスにマークを使用できます。またグリーン電力証書は、CDPやSBT、RE100といった国際的なイニシアティブに対応した制度です。証書に記載された電力量(kWh)に応じて、RE100などの各種イニシアティブへの報告に利用できます。

グリーン電力証書の他にも、非化石証書やJ-クレジットなど、再エネ電力の環境価値を取引できるさまざまな制度があります。それぞれの制度の単価や活用方法の違いを知って、予算や目的に合ったものを利用しましょう。

>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン

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