再エネ賦課金の仕組み・計算方法やメリット・デメリットを徹底解説
2024.08.01
2024.08.01
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再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)とは、再生可能エネルギーの普及を目的とし、毎月の電気の使用量に応じて電気料金に上乗せされる負担金です。なぜ電気料金に再エネ賦課金が上乗せされるのか、疑問に思った方もいるでしょう。

再エネ賦課金は、発電コストが高い再生可能エネルギーの普及を加速させるため、2012年の固定価格買取制度導入とともに始まりました[1]。月々の電気料金は高くなるものの、再エネを主力電源化し、気候変動の原因となるCO2排出量を減らす上で、再エネ賦課金は大切な役割を担っています。

一方で、2024年度に再エネ賦課金の単価が大幅に上昇し、電気料金の値上がりにつながりました[2]

本記事では、再エネ賦課金の仕組みや計算方法、値上がりの経緯や電気料金のへの影響度、企業にとってのメリット・デメリットについて解説します。

[1]経済産業省 資源エネルギー庁「資源エネルギー庁がお答えします!~再エネについてよくある3つの質問」
[2]新電力ネット「再生可能エネルギー発電促進賦課金の推移」

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再エネ賦課金とは?

再エネ賦課金とは、電力会社が再生可能エネルギーによって発電された電気を買い取るための費用の一部を、需要家が電気料金を通して負担する制度です。

再エネで作られた電気は、日々使う電気の一部として供給されています。そのため、毎月の電気料金と合わせて、全ての需要家が再エネ賦課金を負担する仕組みになっています。 資源エネルギー庁によると、2012年から2017年までの間で、再エネ賦課金の累計額は約6兆円に到達しました[1]

固定価格買取制度の意味

再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)の導入に伴い、2012年7月から始まった制度です[1]

固定価格買取制度とは、“再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間、電気事業者が買い取ることを義務付ける”制度です[3]

太陽光や風力などの再エネは、年々コストダウンが進んでいるとはいえ、他の電源と比べて発電コストが高いという問題があります。再エネで作った電気を電力会社が固定価格で買い取ることを義務付けることで、発電事業者が発電設備の建設コストなどを回収しやすくなり、再エネの普及につながります[4]

[3]経済産業省 資源エネルギー庁「よくある質問」
[4]経済産業省 資源エネルギー庁「なっとく!再生可能エネルギー 制度の概要」

再エネ賦課金の仕組み

再エネ賦課金の仕組み

再エネ賦課金は、以下のような流れで電力会社や発電事業者に還元され、再エネの導入を支える仕組みになっています[5]

再エネ賦課金の仕組み

[5]四国電力「“再エネ賦課金“を払うのって、なんでやねん」

  1. 発電事業者が太陽光や風力などの再エネ電源を用いて発電する
  1. 電力会社が再エネで作った電気を買い取る
  1. 送配電ネットワークを通じて、電力会社が需要家に電気を送る
  1. 需要家は、電気料金の一部として再エネ賦課金を電力会社に支払う
  1. 預かった再エネ賦課金を電力会社が取りまとめ、国の指定機関に納付する
  1. 国の指定機関が、再エネで作った電気の買取費用を電力会社に交付する

電力会社は、預かった再エネ賦課金を全て国の指定機関に納付し、再エネで作った電気の買取費用の交付を受けています。

再エネ賦課金の価格

再エネ賦課金の価格(単価)は、再エネの導入状況や卸電力市場における買取価格などに基づいて、経済産業省が毎年見直しを行っています。2024年度の単価は、1kWh当たり3.49円です[6]

再エネ賦課金の単価は、全国一律になるように調整されており、地域による差はありません[7]。    

[6]経済産業省 資源エネルギー庁「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価を設定します」
[7]経済産業省 資源エネルギー庁「回避可能費用の算定方法及び設備認定制度の在り方について」

再エネ賦課金の計算方法

月々の電気料金に上乗せされる再エネ賦課金は、以下の計算式で求められます。

再エネ賦課金(円)=1カ月の使用電力量(kWh)×再エネ賦課金の単価(円/kWh)[8]

再エネ賦課金は、使用電力量が多いほど負担額が増える仕組みになっています。

2024年度の再エネ賦課金の単価は、3.49円/1kWhです[6]。例えば、1カ月の使用電力量が10万kWhとすると、その月の再エネ賦課金は10万kWh×3.49円/1kWh=34万9千円となります。 

再エネ賦課金単価が前年度から大幅に上昇したため、電気料金に大きな影響がありました[2]。下記の表のとおり、1カ月の使用電力量が10万kWhと想定した場合、電気料金の値上がり幅は20万9千円です。

 再エネ賦課金単価(税込)再エネ賦課金分 ※1カ月の使用電力量が10万kWhと想定
2023年度1.40円/kWh14万円
2024年度3.49円/kWh34万9千円

[8]丸紅新電力株式会社「再生可能エネルギー発電促進賦課金」

いつまで続く予定?

資源エネルギー庁は、再エネ賦課金の終了時期について明言していません。しかし、環境省が2013年に公表した試算によると、2030年まで固定価格買取制度が存続した場合、再生可能エネルギーの普及とともに再エネ賦課金の単価が減少するとされています[9]

再エネ賦課金は、固定価格買取制度に伴う賦課金です。固定価格買取制度が存続する限り、再エネ賦課金もなくなりません。

[9]環境省「平成25年度2050年再生可能エネルギー等分散型エネルギー普及可能性検証検討報告書」

再エネ賦課金のメリット

再エネ賦課金のメリット

再エネ賦課金を電気料金の一部として負担することで、以下のようなメリットが生まれます。

  • CO2排出量が減る
  • 燃料価格の高騰による電気料金の値上がり抑制

CO2排出量が減る

1つ目のメリットは、気候変動の原因となるCO2排出量を減らせるという点です。

資源エネルギー庁によると、国内の温室効果ガス排出量(2021年度)は11.7億トンです。そのうち、約84%に当たる約9.9億トンが、石油や石炭、天然ガスなどの化石エネルギーに由来しています[10]

再エネ賦課金を通じて、再生可能エネルギーの普及が進むことで、化石エネルギーの消費量を減らし、CO2の排出量削減につながります。

[10]経済産業省 資源エネルギー庁「日本のエネルギー2023年度版「エネルギーの今を知る10の質問」」

燃料価格の高騰による電気料金の値上げ抑制

2つ目のメリットは、化石燃料への依存度が低下し、燃料価格の高騰による電気料金の値上げ抑制につながるという点です。

電気料金には、燃料費調整という仕組みがあります。燃料費調整とは、“電気をつくる燃料の調達価格の変化を、電気料金に自動的に反映する”ものです[11]

日本は東日本大震災以降、化石燃料への依存度が高まっており、2021年度はエネルギーの83.2%を海外から輸入する石油や石炭、天然ガスに頼っています[12]。こうした状態が続くと、燃料価格の変動により、電気料金が変動することは避けられません。

2022年ロシア産資源の禁輸措置を受けて燃料価格が高騰し、大手電力7社が電気料金の値上げを政府に申請するという状況も発生しました[11]

再生可能エネルギーが普及すれば、化石燃料への依存低下につながります。そうなれば、燃料価格の高騰による電気料金の値上げを抑制するメリットがあります[12]

このように再エネ賦課金は、電気の供給を受ける全ての需要家にとってメリットのある制度です。

[11]経済産業省 資源エネルギー庁「2023年6月の電気料金、なぜ値上がりするの?いくらになるの?」
[12]経済産業省 資源エネルギー庁「制度の概要」

再エネ賦課金のデメリット

再エネ賦課金のデメリット

一方、再エネ賦課金には以下のようなデメリットもあります。

  • 電気料金が高くなる
  • 電気料金が変動する

電気料金が高くなる

1つ目のデメリットは、再エネ賦課金が電気料金に上乗せされる点です。

再エネ賦課金の負担額は、すでに年間約2兆円に達しています[1]。再エネ賦課金は再エネの買取量に応じて増えるため、今後の再エネの普及状況によっては、さらに負担額が大きくなる可能性もあります。 資源エネルギー庁の試算によれば、2030年に再エネの導入率が24%に増えた場合、再エネ賦課金は年間約3兆円に達する見通しです[1]

電気料金が変動する

2つ目のデメリットは、再エネ賦課金は毎年単価の見直しが行われるため、たとえ前年同月と同等の使用量でも電気料金が変動する点です。

実際に2023年度の再エネ賦課金の単価は、前年度から2.05円/kWh低い1.40円/kWhに設定されました。しかし2024年度は、単価が3.49円/1kWhに上昇し、利用者の負担が増加しました[2]

以下の表は、2012年以降の再エネ賦課金単価の推移です[2]。    

年度再エネ賦課金単価
2012年度 (2012年8月分~2013年3月分)0.22円/kWh
2013年度 (2013年4月分~2014年4月分)0.35円/kWh
2014年度 (2014年5月分~2015年4月分)0.75円/kWh
2015年度 (2015年5月分~2016年4月分)1.58円/kWh
2016年度 (2016年5月分~2017年4月分)2.25円/kWh
2017年度 (2017年5月分~2018年4月分)2.64円/kWh
2018年度 (2018年5月分~2019年4月分)2.90円/kWh
2019年度 (2019年5月分~2020年4月分)2.95円/kWh
2020年度 (2020年5月分~2021年4月分)2.98円/kWh
2021年度 (2021年5月分~2022年4月分)3.36円/kWh
2022年度 (2022年5月分~2023年4月分)3.45円/kWh
2023年度 (2023年5月分~2024年4月分)1.40円/kWh
2024年度 (2024年5月分~2025年4月分)3.49円/kWh

上記の表からも、再エネ賦課金単価の変動幅に毎年ばらつきがあることや、例外となる2023年度を除いて、全体として上昇傾向にあることがわかります。

【まとめ】再エネ賦課金の仕組みや企業にとってのメリット・デメリットを知ろう

再エネ賦課金とは、再エネで作った電気を電力会社が買い取るための費用の一部を、需要家が月々の電気料金から負担する仕組みです。再エネ賦課金は、再エネの普及を目的として創設された固定価格買取制度に伴い、2012年7月に導入されました[1]。  再エネ賦課金は月々の電気料金に上乗せされるため、需要家にとっては経済的な負担が増えるというデメリットがあります。しかし、再エネ賦課金は再エネ発電事業者に還元されるため、再エネの導入を支える投資という見方もできます。  電気料金に含まれる再エネ賦課金が、何のために使われているのか、なぜ必要なのかを知っておきましょう。

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