再エネ特措法とは?2024年の改正ポイントを解説

2024.08.27
2024.08.27
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2024年4月に、改正再エネ特措法が施行されました[1]。改正再エネ特措法では、再生可能エネルギーの普及を促すFIT/FIP制度の認定要件が変わるなど、企業にとって重要な内容が含まれています。

本記事では、再エネ特措法の目的や主な内容、2024年の改正ポイントについて解説します。

[1]経済産業省 資源エネルギー庁「今後の再生可能エネルギー政策について」

>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン

再エネ特措法とは?

再エネ特措法は、2011年に成立した法律で、 当初は“再エネで発電された電気をあらかじめ決められた価格で買い取るよう電力会社に義務付ける「固定価格買取(FIT)制度」”について主に定めたもので、2012年度の施行共にFIT制度が導入されました[2]

また2020年6月に行われた改正では、従来のFIT制度に加えて新たにFIP制度の導入が決まり、2022年4月から開始されました[3]

またその際に、正式名称が「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(通称:FIT法)」から「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」へ改められました[2]。2024年の改正ポイントは後述します。

FIPとは、フィードインプレミアム(Feed-in Premium)の略称で、再エネに由来する電気を卸電力市場などで販売した際に、一定のプレミアム(補助額)が上乗せされる制度です。いつ発電しても買取価格が変わらないFITに対し、FIPでは売電収入が市場価格に連動するという点に違いがあります。FIP制度導入の狙いは、電力需要のピーク時つまり市場価格の高い時に発電事業者へ売電を促すとともに、需要が少ない時(市場価格が低い時)には売電せず、蓄電池等で電力を貯める等、発電事業者に市場に合わせた行動を促し、電力システム全体のコスト削減を目指すものでもありました[2]

FIP制度についてさらに詳しく知りたい方は、【FIP制度のメリット・デメリットやFITとの違いを徹底紹介】をご覧ください。

[2]経済産業省 資源エネルギー庁「「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス ⑤再エネの利用促進にむけた新たな制度とは?」
[3]経済産業省 資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート」

再エネ特措法の目的

再エネ特措法は、こうしたFIT/FIP制度を中心として、国民負担の抑制を図りながら、再エネの主力電源化を目指して最大限の導入を推進することを目的としています。

経済産業省によると、日本における再エネの電源構成比は、2022年度の時点で21.7%です。海外の主要国と比べて、再エネ比率は低い水準ですが、FIT制度が始まる前の2011年度と比較すると、大幅に増加しています[1]

 2011年度2022年度2030年度(目標)
再エネの電源構成比10.4% (1,131億kWh)21.7% (2,189億kWh)36~38% (3,360~3,530億kWh)

政府は、2030年に再エネ比率を36~38%に拡大することを目指しており、FIT/FIP制度の活用が期待されています。

対象となる再生可能エネルギー

再エネ特措法(FIT/FIP制度)において対象となるのは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスの5つの再生可能エネルギーです。日本においては、それぞれ以下のような強みと課題があります[4]。

再エネの種類強み課題
太陽光発電相対的にメンテナンスが簡易非常用電源としても利用可能天候により発電出力が左右される一定地域に集中すると、送配電系統の電圧上昇につながり、対策に費用が必要となる
風力発電大規模に開発した場合、コストが火力、水力並みに抑えられる風さえあれば、昼夜を問わず発電できる広い土地の確保が必要風況の良い適地が北海道と東北などに集中しているため、広域での連系についても検討が必要
水力発電安定して長期間の運転が可能で信頼性が高い中小規模タイプは分散型電源としてのポテンシャルが高く、多くの未開発地点が残っている中小規模タイプは相対的にコストが高い事前の調査に時間を要し、水利権や関係者との調整も必要
地熱発電出力が安定しており、大規模開発が可能昼夜を問わず24時間稼働開発期間が10年程度と長く、開発費用も高額温泉、公園施設などと開発地域が重なるため、地元との調整が必要
バイオマス発電資源の有効活用で廃棄物の削減に貢献天候などに左右されにくい原料の安定供給の確保や、原料の収集、運搬、管理にコストがかかる

なお、発電した電気は全量が買取対象になりますが、50kW以下の小規模太陽光発電の場合は、自分で消費した後の余剰分が買取対象となります[4]

[4]経済産業省 資源エネルギー庁「制度の概要」

再エネ特措法で定められている内容

再エネ特措法で定められているのは、FIT/FIP制度における再エネの調達価格・調達期間の決定プロセスや、FIT/FIP認定を受けるための条件(事業計画の認定)、再エネ賦課金の支払いなどの電気事業者の義務、系統設置交付金などです[5]

[5]e-Govポータル 「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」

調達価格・調達期間の決定プロセス

1つ目の内容は、電気事業者(送電事業者や小売電気事業者など)が、再エネに由来する電気を買い取るときの調達価格・調達期間に関するルールです。

再エネ特措法では、“経済産業大臣が毎年度、調達価格等算定委員会の意見を尊重して、再エネ電気を送配電事業者が買い取る調達価格・調達期間を決定する仕組み”になっています[6]

決定された調達価格・調達期間は、年度開始前までに資源エネルギー庁のホームページに告示されます。詳しく知りたい方はこちらの価格表をご覧ください[7]

[6]経済産業省「再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会(第1回)説明資料」
[7]経済産業省 資源エネルギー庁「FIT・FIP制度 買取価格・期間等(2024年度以降)」

発電事業者がFIT/FIP制度の認定を受けるための条件

2つ目の内容は、発電事業者がFIT/FIP制度の認定を受けるための条件です。

以前は、再エネの発電設備ごとに認定が行われていましたが、2024 年改正後は、発電事業者が申請の際に事業計画(再生可能エネルギー発電事業計画)を作成し、認定を受けるルールになりました[8]

事業計画の項目について詳しく知りたい方は、こちらの「再生可能エネルギー発電事業計画認定申請書」の様式をご参照ください[9]

[8]経済産業省 資源エネルギー庁「よくある質問(Q1-5)」
[9]経済産業省 資源エネルギー庁「再生可能エネルギー発電事業計画認定申請書」

再エネ賦課金の支払いなどの電気事業者の義務

3つ目の内容は、再エネ賦課金の支払いなどの電気事業者が負う義務です。

再エネ賦課金とは、FIT/FIP認定された再エネの買取費用を賄うため、国民が毎月の電気の使用量に応じて、電気料金から支払う負担金です。

再エネ賦課金は、電気事業者の利益になるわけではありません。再エネ特措法第31条では、小売電気事業者等(小売電気事業者、一般送配電事業者及び登録特定送配電事業者)に対し、納付金の支払い義務を定めています[5]

納付金の金額は、経済産業省令で定める方法により算定すること(第32条第1項)となっており、電気事業者は預かった再エネ賦課金を国の指定機関に納付しています[5]。期限までに納付しなかった場合は、第34条第4項の規定に基づき、経済産業省のホームページで事業者名が公表されます[10]

再エネ賦課金の仕組みについてさらに詳しく知りたい方は、【再エネ賦課金の仕組み・計算方法やメリット・デメリットを徹底解説】をご覧ください。

[10]経済産業省 「再生可能エネルギー特別措置法に基づき、納付金を納付しない電気事業者を公表します」

系統設置交付金

系統設置交付金とは、再エネのさらなる導入拡大のため、再エネ特措法第28条に基づいて、一般送配電事業者または送電事業者に支給される交付金です[5]

交付金の対象となるのは、“工事費及び運転維持費のうち、再エネの電気を実際に運ぶ送変電設備に係る費用”です[11]

風力等の再エネ電源は需要地から遠く離れているケースが多く、電力を十分に送るために送変電設備の増強が必要となります。系統設置交付金の導入によって、再エネの主力電源化が進むと考えられています[11]

[11]電力広域的運営推進機関「制度概要」

【2024年4月施行】再エネ特措法の改正ポイント

【2024年4月施行】再エネ特措法の改正ポイント

2024年4月に施行された改正再エネ特措法では、事業規律が強化され、地域と共生することが求められています。改正の経緯は、再エネ電源に関する安全面、防災面、景観や環境への影響、将来の廃棄などへの地域の懸念が高まったためです[12]

FIT制度の導入によって、発電までのリードタイムが比較的短い太陽光発電を中心として再エネの導入が進んだ一方で、多様な事業規模の事業者が新規参入したことから、新たなルールや罰則の制定が必要となりました。

ここでは、主な変更点を5つ紹介します[1]

  • 太陽光発電設備の更新・増設時の買取価格特例および適正な廃棄
  • 土地開発に関連する認定手続の厳格化
  • 周辺地域の住民に対し、説明会等の事前周知の実施
  • 認定事業者の委託先・再委託先に対する監督義務
  • 違反時には交付金の一時停止・返還等ペナルティが課される

[12]経済産業省 資源エネルギー庁「FIT・FIP制度 令和5年度改正」

太陽光発電設備の更新・増設時の買取価格特例および適正な廃棄

1つ目は、FIT/FIP制度の認定事業者が太陽光発電設備の更新・増設を行った場合の買取価格の特例と適正な廃棄が求められた点です。

従来の制度では、パネルの更新・増設によって増出力分が3kWまたは3%を超えた場合、最新の買取価格へ変更され、設備全体の買取価格が低下する恐れがありました[13]。法改正後は、当初の設備分の買取価格は維持した上で、増出力分にのみ最新の価格が適用されます。[12]

ただし、上記の特例を受けるためには、太陽光パネルの適切な廃棄が求められ、エビデンスの提出が必要となります。

[13]経済産業省 資源エネルギー庁「再エネの大量導入に向けて」

土地開発に関連する認定手続の厳格化

2つ目は、土地開発に関連する認定手続の厳格化です。

再エネ発電事業に向けて、周辺地域の災害リスクに直接影響を及ぼす可能性のある土地開発を行う場合、以下の3つの許認可が必要となります[1]

  1. 森林法の林地開発許可
  2. 宅地造成及び特定盛土等規制法の許可
  3. 砂防三法(砂防法・地すべり等防止法・急傾斜地法)の許可

周辺地域の住民に対し、説明会等の事前周知の実施

3つ目は、FIT/FIP制度における認定要件に、周辺地域の住民に対し、説明会等の事前周知が追加された点です。

再エネ発電事業の区分が、特別高圧・高圧(50kW以上)の場合は説明会の開催が求められ、低圧(50kW未満)の場合は原則として説明会以外の事前周知(ポスティング等)が求められます[12]。ただし、電源が屋根設置・住宅用太陽光の場合は、事前周知の対象外です。

周辺地域の住民に対する説明会では、以下の6つの項目を説明しなければなりません[1]

  1. 事業計画の内容
  2. 関係法令遵守状況
  3. 土地権原取得状況
  4. 事業に関する工事概要
  5. 関係者情報(主な出資者等を含む)
  6. 事業の影響と予防措置

その他、周辺地域の住民の範囲や、説明会の開催時期、住民に対して質疑応答の時間を設けるなど、さまざまな規定が改正再エネ特措法で定められています。

なお、すでにFIT/FIP認定を取得した事業者であっても、事業計画の重要事項を変更した場合(事業譲渡や実質的支配者の変更等)は、改めて説明会の開催または事前周知の措置が必要となります[1]

違反時には交付金の一時停止・返還等ペナルティが課される

4つ目は、違反時にはFIT/FIP交付金の一時停止および返還命令等のペナルティが課される点です[1]

法改正後は、再エネ特措法や関係法令の罰則の対象となる違反が覚知され、客観的な措置(書面による指導等)を受けた事業者に対し、FIT/FIP交付金を一時停止する措置を講じることが可能になります。違反状態を早期に解消するか、事業の廃止および適正な廃棄を行った場合、一時停止された交付金を取り戻すことが可能です。

ただし、違反が解消されず、FIT/FIP認定が取り消された場合は、交付金の返還命令が下されます。

認定事業者の委託先・再委託先に対する監督義務

5つ目は、FIT/FIP制度の認定事業者が負う監督義務についてです。

FIT/FIP制度に認定された事業者は、手続代行・プロジェクトマネジメント、設計、土地開発、建設・設置工事、保守点検、設備解体、廃棄などの再エネ発電事業の実施に必要な業務を委託する場合、監督義務を負います[1]

また、認定事業者と委託先との間で締結する契約書で、委託先も認定基準・認定計画に従うべき旨を明確化するとともに、認定事業者への報告体制、再委託時の認定事業者の事前同意などの事項を含めるよう求められています。

また認定事業者は、委託契約の概要などについて、国に対して年1回定期報告を行う必要があります。

【まとめ】再エネ特措法の内容や2024年の改正ポイントを知っておこう

再エネ特措法は、FIT/FIP制度を中核として、日本における再エネの普及を後押しするために制定された法律です。2024年に再エネ特措法が改正され、太陽光発電に関する買取価格特例や、FIT/FIP制度の認定要件や責任(監督業務)、FIT/FIP交付金を一時停止する措置などの変更点が盛り込まれました。

FIT/FIP制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を利用する全ての方に関わる制度です。再エネ特措法の内容や、2024年の改正ポイントについて知っておきましょう。

>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン

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