エネルギー自給率とは?日本における現状や問題点をわかりやすく解説
日本は他のOECD(経済協力開発機構)諸国と比べて、エネルギー自給率が低い国です。特に石油や石炭、天然ガスなど、化石燃料のほとんどを輸入に頼っています。
エネルギー自給率が低いと、燃料価格の高騰の影響を受け、電気料金の値上げにつながる恐れがあります。実際にロシアによるウクライナ侵攻を背景として燃料価格が大きく高騰し、2023年6月には大手電力会社7社(北海道電力、東北電力、東京電力エナジーパートナー、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力)が約1割~約4割の値上げを行いました[1]。
日本のエネルギー自給率を改善するため、企業にもできることがいくつかあります。本記事では、日本におけるエネルギー自給率の現状や問題点、企業に求められる対策について解説します。
[1]経済産業省 資源エネルギー庁「2023年6月の電気料金、なぜ値上がりするの?いくらになるの?」
>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン
目次
エネルギー自給率とは?
国民生活や経済活動を営む上で、エネルギーの安定供給は欠かせません。石油や石炭、原子力、天然ガス、水力、地熱、太陽光など、さまざまな手段によって供給される一次エネルギーは、電力や都市ガスといった二次エネルギーに形を変えて、国内の一般家庭や産業活動、交通機関などで大量に消費されています。
“国民生活や経済活動に必要な一次エネルギーのうち、自国内で産出・確保できる比率”のことをエネルギー自給率と言います[2]。
石油や天然ガスなどの資源が乏しい日本は、世界的に見てもエネルギー自給率が低い国です。特に東日本大震災以降は、原子力発電所の稼働停止などの影響を受け、大幅にエネルギー自給率が低下しました。
日本におけるエネルギー自給率の現状や、その結果として生じるさまざまな問題について知っておきましょう。
[2]経済産業省 資源エネルギー庁「日本のエネルギー2023年度版「エネルギーの今を知る10の質問」」
日本におけるエネルギー自給率の現状
2021年度の日本のエネルギー自給率は、わずか13.3%にとどまりました[2]。エネルギー自給率が100%を超えるノルウェーやオーストラリア、カナダ、アメリカといったOECD諸国と比べて、日本のエネルギー自給率は低い水準です。
OECD諸国 | 一次エネルギー自給率(2021年) |
ノルウェー | 745.7% |
オーストラリア | 327.4% |
カナダ | 185.7% |
アメリカ | 103.5% |
イギリス | 63.1% |
フランス | 54.0% |
ドイツ | 35.3% |
スペイン | 30.5% |
韓国 | 18.0% |
日本 | 13.3% |
ルクセンブルグ | 8.5% |
エネルギー自給率が低い理由
日本のエネルギー自給率が低い理由は、一次エネルギーのうち、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料の大部分を海外からの輸入に頼っているからです。
2022年度の化石燃料別海外依存度
化石燃料 | 海外依存度 |
石油(原油) | 99.7% |
石炭 | 99.7% |
天然ガス | 97.8% |
特に石油は、国内消費量の約90%を中東地域から輸入しており、中東諸国を中心とした国際情勢の変化によって大きく影響を受けやすい状況にあります。1970年代に大きな混乱を引き起こしたオイルショックも、産油国である中東諸国の戦争をきっかけとして起こった出来事です。
オイルショック以後、国はエネルギー源の多角化に取り組み、国内の一次エネルギーに占める石油の割合は低下しています。しかし東日本大震災以降は、原子力発電所の稼働が相次いで停止したことから、化石燃料全体への依存度は2022年度に83.5%に上昇しています[3]。
[3]経済産業省 資源エネルギー庁「2023―日本が抱えているエネルギー問題(前編)」
日本のエネルギー自給率に関する問題
日本のエネルギー自給率がこのまま改善しない場合、以下のような問題が起きる可能性があります。
- 温室効果ガス排出削減が困難になる
- 電気料金が上がる
- 輸入がストップするとエネルギー不足に陥る
温室効果ガス排出削減が困難になる
1つ目は、化石燃料への依存によって生じる問題です。
化石燃料は、エネルギーとして利用する過程で、気候変動問題の原因となる温室効果ガスを大量に排出します。資源エネルギー庁によると、2022年度における国内の温室効果ガス排出量の約84%がエネルギー由来のものです[2]。
日本は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、温室効果ガスの排出削減に向けて取り組んできました[4]。既存の電力需要を満たしつつ、どのように化石燃料への依存から脱却するかが重要な課題となっています。
電気料金が上がる
2つ目は、電気料金が上がる可能性があるという問題です。
電気料金には、燃料費調整という仕組みがあり、石油や石炭、天然ガスなどの燃料価格が高騰すると、電気料金に自動的に反映されます。2023年6月に行われた電気料金の値上げも、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけとした燃料価格の高騰が原因です[1]。
エネルギー自給率が低いと、燃料価格の高騰による影響を受けやすく、一般家庭や事業者の経済的負担の増加にもつながります。
輸入がストップするとエネルギー不足に陥る
3つ目は、海外情勢の変化によって化石燃料などの輸入がストップし、深刻なエネルギー不足を引き起こす可能性があるという問題です。
2022年に起きたロシアによるウクライナ侵攻でも、ロシア産資源に対する禁輸措置がとられ、ロシアへの依存度が高い欧州各国を中心として大きな混乱が生じました。
エネルギー需給のひっ迫を避けるためにも、一次エネルギーの海外からの輸入に依存せず、国内のエネルギー自給率を高める必要があります。
エネルギー自給率を高めるためにできること
日本のエネルギー自給率を高めるため、企業にもできることが2つあります。
- 省エネに取り組む
- 再生可能エネルギーを取り入れる
省エネの推進や再生可能エネルギーの導入拡大によって、化石燃料への依存を減らし、国内のエネルギー自給率を高めることが可能です。
省エネに取り組む
1つ目は、省エネ対策を実施することです。国内の企業が省エネを進め、エネルギーの消費効率を高めることで、海外から輸入するエネルギーの量を減らせます。
化石資源に乏しい日本は、早くから省エネに取り組んでおり、世界でトップクラスの省エネ技術を持つ国です。資源エネルギー庁は、さらに省エネを推進するため、2030年度に原油換算で約6,200万キロリットルのエネルギー消費削減を目標に掲げています[6]。
企業レベルでも、消費電力量が少ない設備への更新や、従業員の省エネ意識の向上など、できるところから省エネに取り組みましょう。
[6]経済産業省 資源エネルギー庁「2023―日本が抱えているエネルギー問題(後編)」
再生可能エネルギーを取り入れる
2つ目は、再生可能エネルギーの導入です。
既存の電力契約を見直し、再生可能エネルギーに由来する電力へ切り替えることで、エネルギー自給率向上の妨げとなっている化石燃料の消費量を減らせます。
再生可能エネルギーの導入は、「脱炭素化」の一環ともいえます。消費者の関心が高まっている取り組みです。再生可能エネルギーを取り入れることで、消費者に対し、環境活動への貢献をアピールできるというメリットも得られます。
【まとめ】エネルギー自給率の改善に向けて、企業ができる対策を!
エネルギー自給率とは、国内の資源だけでどのくらいエネルギーを自給自足できるかを表す指標です。日本のエネルギー自給率は世界的に見ても低く、2021年の時点ではわずか13.3%にとどまっています[2]。
エネルギー自給率を高めるため、省エネの推進や再生可能エネルギーへの切り替えなど、企業にもできる対策に取り組みましょう。エネルギー自給率の改善に貢献することで、将来のエネルギー不足や電気代の高騰を防ぎ、事業活動を安定して継続できる環境づくりにもつながります。