日本のエネルギー自給率向上への道筋:現状分析から企業の取り組みまで

エネルギーは現代社会の基盤を支える重要な要素であり、経済活動や日常生活に欠かせないものです。しかし、日本のエネルギー自給率は他の先進国と比較して低く、主に化石燃料の輸入に依存しています。この高い依存度は、国際情勢や燃料価格の変動に対する脆弱性を増し、経済や国民生活に直接的な影響を及ぼすリスクを孕んでいます。そこで本コラムでは、日本のエネルギー自給率の現状と最新の動向を詳細に分析し、直面する課題とそれに対する必要な対策、さらに企業が果たすべき具体的な役割について考察します。
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目次
日本のエネルギー自給率の現状

日本のエネルギー自給率は長年にわたり低迷し続けており、2021年度にはわずか13.3%にとどまりました。これは一次エネルギー国内産出量が約1.35兆kWhに対し、国内供給量が2.6兆kWhに達しているためです。特に石油、天然ガス、石炭といった化石燃料の多くを海外から輸入に頼っていることが大きな要因となっています。エネルギー自給率の低さは、エネルギーセキュリティの観点からも問題視されており、国際的なエネルギー市場の不安定性や地政学的リスクに対する脆弱性を高めています。
年度 | エネルギー自給率 (%) |
---|---|
2010 | 20.2 |
2011 | 11.5 |
2012 | 6.7 |
2013 | 6.5 |
2014 | 6.3 |
2015 | 7.3 |
2016 | 8.0 |
2017 | 9.5 |
2018 | 11.7 |
2019 | 12.1 |
2020 | 11.3 |
2021 | 13.3 |
2022 | 12.6 |
最新の動向と将来予測

資源エネルギー庁の「総合エネルギー統計」によると、2040年度にはエネルギー自給率が3~4割程度に向上する見込みです。この向上は、再生可能エネルギーの大幅な導入とエネルギー需給の多様化によるものです。具体的には、太陽光発電や風力発電、地熱発電などの再生可能エネルギー源の導入が進んでおり、技術革新とコスト削減が後押ししています。また、エネルギーのレジリエンス強化も進められており、自然災害やサイバー攻撃に強いエネルギーインフラの構築が急務とされています。加えて、脱炭素社会への移行が進む中で、原子力発電の再稼働や次世代原子力技術の開発も視野に入れられています。
日本が直面する課題

日本のエネルギー自給率向上には以下のような課題が存在します。
- 化石燃料依存の脱却:東日本大震災後、原子力発電所の多くが停止した結果、化石燃料への依存度が急増しました。これにより、エネルギーコストの上昇や温室効果ガス排出の増加が懸念されています。
- 再生可能エネルギーの導入拡大:再エネの導入には初期投資や技術的な課題が伴います。また、発電量の不安定さや土地利用の問題もあり、持続可能な導入には解決すべき課題が多く存在します。
- エネルギーインフラの老朽化:日本のエネルギーインフラは高度成長期に構築されたもので、多くが老朽化しています。これにより、電力供給の安定性確保やインフラの更新が急務となっています。
- 国際情勢の不安定化:特に中東からの石油供給に高度に依存しているため、地政学的リスクがエネルギー供給に直結する危険性があります。新興国のエネルギー需要の増加も輸入価格の変動要因となっています。
エネルギー自給率向上のための対策

エネルギー自給率を向上させるためには、以下の対策が必要です。
- 再生可能エネルギーの拡大:太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど多様な再エネ源を積極的に導入・拡大することが不可欠です。これには政府の支援策や技術革新の促進が重要です。
- 省エネルギーの推進:産業界全体で省エネ技術の導入と効率化を進めることで、エネルギー消費量を削減し、国内エネルギーの需要を抑制することが可能です。
- エネルギーインフラの強化:送配電網の拡充やスマートグリッドの導入により、エネルギーの効率的な供給と需要管理を実現します。これにより、エネルギーの無駄を減らし、安定供給を確保します。
- エネルギー多層化:複数のエネルギー源を組み合わせた供給体制を確立し、エネルギー供給の安定性と柔軟性を高めます。これには原子力、再生可能エネルギー、天然ガスなどのバランスの取れたエネルギーミックスが求められます。
- 政策支援とインセンティブ:政府による補助金や税制優遇策の導入を通じて、再生可能エネルギーの導入や省エネ技術の普及を促進します。また、企業や個人が積極的にエネルギー効率化に取り組むための支援も重要です。
日本でのエネルギー自給率を高めるためには、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーを積極的に使うことが必要です。これを達成するには、政府の支援と技術革新が欠かせません。企業も、自社での再エネ設備導入や地域のプロジェクトへの協力を通じて貢献できます。このような戦略で、エネルギー自給率向上と持続可能な社会を目指します。
企業ができる具体的な取り組み

企業はエネルギー自給率向上に向けて以下のような具体的な取り組みを行うことができます。
省エネ対策の実施
企業が省エネを推進することで、エネルギー消費量を削減し、結果的に国内エネルギーの需要減少に貢献します。具体的な取り組みとしては、エネルギー効率の高い設備への投資や、生産プロセスの見直しが挙げられます。また、従業員への省エネ意識の啓発や、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入も効果的です。
再生可能エネルギーの導入
自社の施設に太陽光パネルや風力発電設備を設置することで、再生可能エネルギーの利用拡大に寄与します。また、再生可能エネルギー由来の電力を選択する電力プランへの切り替えも有効です。さらに、地域の再生可能エネルギープロジェクトへの投資や協力を通じて、企業全体の再エネ導入を支援することも可能です。
エネルギー管理システムの導入
エネルギー使用状況をリアルタイムで監視・管理するエネルギー管理システム(EMS)を導入することで、無駄なエネルギー消費を防ぎ、効率的なエネルギー利用を実現します。データ分析を活用してピーク時のエネルギー使用を抑制し、全体的なエネルギー効率を向上させることができます。
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HEMS活用でオフィスのエネルギー効率を最適化する方法
サプライチェーンの最適化
取引先との協力を通じて、サプライチェーン全体でのエネルギー効率を向上させる取り組みも重要です。具体的には、物流の効率化や共通の省エネ基準の設定、エネルギー使用の最適化などを行うことで、企業全体のエネルギー消費を削減できます。また、サプライヤーに対するエネルギー効率化の支援や共同プロジェクトの推進も効果的です。
まとめ

日本のエネルギー自給率は依然として低く、多くの課題に直面しています。しかし、再生可能エネルギーの積極的な導入や省エネ対策、エネルギーインフラの強化を進めることで、2040年度には自給率の大幅な向上が期待されています。企業もこの動きに積極的に参加し、省エネや再エネ導入を推進することで、エネルギー自給率向上に貢献するとともに、自社の持続可能な成長にも繋げることができます。今後も政府と企業が連携し、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた努力が求められます。エネルギーの安定供給と環境保護を両立させるために、全てのステークホルダーが協力し合うことが重要です。