再エネ特措法の概要と2024年の改正内容を徹底解説
近年、地球温暖化対策やエネルギーの持続可能性が世界的な課題として注目される中、再生可能エネルギーの導入が急速に進んでいます。日本においても、政府は再生可能エネルギーの普及を促進するための法律として「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(通称:再エネ特措法)」を制定し、継続的な改正を行っています。
近年の再エネ特措法は段階的に改正されており、特に2024年4月からは新たな措置が施行されました。これら一連の改正は、再生可能エネルギーの導入拡大と持続可能な運用を目指し、事業規律の強化や地域住民とのコミュニケーション強化など、さまざまな新たな規定が盛り込まれたものです。
本コラムでは、再エネ特措法の概要と2024年の改正内容を網羅的に解説し、企業や自治体が具体的にどのように対応すべきかを提示します。また、コーポレートPPAの課題とその解決策、中小企業向けSBT(サイエンス・ベースド・ターゲット)の概要、具体的な再エネプロジェクトの事例紹介など、実務に役立つ情報を交えて詳述します。
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目次
再エネ特措法とは

再生可能エネルギーの普及促進とエネルギー自給率の向上を目的として、再エネ特措法が制定されました。この法律は、再生可能エネルギーの導入に伴う技術的・経済的障壁を低減し、持続可能なエネルギーシステムの構築を支援するための枠組みを提供します。
背景には、地球温暖化対策や資源の枯渇、エネルギー安全保障の観点から、クリーンエネルギーの導入が急務とされている現実があります。
再エネ特措法は、再生可能エネルギーの導入を促進するために、以下のような施策を講じています。
- 固定価格買取制度(FIT)の維持と強化
発電事業者が再生可能エネルギーで発電した電力を、一定期間固定価格で電力会社に買取ってもらう制度。
これにより、安定した収益が確保され、新規投資が促進されます。 - 柔軟な供給体制の構築
再生可能エネルギーの導入が進む中で、不安定な電力供給を補完するための蓄電技術やスマートグリッドの普及を支援します。 - 地方自治体との連携強化
再エネプロジェクトが地域に与える影響を最小限に抑えつつ、地域経済の活性化を図るため、地方自治体との協力体制を強化します。
▶FIP制度/FIT制度についての詳しい解説は以下をご確認ください。
改正再エネ特措法の概要

改正の主なポイント
2024年に施行された改正再エネ特措法では、以下の主要なポイントが盛り込まれています。
- 事業規律の強化
再生可能エネルギー事業者に対する運営の透明性と信頼性を高めるための規定が追加されました。
具体的には、事業者の財務状況や運営状況の定期的な報告義務が強化され、第三者機関による評価が義務付けられました。 - 地域コミュニケーションの強化
再エネプロジェクトを実施する地域住民との適切なコミュニケーションを図るため、説明会の開催や地域参画のプロセスが義務付けられました。
これにより、プロジェクト導入に対する地域住民の理解と協力を得やすくなります。
事業規律の強化
改正法では、再生可能エネルギー事業者に対し、以下の規律が強化されました。
- 定期的な報告義務
事業者は再エネ発電量や運営状況について、年次報告を義務付けられます。
これにより、事業の透明性が向上し、投資家や地域住民に対する信頼性が高まります。 - 第三者評価の導入(審査強化)
事業の透明性向上のため、事業計画の認定審査において、事業計画策定ガイドラインへの適合性が確認されるようになりました。
このガイドラインでは、事業の実施体制や財務状況の安定性などが求められます。この評価に基づき、事業者は運営改善を図るとともに、持続可能な事業運営を目指します。 - コンプライアンス強化
法律や規制の遵守状況を厳しく監視する仕組みが整備され、違反時の罰則が強化されました。
これにより、健全な事業運営が促進され、業界全体の信頼性が向上します。
このような規律強化により、再生可能エネルギー事業の質が向上し、持続可能なエネルギー供給体制の確立が期待されています。
地域住民とのコミュニケーションの強化
地域住民との良好な関係構築を目的として、以下の施策が導入されました。
- 説明会の開催
再エネプロジェクト開始前に、地域住民向けの説明会を開催し、計画内容や影響について詳しく説明することが義務付けられました。
これにより、住民の理解と協力を得やすくなります。 - 意見募集の強化
住民からの意見や懸念を積極的に収集し、プロジェクトに反映させる仕組みが整えられました。
住民の声を反映することで、プロジェクトの円滑な進行が期待できます。
これらの施策により、再エネプロジェクトが地域社会に与える影響を最小限に抑えつつ、住民と事業者の協力関係が強化されます。
改正による影響とメリット

企業への影響
改正再エネ特措法は、企業に対して多岐にわたる影響とメリットをもたらします。
- エネルギーコストの最適化
再エネ調達方法の多様化により、企業は自社のエネルギー使用状況に最適なプランを選択し、コスト削減を図ることが可能となります。
えば、コーポレートPPAを活用することで、長期的な電力供給契約により安定したエネルギー価格を確保することができます。 - 企業イメージの向上
再生可能エネルギーの積極的な導入は、企業の環境意識の高さを示し、ブランドイメージの向上につながります。
これにより、消費者や取引先からの信頼性が高まり、競争力が強化されます。 - 持続可能な経営の支援
法律に基づいた再生可能エネルギーの導入は、持続可能な経営戦略の一部として位置付けられます。
これにより、企業は環境負荷の低減とともに、長期的な経営安定性を確保することが可能となります。 - SBT対応の推進
改正法に基づく再エネ導入は、企業がSBT(サイエンス・ベースド・ターゲッツ)を達成するうえでも重要な手段となります。
特に中小企業においては、SBTの目標設定を通じて国際的な環境基準に沿った経営を行い、取引先や投資家からの信頼を高める効果が期待されます。
▶SBTについての詳しい解説は以下をご確認ください。
- コーポレートPPAの活用
改正法により、コーポレートPPAの活用が促進され、企業は自社のニーズに合った再エネルギー供給契約を結ぶことが容易になります。
これにより、再エネルギーの導入が加速し、企業の環境目標達成に寄与します。
▶コーポレートPPAの詳細については以下をご参照ください。
さらに、コーポレートPPAを導入する際の課題として、建設用地の確保や送配電網への接続、長期契約リスクなどがありますが、改正法によりこれらの課題に対する政府や関係機関からのサポートが強化され、企業は安心して再エネ導入を進めることができる環境が整備されています。
地域社会への影響
再エネ特措法の改正は、地域社会に対しても以下のような影響を与えます。
- 雇用創出
再エネプロジェクトの推進により、地元での雇用が創出されます。
建設段階での雇用だけでなく、運営業務やメンテナンスにおいても新たな雇用機会が生まれます。 - 地域経済の活性化
再生可能エネルギーの導入は、地域の経済活動を活性化し、新たなビジネスチャンスを生み出します。
例えば、地元企業との協力や、観光資源としての再エネ施設の活用などが挙げられます。 - 環境改善
クリーンエネルギーの利用拡大により、地域の環境負荷が軽減されます。
これにより、地域住民の生活環境が向上し、健康被害の低減や自然環境の保護が実現されます。 - 防災機能の強化
再エネ設備の導入により、災害時のエネルギー供給が安定化します。
特に、マイクログリッドや蓄電池の利用により、停電時にも基本的な電力供給が可能となり、防災機能が強化されます。
地域住民とのコミュニケーション強化により、これらのメリットが最大限に享受され、地域社会と再エネ事業者との協力関係が深まります。
再エネの電源確保方法

再生可能エネルギーの導入において、企業や自治体がどのように電源を確保するかは重要な課題です。主に以下の2つの方法があります。
自前での再生可能エネルギー発電
企業や自治体が自前で再生可能エネルギーを確保する方法として、以下の選択肢があります。
- 敷地内発電
敷地内に十分なスペースがある場合、太陽光パネルや風力発電設備を設置し、自主的に電力を生成します。
例えば、工場やオフィスビルの屋上に太陽光パネルを設置することで、自社での電力需要を賄うことが可能です。 - 敷地外発電
敷地内にスペースがない場合、他の場所に発電設備を設置し、電力を自社に供給する仕組みを構築します。
これには、例えば、農地や未利用地に太陽光発電を設置し、企業に電力を供給する形態が考えられます。 - バイオマス発電
木材や農業廃棄物などのバイオマス資源を利用した発電設備を設置し、再生可能エネルギーを生成します。
これにより、地域の森林資源を有効活用しつつ、持続可能なエネルギー供給が可能となります。
これらの自前発電は、エネルギーの自給自足を実現し、長期的なコスト削減やエネルギー供給の安定化に寄与します。ただし、初期投資が高額となる場合が多く、維持管理が必要であるため、資金調達や運営計画が重要です。
▶バイオマス発電については下記記事をご確認ください。
間接的な再生可能エネルギー調達
間接的に再生可能エネルギーを調達する方法には、以下のものがあります。
- 再エネ電力メニューへの切り替え
電力会社が提供する再生可能エネルギー由来の電力プランに契約を変更します。
これにより、現行の電力契約を維持しつつ、再エネ電力を利用することができます。 - 非化石証書の購入
現在の電力契約を維持しつつ、別途非化石証書を購入して環境価値を補完します。
非化石証書を通じて、実際には再エネ発電所から供給される電力を支援する形となり、間接的に再エネを利用することが可能です。 - コーポレートPPAの活用
企業と再エネ発電事業者との間で、長期的な電力供給契約を締結します。
これにより、安定した価格で再生可能エネルギーを供給してもらうとともに、自社の環境目標達成に寄与します。
| 調達方法 | 利点 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自前発電(敷地内) | エネルギーの自給自足、長期的コスト削減 | 初期投資が高い、維持管理が必要 |
| 自前発電(敷地外) | 他者の土地を利用可能、コスト分散 | 供給契約や距離による電力ロス |
| 再エネ電力メニュー | 簡便で迅速、手軽に再エネを利用 | 電力単価の変動リスク |
| 非化石証書 | 現行契約を維持可、柔軟な再エネ導入 | 証書の価格変動 |
| コーポレートPPA | 長期的な価格安定、環境目標の達成 | 契約期間中のリスク管理が必要 |
これらの調達方法を組み合わせることで、企業や自治体は自社のニーズや状況に応じて最適な再エネ導入計画を策定することが可能です。
▶非化石証書についての解説は以下のリンクからご確認ください。
再エネ調達方針の検討

再エネ調達方針の検討において、コストや供給安定性だけでなく、SBTの削減目標との整合性を意識することが重要です。企業や自治体は、自社の脱炭素ロードマップに合わせて、どの程度の再エネ調達が必要かを明確にし、その実現手段を選択することが求められます。
自営線マイクログリッドの活用
自営線マイクログリッドとは、施設や地域内でエネルギーを自立的に供給するための小規模な電力網です。これにより、再生可能エネルギーの効率的な利用が可能となります。
- 利点
電力の安定供給、エネルギーコストの削減、災害時の耐久性向上などが挙げられます。
特に災害時には、マイクログリッドが独立して電力を供給することで、重要施設の運営を維持することができます。 - 導入事例
公共施設や住宅地での導入が進んでおり、地域全体でのエネルギー管理が実現しています。
例えば、熊本県菊池郡大津町のHonda熊本製作所では、太陽光発電と蓄電池を組み合わせたマイクログリッドを導入し、災害時の電力供給を確保しています。 - 技術的要件
マイクログリッドの設計には、再生可能エネルギー発電設備、蓄電池、需要予測システム(CEMS)などが必要です。
これらを効果的に組み合わせることで、エネルギーの効率的な利用と供給の安定化が図れます。
電力メニューの選択と再エネ証書の購入
企業や自治体は、電力会社が提供する再エネ電力メニューへの切り替えや、再エネ証書の購入を通じて再生可能エネルギーを利用することができます。
- 電力メニューの選択
電力会社が提供する再生可能エネルギー由来の電力プランに契約を変更することで、手軽に再エネを利用できます。
これには、太陽光、風力、水力など多様なエネルギー源が含まれます。 - 非化石証書の購入
非化石証書は、再生可能エネルギーで発電された電力の環境価値を証明する証書です。
企業や自治体は、自社の電力使用量に応じて非化石証書を購入し、環境貢献度を高めることができます。 - コーポレートPPAとの併用
非化石証書の購入とコーポレートPPAを組み合わせることで、企業は電力の直接供給と環境価値の両面から再エネを活用できます。
このように、複数の調達方法を組み合わせることで、柔軟かつ効率的なエネルギー戦略の実現が可能となります。
政府の支援策と補助金

再生可能エネルギーの導入には、多大な初期投資が必要となることが多いため、政府の支援策や補助金制度が重要な役割を果たします。
グリーンファイナンスサポーターズの役割
グリーンファイナンスサポーターズは、再生可能エネルギー事業の推進を支援するための制度です。この制度では、補助金や外部レビュー費用の支援を行い、事業者が再エネプロジェクトを円滑に進めることができるようサポートします。
- 補助金の対象
外部レビューやコンサルティング費用が補助対象となります。
これにより、再エネプロジェクトの計画段階で必要となる専門的な知識や技術支援を受けることが可能です。 - 申請方法
事前に登録を受けた機関を通じて申請を行います。
申請手続きは比較的簡便であり、迅速な支援が受けられるよう設計されています。 - メリット
補助金を活用することで、再エネプロジェクトの初期コストを軽減できます。
また、外部レビューの導入により、事業の品質と信頼性が向上し、投資家や地域住民からの信頼を得やすくなります。 - 事業継続支援
資源エネルギー庁が提供する「再生可能エネルギーの長期安定的な大量導入と事業継続に向けて(FIP制度関係)」では、FIP(Feed-in Premium)制度のプレミアム算定方法が明示されており、事業者が安定的に収益を確保できるよう支援しています。
これらの支援策により、再エネプロジェクトの導入が一層促進され、持続可能なエネルギー供給体制の構築が実現されます。
【グリーンファイナンスによる資金調達を行った企業の取組事例】https://greenfinanceportal.env.go.jp/greenfinance/regist_system/case.html
【まとめ】

再エネ特措法の改正は、再生可能エネルギーの導入促進と持続可能なエネルギー供給体制の構築を目指す重要なステップです。2024年の改正内容により、事業規律の強化や地域コミュニケーションの重要性が一層高まり、企業や自治体にとっては柔軟かつ効果的なエネルギー戦略の策定が求められます。
企業は、自社の電力使用状況に応じた再エネ調達方法を選択し、コスト削減と環境貢献を両立させることが可能です。また、コーポレートPPAの活用や再エネ証書の購入を通じて、持続可能な経営を実現することができます。さらに、事業規律の強化により、再エネプロジェクトの信頼性が向上し、投資家や地域社会からの支持を得やすくなります。
地域社会と協力することで、雇用創出や地域経済の活性化、環境改善など、多くのメリットが享受されます。再エネ特措法の改正に基づき、地域住民とのコミュニケーションを重視したプロジェクト運営が進むことで、持続可能なエネルギーシステムの構築が加速します。
さらに、中小企業向けSBT(サイエンス・ベースド・ターゲット)の導入により、企業は科学的根拠に基づいた温室効果ガス削減目標を設定し、持続可能な経営を推進することができます。これにより、企業の環境負荷を低減しつつ、国際的な環境基準への適合も図れます。
再エネ特措法の改正を正しく理解し、最新の情報を基に適切な対応を行うことで、企業や自治体は持続可能な未来に向けたエネルギー戦略を実現することができます。今後も法律の動向や技術の進展に注目し、柔軟に対応していくことが重要です。再生可能エネルギーの普及は、地球規模の環境課題解決に向けた大きな一歩であり、地域と企業が協力して未来のエネルギー基盤を築くことが求められます。

