高圧電力の補助金・支援金はある?対象や期間を中小企業向けに解説

2024.03.13
2024.05.10
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近年、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻などの世界情勢を背景として、エネルギー価格が高騰しています。燃料の9割近くを輸入に頼る日本では、石油や天然ガスなどの価格上昇を受け、電気・ガスの料金負担額が大きく増加しました。[1]

そうした状況を踏まえて、政府は「電気・ガス価格激変緩和対策事業」をスタートさせ、電気・ガス価格の引き下げに向けて取り組んできました。また神奈川県や静岡県などの自治体では、令和6年(2024年)以降も支援を継続し、製造業工場または中小企業事業所等を対象に電気代高騰分の補助を行っています。

補助金・支援金の一部は、事業者向けの高圧電力や特別高圧電力も対象です。本記事では、中小企業を対象とした高圧電力の補助金・支援金や、申し込む際の注意点を解説します。

[1]資源エネルギー庁「エネルギー価格高騰と本事業の背景について」

>> 【法人のお客様向け】高圧・特別高圧の電力プランはこちら

企業向けの高圧電力の補助金・支援金

企業向けの高圧電力の補助金・支援金

昨今の世界的なエネルギー価格の高騰を受け、国は2022年10月に2023年1月以降の使用分を対象として、電気・ガス価格を使用量に応じて値引く「電気・ガス価格激変緩和対策事業」を発表・開始しました。[1]

本章では、国による補助金制度の仕組みや支援対象者、値引きの対象となる期限について紹介します。

「電気・ガス価格激変緩和対策事業」

電気・ガス価格激変緩和対策事業は、高騰を続ける電気・ガス料金の負担緩和のため、「料金単価から一定の額を値引きする」制度です。[1]

国が値引きのための原資を用意し、電気・ガスの小売事業者が、毎月の料金から使用量に応じた値引きを行う仕組みになっています。制度の利用に当たって、特別な手続きをする必要はありません。

知っておくべきポイントは、電気・ガス価格激変緩和対策事業の対象に企業や法人も含まれる点です。

電気・ガス価格激変緩和対策事業は高圧電力も対象

電気・ガス価格激変緩和対策事業は、一般家庭向けの電力(低圧電力)だけでなく、事業者向けの高圧電力も対象としています。電気・ガス料金の値引き幅は以下の表のとおりです。[1]

電気代都市ガス代
低圧契約高圧契約1,000万㎡未満
1kWh当たり3.5円の値引き1kWh当たり1.8円の値引き1㎥当たり15円の値引き

資源エネルギー庁のホームページによると、高圧電力を利用する企業は、1kWh当たり1.8円の値引きを受けられます。例えば、月々の使用量が1万kWhの場合、値引き額の合計は1万8,000円となります。実際の使用量に応じた値引き額を知りたい場合は、資源エネルギー庁のホームページにあるシミュレーターで計算することが可能です。[1]

電気・ガス価格激変緩和対策事業はいつまで継続?

電気・ガス価格激変緩和対策事業は値引きを受けられる期限が決まっている点に注意してください。2024年1月時点で決まっていることは、値引きの対象は、2024年4月使用分までとなっています。2024年5月以降は燃料価格の変動を注視しつつ、値引き幅が縮小されることが予定されています。資源エネルギー庁のホームページなどで最新の情報を入手してください。

各自治体による電力の補助金・支援金

各自治体による電力の補助金・支援金

国だけでなく、自治体も独自に事業者向けの補助金・支援金を設けています。自治体によっては、電気・ガス価格激変緩和対策事業が終了した後も電気代の値引き受付を行うと方針を定めた自治体もあります。ここでは、令和6年(2024年)以降も受付延長が決まっている高圧電力・特別高圧電力向けの支援事業を4つ紹介します。

都道府県支援事業
神奈川県神奈川県中小製造業等特別高圧受電者支援事業
静岡県特別高圧電力価格高騰対策緊急支援金
群馬県群馬県特別高圧電力価格高騰対策支援金
滋賀県滋賀県特別高圧電力料金負担軽減支援金

神奈川県中小製造業等特別高圧受電者支援事業

神奈川県は県内の中小企業を対象として、使用量に応じて電気料金を値引きする支援事業を行っています。[2]

区分対象月単価
第1期2023年4月~7月3.5円/kWh
第2期2023年8月3.5円/kWh
2023年9月1.8円/kWh
第3期2023年10月~12月1.8円/kWh

支援対象者は、事業所在地が神奈川県にあり、特別高圧(供給電圧が2万V以上)の区分で電力の供給を受ける製造業および倉庫業の企業です。電気料金の区分が特別高圧かどうか確認したい場合は、電力会社から送られてくる請求書などを確認してください。

神奈川県の支援事業は、すでに第3期の募集が始まっており、申請受付期間は2024年1月5日~2月15日までとなっており、対象期間は2023年12月分までとなっています。(2024年1月時点)[2]

[2]神奈川県「神奈川県中小製造業等特別高圧受電者支援事業」

静岡県特別高圧電力価格高騰対策緊急支援金

静岡県も、特別高圧電力を利用する中小企業を対象として、電気料金の負担軽減に向けた緊急支援を行っています。対象期間は、2023年10月~2024年3月使用分までの電気料金です。申請受付期間は、2024年1月10日~2月15日までとなっています。[3]

[3]静岡県「特別高圧電力価格高騰対策緊急支援金」

群馬県特別高圧電力価格高騰対策支援金

群馬県の「群馬県特別高圧電力価格高騰対策支援金」も、特別高圧契約の区分で受電する県内の事業所(公立施設・発電施設をのぞく)を対象とした支援事業です。ただし、他の自治体の支援事業と違って、中小企業だけでなく大企業も条件付きで支援金を受けられます。大企業の場合、2024年1月~3月までの営業利益率が前年同期比で低下した事業者のみが対象です。[4]

また中小企業と大企業では、電気代の値引き幅も違います。

企業区分支援額(2023年10月~2024年5月)
大企業0.9円/kWh(2024年5月分のみ0.5円/kWh)
中小企業1.8円/kWh(2024年5月分のみ0.9円/kWh)

中小企業は一括での申請だけでなく、第3回(対象:2023年10月~12月/申込期限:2024年2月1日~2月29日)、第4回(対象:2024年1月~5月/申込期限:2024年7月1日~7月31日)に分けて申請することも可能です。詳細は群馬県のホームページを確認してください。

[4]群馬県「群馬県特別高圧電力価格高騰対策支援金について」

滋賀県特別高圧電力料金負担軽減支援金

滋賀県も中小企業を対象とした支援事業を行っています。電気代の値引きを受けられるのは、以下の要件のいずれかに当てはまる事業者です。[5]

  • 県内に特別高圧電力の供給を受けている事業所等を有する中小企業等
  • 県内の特別高圧電力の供給を受けている施設内に事業所等を有する中小企業等

滋賀県特別高圧電力料金負担軽減支援金は、給付対象期間が2024年5月分まで延長されることが決まっています。2023年10~12月分の申請は、すでに2024年1月15日から始まっています。申請受付期間が段階的に設けられているため該当事業者の方はご注意ください。[5]

[5]滋賀県「滋賀県特別高圧電力料金負担軽減支援金について」

電力の補助金・支援金を利用するときの注意点

電力の補助金・支援金を利用するときの注意点

高圧電力の補助金・支援金を利用するときの注意点は2つあります。

  • 申請期間に注意する
  • 自治体が発信する情報を随時チェックしておく

申請期間に注意する

高圧電力を対象とした補助金・支援金は、いずれも申請受付期間が決まっています。申請受付期間を過ぎると支援を受けられないため、国や自治体のホームページにアクセスし、募集要項を必ず確認してください。ただし、自治体によっては支援の延長が決まっており、次回以降の申し込みが可能なケースもあります。

自治体が発信する情報を随時チェックしておく

自治体ごとの補助金・支援金を見逃さないためには、ホームページなどで最新情報を随時チェックしておくことが大切です。神奈川県のように電子申請しか受け付けていない自治体もあるため、補助金・支援金に関するページをブックマークしておくことをおすすめします。

【まとめ】高圧電力も利用できる補助金・支援金を有効活用しよう

電気・ガス料金の高騰を受けて、国や自治体がさまざまな支援を提供しています。例えば、国の「電気・ガス価格激変緩和対策事業」は、2024年4月使用分までを期限として、毎月の電気・ガス料金を値引く制度です。

また神奈川県の神奈川県中小製造業等特別高圧受電者支援事業や、静岡県の特別高圧電力価格高騰対策緊急支援金など、事業者の負担を減らす制度を設けている自治体があります。こうした制度は、事業者向けの高圧電力や特別高圧電力も対象です。補助金・支援金を有効活用し、エネルギー価格の高騰に対処しましょう。

>> 【法人のお客様向け】高圧・特別高圧の電力プランはこちら

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