Jクレジットとは?制度の仕組みやメリットを詳しく紹介
2024.05.24
2024.05.24
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2013年に経済産業省や環境省、農林水産省が管轄するJクレジット制度がスタートしました[1]。Jクレジットを購入すれば、省エネ設備や発電設備を持たない方でも、温室効果ガスの排出削減に貢献できます。また、温対法の温室効果ガス排出量の報告や、RE100をはじめとした国際イニシアティブへの報告にJクレジットを利用することも可能です。

本記事では、Jクレジット制度の仕組みやメリット、利用するときの注意点を詳しく紹介します。

[1]J-クレジット制度事務局「J-クレジット制度について」

>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン

3つのポイントでJクレジット制度について解説

Jクレジット制度とは、『省エネ・再エネ設備の導入や森林管理等による温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして認証する制度』です[1]。つまり、温室効果ガスの排出削減や、吸収量の増加につながる取り組みをクレジット(credit)として国が認証し、取引可能にした仕組みをJクレジット制度と言います。

ここでは、2013年から始まったJクレジット制度について、その仕組みや活用方法、注目されている理由の3つの視点で解説します。

Jクレジット制度の仕組み

Jクレジット制度は、環境価値を生み出す「Jクレジット創出者」と、クレジットを購入する「Jクレジット購入者」で成り立っている制度です。

Jクレジット創出者は、省エネ設備や再生可能エネルギーの導入、適切な森林管理など、温室効果ガスの排出削減や吸収量の増加につながる事業を実施します[2]。国が認定する審査機関は、温室効果ガスの排出削減量や吸収量に応じて、その環境価値の部分を売買可能なクレジットとして認定します。

温室効果ガスの排出削減や吸収量の増加につながる事業
省エネ設備の導入 (燃料転換、高効率化)ボイラーの導入、照明設備の導入など
再生可能エネルギーの導入太陽光発電設備の導入など
適切な森林管理植林・間伐など

一方、Jクレジット購入者は、仲介事業者(Jクレジット・プロバイダーなど)からクレジットを購入し、Jクレジット創出者に資金を還元します。Jクレジット創出者はクレジットの売却益を利用して、さらに環境対策を進めていくことが可能です。

このようにJクレジット制度は、Jクレジット創出者とJクレジット購入者の間の絶え間ない資金循環により、環境活動と経済活動を両立させるという狙いがあります。

[2]J-クレジット制度事務局「J-クレジット制度について」

Jクレジットの活用方法

Jクレジットには、以下のような活用方法があります[3]

  • 温対法や省エネ法での報告
  • カーボン・オフセットでの活用
  • CDPやSBT、RE100などの国際イニシアティブへの報告
  • SHIFT事業(※1)やASSET事業(※2)の目標達成
  • 経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成

(※1)SHIFT事業:工場や事業場での脱炭素化を推進するため、積極的に脱炭素化に取り組む企業などに対して補助金を交付する事業[4](※2)ASSET事業:企業に対し補助金などの支援を行い先進的な設備の導入や運用改善を促すとともに、目標を達成した企業にインセンティブを与えることで、CO2排出量の大幅削減を図る事業(新規募集は令和2年度で終了)[5]

Jクレジットは、国への温室効果ガス排出量の報告や、カーボン・オフセット(=事業活動で発生するCO2を他の方法で埋め合わせる取り組み)など、さまざまな環境活動に活用できます。

またCDP・SBTへの報告や、RE100の目標達成にもJクレジットを活用できるため、こうした国際イニシアティブへの参加を目指す企業にとっても大きなメリットがあります。ただし、Jクレジットの種類によってはRE100などの報告に活用できない場合があるため、後述する注意点を確認してください。

[3]J-クレジット制度事務局「J-クレジットの活用方法」
[4]環境省「SHIFT事業とは」
[5]環境省「ASSET事業とは」

Jクレジット制度が注目されている理由

経済産業省は、Jクレジット制度が注目される理由を効率性・網羅性・価格性の3つのキーワードで説明しています[6]

効率性資金循環の仕組みによって、温室効果ガスの排出削減や吸収量の増加につながる事業を効率的に進められる
網羅性他の排出量取引制度や炭素税などの仕組みと違って、全ての産業が対象になる
価格性環境活動に金銭的な価値が生まれるため、新たな資金調達の手段となる

このようにJクレジット制度は、社会全体として温室効果ガスを削減する上で、大きな役割を果たしている制度です。

[6]経済産業省「成長に資するカーボンプライシングについて②~クレジット取引等~」

Jクレジット制度を活用するメリット

Jクレジット制度を活用するメリット

Jクレジットを購入すれば、以下3つのメリットが得られます。

  • 企業のPRになる
  • 商品やサービスに付加価値が生まれる
  • 環境問題に取り組む企業とのつながりができる

企業のPRになる

1つ目のメリットは、企業の環境活動のPRにつながるという点です。

Jクレジットは温対法・省エネ法の報告や、RE100をはじめとした国際イニシアティブへの報告などに利用可能です。Jクレジットの購入を通じて、自社の環境活動を対外的にアピールし、企業価値を高められます。

商品やサービスに付加価値が生まれる

2つ目のメリットは、商品やサービスに付加価値が生まれるという点です。

Jクレジットを購入すれば、カーボン・オフセットロゴやJクレジット制度ロゴ、どんぐりマークなどのロゴマークを利用できます。こうしたロゴマークを活用し、商品やサービスのブランディングを行うことが可能です。ただし、ロゴマークによって使用条件が決まっているため、事前にJクレジット制度事務局のホームページを確認しましょう。

環境問題に取り組む企業とのつながりができる

3つ目のメリットは、環境問題に取り組む企業とのつながりができるという点です。

Jクレジット制度の利用を通じて、さまざまな企業や地方自治体、農業者、森林所有者とのネットワークが生まれます。こうしたネットワークの活用によって新たなビジネス機会の獲得や、ビジネスモデルの創出などが期待できます。

Jクレジット制度を利用するときの注意点

Jクレジット制度を利用するときの注意点

Jクレジット制度を利用するときの注意点は2つあります。

  • 市場規模はまだまだ小さい
  • 種類ごとに活用法の制限がある

市場規模はまだまだ小さい

Jクレジット制度は2013年にスタートし、取引量が順調に拡大しているものの、市場規模はまだまだ小規模である点に注意が必要です。経済産業省もJクレジット制度の課題の一つとして、先渡取引やセカンダリーマーケットが未成熟なため、クレジットの価格変動に対するリスクヘッジが難しいという点を挙げています[6]

種類ごとに活用法の制限がある

Jクレジットは、種類によって活用できる範囲が決まっているため、購入する前に確認しましょう[3]

活用方法再生可能エネルギー(電力)由来クレジット再生可能エネルギー(熱)由来クレジット省エネルギー由来クレジット森林吸収由来クレジット工業プロセス、農業、廃棄物由来クレジット
CDP質問書での報告×××
SBTでの報告×××
RE100での報告××××

【まとめ】Jクレジット制度を活用し、環境問題に関する取り組みをPRしよう

Jクレジット制度は、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を取引可能なクレジットとして国が認証し、他の企業や自治体が購入できるようにした制度です。Jクレジット制度を利用すれば、自前の省エネ設備や発電設備を持たない方でも、温室効果ガスの排出削減に貢献できます。

Jクレジット制度は、環境活動のPRやブランディングに活用できるなど、購入者側にもさまざまなメリットがあります。またRE100をはじめとした国際イニシアティブへの報告にも対応しているため、参加を検討する企業はJクレジット制度を利用しましょう。

>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン

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