VPP(バーチャルパワープラント)とは?仕組みやメリットを徹底解説
東日本大震災に伴う電力需給のひっ迫をきっかけとして、大規模発電所に依存する中央集権型のエネルギー供給システムが見直されました。一般家庭や企業においても、太陽光発電設備や燃料電池、蓄電池などの設備(エネルギーリソース)が普及し、「エネルギーの分散化」が進んでいます。
こうした分散型のエネルギーリソースを束ね、一つの発電所のように機能させる仕組みがVPP(バーチャルパワープラント)です。本記事では、VPPの仕組みや誕生した背景、VPPに参加するメリットを解説します。
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目次
VPP(バーチャルパワープラント)とは?
VPP(バーチャルパワープラント)とは、資源エネルギー庁によると『あちこちに散らばっている発電設備などをひとつに束ねて、あたかもひとつの発電所のように利用する』仕組みです[1]。
再生可能エネルギーが普及した結果、太陽光発電設備や燃料電池、蓄電池、電気自動車などの小規模な発電設備が、一般家庭や企業に散らばって設置されるようになりました。こうした設備のことを小規模分散型電源、または分散型エネルギーリソース(DER)と言います。
VPPはこうした設備をアグリゲーターと呼ばれる事業者が遠隔操作し、あたかも一つの発電所のように統合して制御する電力システムです。その仕組みから、日本語で仮想発電所と呼ばれることもあります。
VPPは大規模発電所を中心とした、従来のエネルギー供給システムに変わる新たな電力システムとして期待されています。
[1]経済産業省 資源エネルギー庁「これからは発電所もバーチャルになる!?」
VPPの仕組み
VPPにおいて重要な役割を果たしているのが、分散型エネルギーリソースを束ねるアグリゲーターです。アグリゲーターは、需要家(電気を利用する人)とVPPサービス契約を締結し、エネルギーリソースを統括制御するリソースアグリゲーターと、リソースアグリゲーターを管理し、小売電気事業者や一般送配電事業者に電力を供給するアグリゲーションコーディネーターの2種類に分かれています。
VPPの仕組み | 役割 |
需要家 | 分散型エネルギーリソースを通じ、電力を効率的に利用する |
リソースアグリゲーター | 需要家と契約し、分散型エネルギーリソースを統括制御する |
アグリゲーションコーディネーター | リソースアグリゲーターを束ね、小売電気事業者などに電力を供給する |
小売電気事業者など | VPPを活用し、電気の安定供給を図る |
またVPPに関連した仕組みとして、DR(デマンドレスポンス)があります。DRはその時々の電力供給量に応じて、需要家が電力需要を減らしたり(下げDR)、増やしたり(上げDR)したりする仕組みです。
DRによって電力需要と電力供給を一致させ、需給バランスを最適化できます。このDRを実施する上で、VPPは大きな役割を果たしています。
VPPが誕生した背景
VPPが誕生した背景には、2つの要因があります。
- 東日本大震災をきっかけとして、従来のエネルギー供給システムの見直しが必要になった
- IoTなどの技術が発展し、一般家庭や企業のエネルギーリソースを遠隔・統合制御できるようになった
東日本大震災の直後、約2,100万kW分の電力供給が停止し、電力需給がひっ迫しました[注2]。計画停電など、省エネ対策も行われましたが、この経験から大規模発電所(集中電源)に依存した中央集権型のエネルギー供給システムへの危機感が高まりました。
同時にIoT(モノのインターネット)などの技術が発展し、一般家庭や企業のエネルギーリソースをネットワークに接続して、遠隔・統合制御することが可能になりました。
こうした技術的要因に後押しされ、新たなエネルギー供給システムとして構想されたのがVPPです。VPPは非常時の電力供給だけでなく、DR(デマンドレスポンス)による電力需給の安定化にも大きく貢献しています。
[2]環境省「平成24年版 図で見る環境・循環型社会・生物多様性白書 第2節 電力需給の逼迫への対応」
VPP(バーチャルパワープラント)のメリット
VPP(バーチャルパワープラント)は、電力会社などの入札に応募することで、一般企業も参加できます。VPP(バーチャルパワープラント)に参加するメリットは3つあります。
- 電気料金の値引きなどの報酬を得られる
- 既存のエネルギーリソースをそのまま活用できる
- 電力供給の安定化に貢献し、社会的価値を創造できる
電気料金の値引きなどの報酬を得られる
1つ目のメリットは、電気料金の値引きなどの報酬を得られるという点です。
ほとんどのVPPサービス契約は、DR(デマンドレスポンス)がセットになっています。アグリゲーターの要請に応じ、電力消費を減らすことで、需要抑制量に応じた報酬(kW報酬やkWh報酬など)や、電気料金の値引きが受けられます
既存のエネルギーリソースをそのまま活用できる
2つ目のメリットは、既存のエネルギーリソースをそのまま活用できるという点です。
VPPへの参加に当たって、新たな設備投資は必要ありません。お使いの発電設備などのリソースをアグリゲーターに遠隔操作してもらうことでVPPへの参加が可能です。非常用電源などを平常時にも有効活用することで、DRによる報酬や電気料金の値引きを受けられます。
電力供給の安定化に貢献し、社会的価値を創造できる
3つ目のメリットは、VPPへの参加を通じて社会的価値を創造できるという点です。
夏季や冬季は電力需要が急激に高まり、電力需給がひっ迫する恐れがあります。VPPに参加することで、地域の電力供給の安定化に貢献し、社会課題の解決にコミットできます。VPPやDRへの参加をPRすれば、環境問題に取り組む先進的な企業としてのイメージ作りも可能です。
VPP(バーチャルパワープラント)に関する取り組み事例
ここでは、VPP(バーチャルパワープラント)に関する先進的な事例として、横浜市や東北電力の取り組みを紹介します。
横浜市における取り組み事例
横浜市では、災害時の避難場所となる公共施設に蓄電池などの非常用電源を設置し、平常時はVPPとして運用しています[3]。停電などの非常時は、蓄電池を防災用電力として活用できるため、地域のレジリエンス(災害に対する強靭さ、回復力)を強化できます。
[3]横浜市「バーチャルパワープラント(VPP:仮想発電所)構築事業」
東北電力における取り組み事例
東北電力は地域社会とのつながりをスローガンに掲げ、自身がアグリゲーターとなってVPP事業を行っています[4]。一般家庭や企業もVPP事業に参加でき、取り組み状況に応じて報酬や電気料金の値引きを受けられます。
また仙台市や郡山市、新潟市などの自治体と連携して、VPP技術の実証実験を行っており、VPP事業に積極的に取り組む電力会社の一つです[4]。
【まとめ】VPP(バーチャルパワープラント)は企業にとってもメリットが大きい取り組み
VPP(バーチャルパワープラント)は、一般家庭や企業に散らばった小規模分散型電源を遠隔操作で束ね、仮想の発電所として統合制御する新しい電力システムです。VPP事業は、電力会社や地方自治体などが行っており、入札に応じることで一般企業や施設も参加できます。
VPPに参加すれば、電気料金の値引きや既存のエネルギーリソースの有効活用、社会的価値の創造など、さまざまなメリットを得ることが可能です。VPPへの参加に関心のある企業の担当者様は、契約している電力会社に問い合わせてみましょう。