コーポレートPPAとは?メリットや注意点を詳しく紹介
コーポレートPPAとは、需要家が発電事業者と直接契約※し、長期にわたって再生可能エネルギーの供給を受ける仕組みです。再生可能エネルギーを安定して調達できる手段として、脱炭素経営に注力する企業を中心に大きな注目を集めています。
また、コーポレートPPAは環境問題解決の一助となるだけでなく、再生可能エネルギーを購入する企業にとってもメリットがある仕組みです。
本記事では、コーポレートPPAの仕組みや注目されている背景、導入するメリットやデメリットを詳しく解説します。
※ 現在は発電事業者が送配電ネットワークを介して電力を需要家に直接販売することが認められていないため、小売電気事業者を通した契約になります。
>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン
目次
コーポレートPPAとは?
コーポレートPPA(Corporate PPA)とは、通常の電力購入契約(Power Purchase Agreement : PPA)とは異なり、企業や自治体などの法人が、発電事業者から再生可能エネルギーを直接購入する仕組みです。契約期間は長期の契約となり、期間の目安は、通常10~20年となります。コーポレートPPAを締結した場合、再生可能エネルギーの長期安定調達が可能です。[1]
[1]自然エネルギー財団「コーポレートPPA実践ガイドブック」
コーポレートPPAが注目されている背景
コーポレートPPAは世界的に注目を集めている電力調達方法です。2022年に世界各国で新しく締結されたコーポレートPPAの規模は、約36.7GWにものぼります。
また2021年と比べて、コーポレートPPAの市場規模は18%以上拡大しており、2008年から2022年までに累計148GWの再生可能エネルギーがコーポレートPPAを通じて購入されました。
コーポレートPPAを締結している企業の約8割はアメリカ企業ですが、昨今、コーポレートPPAのメリットが認知拡大した結果、ヨーロッパやアジア・太平洋地域の企業からも注目が集まっています。[1]
コーポレートPPAがこれほど注目を集める理由は3つあります。
- 気候変動リスクを懸念し、温室効果ガスを減らす取り組みへの関心が高まっている
- 再生可能エネルギーの比率を増やすことで、国内のエネルギーの自給自足を推進できる
- 再生可能エネルギーを安定的に調達し、国際的なイニシアティブのRE100やCDP、使用電力を再生可能エネルギーで100%賄うRE100や、パリ協定の実現に貢献するSBTに準拠する有力な手段となる
パリ協定を一つのきっかけとして、温室効果ガスの削減を目指す取り組みが国際的に広がりました。コーポレートPPAは、再生可能エネルギーを長期にわたって安定的に調達し、化石燃料への依存を脱却する有力な手段の一つです。
コーポレートPPAは、脱炭素経営に力を入れる企業にとって、大きなビジネスチャンスにもなり得ます。例えば、エネルギーの自給自足に取り組み、持続可能な企業経営を推し進めることができます。
また、日本では、コーポレートPPAの一環として、建物の屋根や空きスペースなどを利用したオンサイトPPAが普及しつつあります。
オンサイトPPAとは?
オンサイトPPAとは、コーポレートPPAの契約方式の一つで、需要家の敷地内に発電事業者が発電設備を設置し、構内線または自営線で接続して供給する仕組みを指します。
オンサイトPPAは、企業が発電設備の設置場所(建物の屋上など)を貸し出すだけで実行できます。また、通常の自家発電・自家消費と違い、一般的には発電事業者が発電設備の建設・運転・保守に責任を持つため、企業にとっては初期投資が不要で、建設・運転・保守の手間を省くことができます。ただ、契約期間を通じて一定の価格で電力を発電事業者から購入する義務が生じます。[1]
オフサイトPPAとは?
コーポレートPPAには、オフサイトPPAと呼ばれる契約方式もあります。オフサイトPPAとは、『事業拠点から離れた場所にある発電設備から送配電ネットワークを経由して電力の供給を受ける』仕組みです。[1]
オンサイトPPAと違って、企業は発電設備の設置場所を提供する必要がありませんが、発電事業者に対して送配電ネットワークの使用料(託送料金)を支払う必要があります。そのため、オフサイトPPAは需要家にとってコストが割高になりやすいのが特徴です。
オンサイトPPAやオフサイトPPAには、それぞれメリット・デメリットがあります。詳しく知りたい方は、【オンサイトPPAの特徴やオフサイトPPAとの違いをわかりやすく解説】【オフサイトPPAとは?仕組みやメリット・デメリットを紹介】をご覧ください。
コーポレートPPAを利用するメリット
企業がコーポレートPPAを利用するメリットは4つあります。
- 温室効果ガスの発生を抑制できる
- 長期的なコストを確定(電気料金の安定化)できる
- 初期費用・メンテナンス費用を負担せずに太陽光発電設備を導入できる
- 企業のブランド力を向上できる
次章でコーポレートPPAのメリットを説明します。
温室効果ガスの発生を抑制できる
1つ目のメリットは、温室効果ガスの発生を抑制できる点です。再生可能エネルギーの調達量を増やし、化石燃料に由来する電力調達量を減少させることで、温室効果ガスの削減につながります。
特にコーポレートPPAは、一般的には開始するにあたり新しく発電設備を設置するため、既存の火力発電所の稼働を減らすことができ、大きな効果が期待できます。
長期的なコストを確定できる
2つ目のメリットは、長期的な電力コストを確定できる点です。通常、再生可能エネルギーの購入価格は、その時々の市場価値によって変動します。プラン内容にはよりますが、一般的にコーポレートPPAは、契約を締結した時点で再生可能エネルギーの価格が固定されるため、電気料金の安定化につながります。
将来、再生可能エネルギーの価格変動が起きたとしても、合意した価格に基づいて、安定的に再生可能エネルギーの電力を調達することが可能です。
初期費用・メンテナンス費用を負担せずに太陽光発電設備を導入できる
3つ目のメリットは、太陽光発電設備の導入に当たって、企業が初期費用やメンテナンス費用を負担する必要がないという点です。このメリットは、コーポレートPPAの中でも、企業が発電設備の設置場所を貸し出すオンサイトPPAに当てはまります。
太陽光発電設備を導入する方法は、自己所有・オンサイトPPA・リースの3つに分類できます。[2]
太陽光発電設備の導入方法 | 特徴 |
自己所有 | 自社が所有する太陽光発電設備を導入し、電力を調達 |
オンサイトPPA | PPA事業者が所有する太陽光発電設備を導入し、電気料金を支払うことで電力を調達 |
リース | リース事業者からリースした太陽光発電設備を導入し、リース料金を支払うことで電力を調達 |
3つの導入形態の中でも、オンサイトPPAは太陽光発電設備の導入に当たって初期投資が必要なく、ランニングコストも電力を使用した分の電気料金しかかかりません。
リース契約を結ぶ場合も、初期投資ゼロで太陽光発電設備を導入できますが、契約内容によっては設備の維持管理を需要家側で行う場合があります。また太陽光発電をしていない期間も、リース料金を支払い続けなければなりません。
初期費用・メンテナンス費用を負担せずに太陽光発電設備を導入したい場合は、オンサイトPPAの利用を検討しましょう。
[2] 環境省「再エネ調達のための太陽光発電設備導入について」
企業のブランド力を向上できる
4つ目のメリットは、企業のブランド力の向上につながるという点です。
先述したように、再生可能エネルギーを長期にわたって購入するコーポレートPPAは、国際イニシアティブのRE100(使用電力を100%再生可能エネルギーに置き換えること)や、日本独自の再エネ100宣言 RE Action(日本版のRE100)を実現する有力な手段です。
また、環境問題への取り組みは企業の競争力を高める重要な要素です。コーポレートPPAを通じて環境問題への取り組みを対外的にアピールすることで、ESG投資家からの注目を集め、企業価値を高めることができます。取引先企業がRE100の実現を目指している場合は、自社も追随して取り組みを進めることで、取引機会を喪失するリスクがなくなります。
コーポレートPPA のデメリット
一方、コーポレートPPAにはデメリットも4つあります。
- 天候によって発電量が変動しやすい
- 契約期間が長い
- 将来的に電力の環境価値や市場価格が下落するリスクがある
- 太陽光発電設備を設置できないケースがある
天候によって発電量が変動しやすい
再生可能エネルギーの中には、天候によって発電量が変動しやすいものがあります。例えば、日照条件の影響を受けやすい太陽光発電や、風の状況に左右されやすい風力発電などが変動要素のひとつと言えます。
複数の発電方法を組み合わせるエネルギーミックスを実現するなど、発電量を安定させる仕組みづくりが必要です。
契約期間が長い
コーポレートPPAは契約期間が長いため、契約期間の途中で方針を転換したり、再生可能エネルギーの利用をやめたりすることはできません。長い契約期間において、企業と発電事業者の間で債務不履行や契約不履行などの信用リスクが発生する恐れもあります。
コーポレートPPAを利用する場合は、10~20年にわたって信頼関係を築くことができるような発電事業者を選ぶことが大切です。コーポレートPPAのリスクにも目を向けつつ、再エネ電力調達のあり方を見直しましょう。
将来的に電力の環境価値や市場価格が下落するリスクがある
コーポレートPPAのメリットの項目で、再エネ電力の市場価格が低い時期に契約を締結すると、契約時の価格のまま電力を調達できると説明しました。
逆にコーポレートPPAを結んだ時点から、再エネ電力の市場価格が下落した場合、本来であれば電力を安く調達できたにもかかわらず、コスト削減の機会を失うことになります。コーポレートPPAは長期にわたって契約が固定されるため、再エネ電力市場の価格変動の影響を受け、損失が発生するケースもあることを知っておきましょう。
太陽光発電設備を設置できないケースがある
またオンサイトPPAの場合、敷地内に太陽光発電設備を設置できず、そもそも契約を締結できない可能性もあります。例えば、以下のようなケースです。
- 屋根の老朽化が進んでおり、太陽光発電設備の設置場所に適していない
- 敷地面積が狭く、太陽光発電設備を設置できる数が少ない
- 日当たりが悪く、年間を通して十分な発電量を確保できない
- 土地の条件が悪く、塩害や強風によって太陽光発電設備が損傷するリスクが大きい
ただし、こうした条件は敷地内に発電設備を設置するオンサイトPPAにのみ当てはまります。発電設備の設置場所を提供する必要のないオフサイトPPAであれば、上記のような条件に当てはまる企業でも契約を結ぶことが可能です。
まとめ
コーポレートPPAは、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを長期的に購入する契約方法です。通常、契約期間は10~20年に及び、発電事業者から再エネ電力を直接調達することができます。
コーポレートPPAは、再生可能エネルギーを安定的に調達し、国際イニシアティブのRE100や、日本の再エネ100宣言 RE Actionを実現する有力な手段です。企業にとってもメリットが大きく、企業価値やブランドイメージの向上が期待できます。