脱炭素とカーボンニュートラルの違いや取り組み事例について紹介
2024.05.24
2024.05.24
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昨今の気候変動問題への懸念から、脱炭素やカーボンニュートラルといったキーワードを耳にする機会が増えました。2020年10月には、政府が2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを宣言するなど、社会全体で関心が高まっています[1]

脱炭素やカーボンニュートラルは、どちらもCO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガス排出削減を目指す取り組みですが、厳密には意味が異なります。本記事では、脱炭素とカーボンニュートラルの違いや、脱炭素社会を目指す取り組み事例、脱炭素の実現に向けて企業ができることを解説します。

[1]環境省「カーボンニュートラルとは」

>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン

脱炭素とは?

脱炭素とは、CO2(二酸化炭素)をはじめとする温室効果ガスの排出削減を目的としたさまざまな取り組みのことです。例えば、以下のような取り組みが脱炭素の一例です。

  • 石油や石炭など、大気中にCO2を放出する化石燃料の使用を減らす
  • CO2を排出しない再生可能エネルギーなどを利用する
  • 燃料や化学製品に含まれるCO2を回収し、資源として再利用する(カーボンリサイクル)
  • CO2の排出削減量に価格を設定し、企業の排出削減に向けた取り組みを促す(カーボンプライシング)

CO2は地球温暖化などの気候変動を引き起こす原因の一つとされています。脱炭素の狙いは、CO2の排出量をできるだけ削減し、将来の世代のために持続可能な社会を実現することです。この持続可能な社会のことを脱炭素社会と言います。

脱炭素とカーボンニュートラルの違い

脱炭素とよく似た言葉にカーボンニュートラルという言葉があります。カーボンニュートラルという言葉は、2020年10月に政府が2050年カーボンニュートラル宣言を行ったことから大きな注目を集めました。

カーボンニュートラルとは、環境省によると『温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする』取り組みです[1]。全体としてゼロにするとは、CO2の排出量から森林資源による吸収量を差し引いたときに、その合計が実質的にゼロになるようにすることを意味します。

つまり、カーボンニュートラルは脱炭素に向けた取り組みの一部です。ただし、環境省のホームページでは、カーボンニュートラルの意味で脱炭素という言葉が使われている場合も見られます。

日本は年間で12億トンを超える温室効果ガスを排出しているといわれています[2]
温室効果ガスの排出を完全にゼロにする取り組みは、現在の産業構造や経済社会において現実的ではありません。そのため、政府は温室効果ガスの排出を実質的にゼロにするカーボンニュートラルを目指し、需要創出に力を入れています。

[2]環境省「国の取組」

脱炭素が求められている背景

資源エネルギー庁によると、2021年11月の時点で世界154カ国1地域がカーボンニュートラルの実現を表明しており、脱炭素に向けた国際的な動きが活発化しています[3]。

脱炭素が求められる背景には、地球温暖化をはじめとした気候変動問題があります。環境省によると、世界の平均気温は2020年の時点で、産業革命が始まる以前(1850~1900年)から約1.1℃上昇しました[1]。その原因の一つと考えられているのが、CO2をはじめとした温室効果ガスです。

このまま地球温暖化が進むと、豪雨や猛暑といった気象災害の増加や、水資源や生態系の破壊につながる恐れがあります。脱炭素は、こうした地球温暖化の進行に歯止めを掛け、持続可能な経済社会をつくる上で欠かせない取り組みの一つです。

[3]経済産業省 資源エネルギー庁「令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)」

脱炭素社会を目指すための取り組み事例

脱炭素社会を目指すための取り組み事例

脱炭素社会を目指すための取り組みとして、再生可能エネルギーの活用や、太陽光発電の導入、水素エネルギーの活用などの事例が挙げられます。

再生可能エネルギーの活用

1つ目の取り組みは、再生可能エネルギーの活用です。

CO2の排出量を減らすには、太陽光や水力、風力、地熱、バイオマスなど、化石燃料を使用しない再生可能エネルギーの利用を増やす必要があります。

2023年には、アラブ首長国連邦(UAE)で開催された第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)において、2030年までに再エネ電力の発電容量を世界全体で3倍にするという目標が掲げられました[4]

[4]経済産業省 資源エネルギー庁「日本の多様な再エネ拡大策で、世界の「3倍」目標にも貢献」

太陽光発電の導入

2つ目の取り組みは、太陽光発電設備の導入です。

太陽光は、日本で最も普及している再生可能エネルギーです[4]。近年は一般家庭や工場、倉庫の屋根など、これまで利用されてこなかった場所に太陽光発電設備を設置し、再エネ電力の発電容量を増やす取り組みが行われてきました。

また政府は、日本での再エネ電力の普及に向けて、2012年にFIT制度(固定価格買取制度)を創設したり、住宅ローン減税で省エネ基準適合を必須要件化(2024年1月以降)したりしている他、省エネリフォーム税制も導入したりと、さまざまな補助事業を行っています。[5][6]

[5]国土交通省住宅局「住宅ローン減税省エネ要件化等についての説明会資料」
[6]国土交通省「令和4年省エネリフォーム税制(固定資産税)」

水素エネルギーの活用

3つ目の取り組みは、水素エネルギーの普及拡大です。

水素エネルギーは、水素と酸素の反応を利用したクリーンエネルギーで、発電時にCO2を排出しません。そのため、環境省は脱炭素に向けた水素サプライチェーン・プラットフォームを設立するなど、早くから水素エネルギーを推進してきました。 また水素エネルギーは、貯蔵が可能という性質を持っているため、災害時の活用も期待されています。

脱炭素を実現するために企業ができること

脱炭素を実現するために企業ができること

脱炭素を実現するため、企業にとってできることは2つあります。

  • 再生可能エネルギーを供給している電力会社と契約する
  • 省エネを呼びかける

再生可能エネルギーを供給している電力会社と契約する

まずは電力会社を見直し、太陽光や水力、風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーを供給している電力会社に切り替えましょう。電力会社から再エネ電力を購入することで、省エネ設備や発電設備を持たない企業でも、間接的に脱炭素の実現に貢献できる可能性があります。

また、電力会社によっては太陽光発電設備を無償で設置し、再エネ電力の供給を受けられるPPA(Power Purchase Agreement)など、再エネ電力を手軽に調達できる仕組みも登場しています。太陽光発電設備を設置するスペースがない場合は、遠隔地(オフサイト)で発電された再エネ電力を購入するオフサイトPPAなどの仕組みもあります。

省エネを呼びかける

次に自社の従業員に対して、省エネや節電を呼びかけましょう。

照明や空調設備の電力使用を見直すだけでも、大きな節電効果が期待できます。例えば、一般的なオフィスビルの場合、電力消費のうち空調設備が約48%、照明やOA機器(パソコン、コピー機など)が約40%を占めています[7]

身近にある空調・照明・OA機器などの節電対策によって、エネルギー消費を効果的に減らし、脱炭素に貢献することが可能です。

[7]経済産業省 資源エネルギー庁「節電アクション」

【まとめ】脱炭素社会の実現のため、再生可能エネルギーを調達しよう

脱炭素とは、地球温暖化の原因の一つである温室効果ガス、特にCO2の排出量を減らし、持続可能な経済社会をつくる取り組みです。2020年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」で話題となったカーボンニュートラルは、脱炭素に向けた取り組みの一部です。カーボンニュートラルはCO2の排出量と吸収量を均衡させ、その合計を実質的にゼロにする取り組みのことで、環境省などが中心となって推進しています。

脱炭素社会の実現のため、企業にもできることがいくつもあります。再生可能エネルギーを供給している電力会社との契約や、省エネ・節電の実施を通じて、CO2の排出削減に取り組みましょう。

>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン

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