再エネ賦課金とその影響について ~法人顧客向けの徹底解説~

2024.09.27
2024.09.27
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再生可能エネルギー(再エネ)に対する関心が高まる中、再エネ賦課金は企業にとっても重要な課題となっています。本コラムでは、再エネ賦課金の仕組みや影響、そして企業がどのように対応すべきかについて、FIT制度(固定価格買取制度)およびFIP制度(固定価格差補助金制度)を含めて詳しく解説します。さらに、再エネ賦課金の軽減策としてオンサイトPPAの活用についても紹介します。

再エネ賦課金とは?

再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの普及を促進するために設けられた費用負担の仕組みです。これは、電力会社が再エネ電力を一定価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT:Feed-in Tariff)」や「固定価格差補助金制度(FIP:Feed-in Premium)」によって発生するコストを、電気利用者全体で分担するための賦課金です。

※再エネ賦課金の正式名称は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」です。再エネ賦課金は、この正式名称を略した、より一般的な呼び方として広く使われています。 この賦課金は毎月の電気料金に上乗せされ、電力会社等が再エネ電力を買い取る費用の一部として使われます。法人向けの電力契約でも、再エネ賦課金は重要な費用項目の一つとなっています。

再エネ賦課金の計算方法とその影響

再エネ賦課金は、使用電力量に基づいて計算されます。具体的には、1kWhあたりの賦課金単価に使用電力量を掛け合わせた金額が再エネ賦課金として請求されます。

例えば、賦課金単価が2.98円/kWhで、月間使用電力量が10,000kWhの場合、再エネ賦課金は以下のように計算されます:

再エネ賦課金 = 2.98円/kWh × 10,000kWh = 29,800円 このように、使用電力量が多い法人ほど再エネ賦課金の影響が大きくなります。再エネ賦課金の単価は毎年見直されるため、企業のエネルギーコストは予測しづらい側面を持つことになります。

再エネ賦課金単価の決定方法

再エネ賦課金単価は、毎年政府によって見直され、決定されます。その決定方法には以下のようなプロセスがあります。

必要コストの算定

まず、再生可能エネルギーの買取にかかる総コストが算定されます。これは、FIT制度やFIP制度に基づく再エネ発電量とその買取価格、補助金の額などが基礎となります。

電力需要の予測

次に、年間の電力需要が予測されます。この予測は、過去のデータや経済成長率、季節的な変動などを考慮して行われます。

賦課金単価の計算

必要コストと電力需要の予測を基に、賦課金単価が計算されます。具体的には、必要コストを電力需要で割ることで、1kWhあたりの賦課金単価が算出されます。

公聴会と意見募集

算出された賦課金単価は、公聴会や意見募集を通じて一般からのフィードバックを受けます。これにより、透明性と公正性が確保されます。

政府の最終決定

最終的に、政府が賦課金単価を公式に決定し、公表します。これに基づいて、翌年度の再エネ賦課金が設定されます。

FIT制度とFIP制度の概要

FIT制度(固定価格買取制度)

FIT制度とは、再生可能エネルギーによる発電を促進するために、電力会社が一定期間、固定価格で電力を買い取る制度です。これにより、再エネ事業者は安定した収入を確保でき、新たな設備投資や事業拡大が可能となります。

FIP制度(固定価格差補助金制度)

FIP制度は、再エネ電力の市場価格と一定の基準価格との差額を補助金として支給する制度です。これにより、再エネ電力は市場価格で取引されるが、基準価格を下回った場合はその差額が補填されます。FIP制度は、再エネ事業者に市場の価格変動リスクを負わせることで、市場競争力を高める狙いがあります。

※参考: FIP制度とは?FITとの違いやメリット・デメリットを徹底紹介

再エネ賦課金の背景と目的

再エネ賦課金の背景には、再生可能エネルギーの普及を促進するという政府の政策目標があります。特に、地球温暖化対策やエネルギー自給率向上の観点から、再エネの導入は重要な課題とされています。

地球温暖化対策

再生可能エネルギーの利用は、化石燃料の使用を減少させ、温室効果ガスの排出を削減することに寄与します。気候変動への対応は、国際社会全体の課題であり、日本もその一翼を担うために再エネの普及を推進しています。

エネルギー自給率の向上

日本は、エネルギー資源の多くを海外に依存しており、エネルギー自給率の向上は国家安全保障の観点からも重要です。再生可能エネルギーの利用拡大により、国内でのエネルギー自給率を高めることが期待されます。

経済成長と雇用創出

再生可能エネルギー産業は、新たな経済成長のエンジンとして位置づけられており、関連する雇用創出や地域活性化にもつながります。再エネ関連の技術開発や設備投資は、経済全体にプラスの影響を与えることが期待されています。

法人が再エネ賦課金に対応するためのポイント

再エネ賦課金の負担を軽減するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

エネルギー効率の向上

エネルギー効率を高めることで、使用電力量を削減し、再エネ賦課金の負担を軽減することができます。省エネ設備の導入や運用の最適化を検討しましょう。

再エネ電力の導入

自社で再生可能エネルギーを導入することで、再エネ賦課金の一部を相殺することが可能です。例えば、自社の屋根に太陽光パネルを設置するなどの手段があります。

電力契約の見直し

電力契約の見直しや電力会社の選択を通じて、再エネ賦課金を含む電力コスト全体を削減することができます。複数の電力会社のプランを比較検討しましょう。

エネルギーマネジメントシステムの導入

エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入することで、エネルギー使用状況をリアルタイムで把握し、効率的なエネルギー運用が可能となります。これにより、無駄なエネルギー消費を削減できます。

オンサイトPPAの活用

オンサイトPPAとは?

オンサイトPPA(Power Purchase Agreement)は、企業が自社の敷地内に再生可能エネルギー発電設備を設置し、その発電量を直接購入する契約です。発電設備は第三者が所有・運営するため、企業は初期投資を行わずに再エネ電力を利用することができます。

※参考: オンサイトPPAの仕組みやオフサイトPPAとの違いをわかりやすく解説

オンサイトPPAのメリット

  • コスト削減:再エネ電力を直接利用することで、電力料金の一部を削減でき、再エネ賦課金の負担も軽減されます。再エネ賦課金は、電力会社から購入する電力量に対して課されるため、自社で発電した再エネ電力を利用することで、賦課金の対象となる電力量を減らすことができます。
  • 初期投資不要:発電設備の設置や運営は第三者が行うため、企業は初期投資なしで再エネ電力を利用できます。
  • 安定供給:オンサイトPPAにより、長期的に安定した価格で電力を供給されるため、エネルギーコストの予測が容易になります。
  • 環境貢献:再生可能エネルギーの利用により、企業の環境負荷を低減し、企業価値の向上にも寄与します。

オンサイトPPAの導入プロセス

  1. パートナー選定:信頼できる再エネ事業者を選定し、オンサイトPPAの契約を締結します。
  2. 設備設置:再エネ事業者が企業の敷地内に発電設備を設置し、運営を開始します。
  3. 電力供給開始:再エネ発電設備から供給される電力を企業が利用します。使用量に応じて電力料金を支払います。

まとめ

再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの普及を促進するための重要な仕組みです。FIT制度およびFIP制度を通じて、再エネ事業者に安定した収入を確保し、市場競争力を高めることが目指されています。また、賦課金単価の決定方法も透明性を持って行われており、必要コストや電力需要の予測に基づいて公正に設定されています。 法人にとっては、再エネ賦課金の負担を軽減するために、エネルギー効率の向上や再エネ電力の導入、電力契約の見直しなどが重要です。特にオンサイトPPAの活用は、初期投資なしで再エネ電力を利用できるため、再エネ賦課金の軽減策として有効です。オンサイトPPAを通じて自社で発電した再エネ電力を利用することで、賦課金の対象となる電力量を減らし、結果として再エネ賦課金の負担を軽減することができます。適切な対策を講じることで、再エネ賦課金の影響を最小限に抑えつつ、持続可能なエネルギー利用を推進していきましょう。

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