CO2排出係数とは？電気事業者の算定方法と企業が取るべき対策を徹底解説

地球温暖化対策が急務となる現代において、企業や組織が自らの温室効果ガス（GHG）排出量を正確に把握し、削減に向けた具体的なアクションを取ることが求められています。その基盤となるのが「CO2排出係数」です。特に電気事業者が算定するCO2排出係数は、企業の環境戦略に直結する重要な指標です。本コラムでは、CO2排出係数の基本概念から、電気事業者による算定の流れ、関連する法制度との関係、さらに企業が電力購入時にCO2排出量を抑えるための具体的なポイントについて詳しく解説します。

>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン

CO2排出係数とは？

CO2排出係数とは、特定の活動やプロセスに伴って排出される二酸化炭素（CO2）の量を定量的に示す指標です。具体的には、燃料の消費量や電力の使用量に基づいて計算され、単位あたりのCO2排出量（例：kg-CO2/kWh）として表されます。この係数は、企業や組織が自らの活動による温室効果ガスの排出量を算出し、管理するための基礎データとなります。

CO2排出係数の重要性

CO2排出係数を正確に理解し、適用することで、企業は以下のようなメリットを享受できます。

• 排出量の正確な把握：自社の活動によるCO2排出量を正確に算出できる。
• 削減目標の設定：現状の排出量を基に、具体的な削減目標を設定・達成しやすくなる。
• 持続可能な経営の推進：環境負荷の低減を通じて、持続可能な経営を実現。

電気事業者のCO2排出係数算定の流れ

電気事業者がCO2排出係数を算定するプロセスは、複雑かつ精緻です。以下にその主要なステップを詳述します。

発電プロセスと燃料の種類

電気事業者は、火力発電、水力発電、原子力発電、再生可能エネルギー発電（太陽光、風力、地熱など）など、さまざまな発電方式を採用しています。各発電方式は使用する燃料やエネルギー源によってCO2排出量が大きく異なります。以下に代表的な発電方式とそのCO2排出係数を示します。

発電方式	燃料種類	CO2排出係数（kg-CO2/kWh）
石炭火力発電	石炭	約0.9
天然ガス火力発電	天然ガス	約0.4
石油火力発電	石油	約0.7
原子力発電	ウラン	0.0
太陽光発電	太陽エネルギー	0.0
風力発電	風エネルギー	0.0
地熱発電	地熱エネルギー	0.0

データ収集と計算方法

電気事業者は、発電所ごとに使用した燃料の種類と消費量を正確に記録・管理します。これらのデータを基に、各燃料のCO2排出係数を適用して総排出量を算出します。計算式の一例は以下の通りです。

[{総CO2排出量（kg）} = {使用燃料量（kg）} ×{各燃料のCO2排出係数（kg-CO2/kg燃料）}]

例えば、天然ガスを1000 kg使用した場合のCO2排出量は、

[1000 {kg} × 0.4{kg-CO2/kWh} =  400 {kg-CO2}] となります。

排出係数の認証と報告

算出されたCO2排出量は、国際的な基準や国内の法制度に基づき認証されます。日本では、環境省が定めるガイドラインに従って排出係数が設定されており、企業はこれに基づいて自社の排出量を報告します。正確なデータ管理と透明性の確保が求められ、第三者機関による検証も行われることがあります。 また、デジタルトランスフォーメーション（DX）や生成AIの導入により、リアルタイムでの排出量管理が強化されており、電気事業者は効率的なデータ管理システムを導入しています。これにより、データの正確性と迅速な報告が可能となっています。

温対法と省エネ法の関係

温室効果ガス排出量の算定と削減には、主に「地球温室効果ガス排出削減法（温対法）」と「エネルギーの使用の合理化推進法（省エネ法）」が関与しています。

▶下記の記事も併せて参考にご覧ください。
地球温暖化対策の推進法と企業の取り組み：法人顧客へ提案する持続可能な未来

再生可温室効果ガス排出削減法の概要能エネルギーの導入

温対法は、日本における温室効果ガスの排出削減を目的とした法律です。この法律により、大規模な事業者は自身のGHG排出量を測定・報告し、削減目標を設定する義務を負います。CO2排出係数は、これらの排出量算定に不可欠な要素です。また、COP28での決定文書では、原子力が気候変動対策として明記され、日本も「原子力３倍宣言」に賛同しました。これは、原子力発電の拡大を通じてCO2排出削減を加速させる意図を示しています。

エネルギーの使用の合理化推進法の概要

省エネ法は、エネルギーの有効利用を促進し、エネルギー消費の削減を図るための法律です。この法律に基づき、企業はエネルギー使用状況を把握し、省エネルギー対策を実施する責任があります。AIを活用したエネルギー管理システムの導入により、企業はリアルタイムでエネルギー消費とCO2排出量をモニタリングし、効率的なエネルギー使用を実現しています。

両法制度がCO2排出係数に与える影響

温対法と省エネ法は相互に補完し合い、企業や電気事業者に対してCO2排出量の正確な算定と削減を促進します。温対法による排出量報告の義務化により、CO2排出係数の正確性が求められ、省エネ法によるエネルギー効率の向上が結果としてCO2排出量の削減につながります。さらに、日本政府はアジア地域とのGX（Green Transformation）協力を強化し、グローバルな温室効果ガス排出削減に貢献しています。

需要家が電気を購入する際にCO2排出量を抑えるためのポイント

企業が電力を購入する際、CO2排出量を効果的に抑えるためには以下のポイントに注意する必要があります。

再生可能エネルギーの選択

再生可能エネルギー源から供給される電力を選ぶことで、直接的なCO2排出を削減できます。以下の方法が有効です。

• グリーン電力の購入：再生可能エネルギー由来の電力を提供する電力会社や新電力からグリーン電力を購入します。
• 自家発電設備の導入：太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギー設備を自社施設に導入します。
• PPA（Power Purchase Agreement）の活用※：大規模な再生可能エネルギー発電事業者と直接契約を結び、長期的に再生可能エネルギーを購入する方法です。

▶下記の記事も併せて参考にご覧ください。
※VPP（バーチャルパワープラント）とは？技術概要と注目の背景、各プレイヤーの役割を徹底解説

エネルギー効率の向上

電力使用量を減少させることは、CO2排出量の削減につながります。具体的な対策としては以下が挙げられます。

• 高効率設備の導入：エネルギー効率の高い設備や機器への更新を行います。例えば、高効率なLED照明やインバーター制御の空調設備など。
• エネルギーマネジメントシステム（EMS）の活用：EMSを導入することで、エネルギー消費の監視と管理をリアルタイムで行い、ピーク時の電力使用を避けます。
• 業務プロセスの見直し：業務フローの最適化や不要な機器の使用停止など、電力消費を抑えるための業務プロセスの改善を実施します。

電力会社の選定とプランの比較

電力を購入する際には、CO2排出係数が低い電力会社を選ぶことが重要です。以下の点を比較検討することで、CO2排出量を抑えた電力調達が可能です。

• 電力源の構成：再生可能エネルギーの割合が高い電力会社を選ぶ。
• CO2排出係数の公開状況：各電力会社が公開しているCO2排出係数を確認し、低い係数を持つ会社を選ぶ。
• 環境クレジットやオフセットプログラムの提供：CO2排出量を相殺するためのプログラムを提供している会社を選択する。

また、電力消費が増加する場面（例：データセンターの拡大や半導体工場の新設）では、電力調達の戦略的な見直しが必要です。特に、持続可能なエネルギー供給を確保するためには、長期的な視点での電力契約が重要となります。

未来への展望とまとめ

CO2排出係数は、企業が自社の温室効果ガス排出量を正確に把握し、削減目標を設定するための重要な指標です。炭素排出係数とも呼ばれ、電気事業者が発電時に排出する二酸化炭素の量を、発電量あたりの数値で表したものです。企業は、この排出係数を用いて、自社の電力使用による温室効果ガス排出量を算出し、削減目標を設定することができます。

近年、再生可能エネルギーの普及が進み、太陽光発電や風力発電の導入量が大幅に増加しています。このような状況を背景に、CO2排出係数は企業の環境経営において不可欠な要素となっています。企業は、排出係数の低い電力会社を選択したり、自社で再生可能エネルギーを導入したりすることで、温室効果ガス排出量の削減に貢献することができます。

さらに、デジタル化の進展により、エネルギー管理システムが高度化し、企業はより詳細な排出量データを把握できるようになりました。これにより、企業は排出係数を細かく分析し、効率的な削減策を講じることができるようになっています。

これらのことから、CO2排出係数は、今後も企業の環境経営において重要な役割を果たし続けるでしょう。特に、パリ協定に基づく温室効果ガス削減目標達成に向けた国際的な取り組みが加速する中、CO2排出係数の重要性はますます高まることが予想されます。企業は、CO2排出係数を活用し、自社のサステナビリティ戦略を強化することで、環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に貢献することができます。

▶再生可能エネルギーの導入について、検討されている方はこちらの記事も参考にしてください。
・コーポレートPPAとは？メリットや注意点を詳しく紹介
・オンサイトPPAの仕組みやオフサイトPPAとの違いをわかりやすく解説

>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン