オンサイトPPAの仕組みやオフサイトPPAとの違いをわかりやすく解説
本記事では、オンサイトPPAとオフサイトPPAとの違いや特徴について解説します。
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目次
オンサイトPPAとは?
環境省によると、オンサイトPPAとは需要家の敷地内に第三者である発電事業者が太陽光発電設備を導入し、需要家が発電事業者に消費電力量に応じた電気料金を支払うものと定義されています。[1]
オンサイトPPAが注目を集めているのは、再エネ電源の設置費用やメンテナンス費用を発電事業者が負担し、導入が可能なためです。これにより、需要家は低コストで再エネ電力を長期的に購入できます。
[1]環境省・みずほリサーチ&テクノロジーズ「再エネ調達のための太陽光発電設備導入について」
オンサイトPPA(第三者所有型)と自己所有型との違い
※太陽光発電の形態は、自社が所有する太陽光発電設備を導入する「自己所有型」、第三者である発電事業者が太陽光発電設備を導入する「オンサイトPPA」、リース事業者から太陽光発電設備を借り受ける「リース」の3つに分かれています。[2]
[2]環境省「 再エネ調達のための太陽光発電設備導入について」
オンサイトPPA導入の意義
さらに、事業活動で消費する電力を100%再エネで賄うRE100(Renewable Energy 100%)に加盟する企業にとって、オンサイトPPAは有力な再エネ電力の調達方法の一つとなります。オンサイトPPAは比較的導入が容易なことから、すでに日本国内の企業でも採用例が増えています。[3]
例えば、CO2削減を主な目的として自家消費型の太陽光発電と合わせて蓄電池も導入し、停電時や電力逼迫時でも生産拠点の稼働を維持する対策を行った企業もあります。[3]
RE100に参加するメリットや具体的な取り組み事例について知りたい方は、【RE100とは?参加条件や取り組み事例を紹介】をご覧ください。
オンサイトPPAで電気を利用するまでの流れ
オンサイトPPAでは、敷地内に設置した再エネ電源を利用して、以下の流れで電力供給を受けることが可能です[1]。
- 需要家と発電事業者が電力購入契約(PPA契約)を締結する
- 需要家が発電事業者に屋根等敷地を貸し出す
- 発電事業者が太陽光発電設備などの再エネ電源を設置し、メンテナンス・管理を請け負う
- 発電設備と近接する需要場所を自営線・構内線で結ぶ
- 需要家は発電した電気を利用し、不足した場合は電力会社から購入し、余剰電力が発生した場合は発電事業者が売却できる
- 消費電力量に応じた電気料金を発電事業者に支払う
オンサイトPPAとオフサイトPPAの違い
オンサイトPPAと、オフサイトPPAは、いずれも再エネ電力を調達する「コーポレートPPA」の一種です。どちらも再エネ電源の設置費用やメンテナンス費用は発電事業者が負担するため、需要家負担はないのが一般的です。
東京都が都有施設のゼロエミッション化(2050年CO2排出量実質ゼロ)を目的として行っている導入事業のように、オンサイトPPAとオフサイトPPAを併用する需要家や自治体も存在しています。[4]
[4]国立研究開発法人 国立環境研究所「 国内初!自治体の土地を活用したオンオフ併用PPA 都、東京ガスを選定」
しかし、オンサイトPPAとオフサイトPPAには、設置場所・供給方法・発電規模の3点で違いがあります。
設置場所の違い
オンサイトPPAの場合、再エネ電源はビルや工場の屋上など、敷地内の余剰スペースを活用して設置します。一方、オフサイトPPAの場合は敷地外に再エネ電源が設置されます。オフサイトPPAは自社の敷地内に太陽光発電設備などを設置するスペースがない需要家などに向いている商品です。
供給方法の違い
オンサイトPPAでは、自社の敷地内に再エネ電源を設置し、電力は構内線や自営線等から直接供給されます。一方、オフサイトPPAの場合、再エネ電源が設置されるのは敷地外です。発電した電力は一般の送電線を通じて供給されるため、需要家と発電事業者の間に電気小売事業者が入ることがあるのもオフサイトPPAの特徴の一つです。
発電規模の違い
オンサイトPPAの発電規模は、再エネ電源を設置できる敷地面積に左右されます。発電用に提供可能な敷地面積が小さい場合、発電量も限られるため、多くの再エネ電力を調達できない可能性があります。より多くの再エネ電力を導入したい場合は、敷地面積にかかわらず比較的発電量を確保できるオフサイトPPAを選びましょう。
オフサイトPPAの魅力について、詳しく知りたい方は【オフサイトPPAとは?仕組みやメリット・デメリットを紹介】をご覧ください。
またオンサイトPPAを含むコーポレートPPAについても、【コーポレートPPAとは?メリットや注意点を詳しく紹介】で解説しています。
オンサイトPPAのメリット
オンサイトPPAを利用し、再エネ電力を調達するメリットは4つあります。
- 初期費用がかからない(第三者保有型に限る)
- 設備の維持管理を自社で行う必要が無い(第三者保有型に限る)
- 電気料金を削減できる
- 補助金制度を利用できる
初期費用がかからない
第三者保有のオンサイトPPAの場合、太陽光発電設備などの再エネ電源を設置する費用がかかりません。太陽光発電設備を自社で保有する自己所有型太陽光発電と比べ、初期費用がかからないのがメリットです。
第三者保有(オンサイトPPA)の場合、利用者の導入時負担は、再エネ電源設備を設置する用地のみであり、以後発生する主な費用は電気料金や証書の購入代金となります。[5]
[5]自然エネルギー財団「日本のコーポレートPPA 契約形態、コスト、先進事例」
設備の維持管理を自社で行う必要が無い(第三者保有型に限る)
オンサイトPPAでは、自己所有型の太陽光発電事業と違って、発電設備の建設・運転・保守の責任は発電事業者が負います。そのため、契約期間中は発電設備のメンテナンス・管理を自社で行う必要がなく、労力やコストをかけずに再エネ電源を導入し長期確保することが可能です。
ただし、電力購入契約が終了するまで、発電設備の処分・交換・移転などは自由に行えないという点に注意しましょう。[1]
電気料金を削減できる
再エネ電力というと電気料金が気になるかもしれませんが、近年の太陽光発電パネルのコスト低下に伴い、大口の需要家でも既存の電気料金と同等以下のコストで電力を利用することが可能です。[5]
くわえて、一般的な電気料金は、電力を購入する際の卸電力価格(購入電力料)や、人件費などの経費に加えて、電気を送る際の送配電網の利用料金である「託送料金(送配電コスト)」、再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく「再エネ賦課金(ふかきん)」などの項目が含まれます。
オンサイトPPAの場合、敷地内で発電した電力を、一般の送配電網ではなく自営線・構内線によって供給するため、電気料金に託送料金が含まれません。例えば、2023年度の場合、通常の高圧電力では全国平均で約4円(kWh)、特別高圧の場合は同約2円(kWh)の託送料金がかかりますが、オンサイトPPAならこれらのコストを削減できます。※公益財団法人 自然エネルギー財団の推定値(消費税を含まない)。[6]
オンサイトPPAと違って、敷地外から電気を送るオフサイトPPAでは、託送料金がかかる点に注意が必要です。
またオンサイトPPAは、発電した電力を自家消費のみで対応する場合、再エネ賦課金の対象ではありません。ただし、一般的には再エネ賦課金はかかりませんが、オンサイトPPAでも賦課金徴収の対象となる場合がありますのでご注意ください。
【例】送配電網を利用して発電した電力を使用する場合には賦課金の徴収対象。
このようにオンサイトPPAを導入する場合、託送料金や再エネ賦課金がかからないため、電気料金を削減することが可能です。自然エネルギー財団の試算によると、通常の高圧電力の電気料金単価がkWhあたり24.5円+再エネ賦課金、特別高圧がkWhあたり20円+再エネ賦課金であるところ、オンサイトPPA(太陽光、屋根設置)ならkWhあたり15円~18円に削減可能との結果でした。
※上記のコストは2023年度の推定値(消費税を含まない)。屋根設置型太陽光発電での試算であり、オンサイトPPAの発電設備の規模、地域、設置条件によって発電コストは異なる。[6]
[6]自然エネルギー財団「コーポレートPPA日本の最新動向2024年版」
補助金制度を利用できる
オンサイトPPAは、さまざまな補助金制度の対象です。例えば、自治体が行っている補助金制度には、以下のようなものがあります。(2024年時点)
都道府県 | 補助金制度 |
東京都 | 地産地消型再エネ増強プロジェクト事業 |
神奈川県 | 自家消費型太陽光発電等導入費補助金 |
宮城県 | 第三者所有モデル太陽光発電導入支援事業費補助金 |
こうした補助金制度は、再エネ電力の利用者ではなく、再エネ電源を設置する発電事業者を対象としていますが、うまく活用すると補助金が電気料金に反映され、値下げにつながることが期待できます。
オンサイトPPAのデメリット
一方、オンサイトPPAにはデメリットもあります。
- 契約期間が長い
- 契約終了後はメンテナンス費用が自己負担となる
- 審査を受ける必要がある
契約期間が長い
オンサイトPPAはコーポレートPPAという方式の一種で、契約期間は一般的に10~20年と長くなります。[2]再エネ電力を長期間にわたって調達できるというメリットがある一方で、デメリットもあります。
例えば、契約締結後にオンサイトPPA契約を解除することや、再エネ電源を設置した事業所の移転・閉鎖となった場合、違約金の支払いが必要となる可能性があります。契約期間が長期となる点は、オンサイトPPAだけでなく、オフサイトPPAにも共通するデメリットです。
契約終了後はメンテナンス費用が自己負担となる
オンサイトPPA(第三者保有)の場合、契約期間中の敷地内に設置した再エネ電源のメンテナンス費用は、発電事業者側が負担します。
電力購入契約の終了後に再エネ電源が需要家に譲渡された場合、メンテナンス費用は需要家側が自己負担しなければなりません。加えて、需要家は発電設備の廃棄に責任を負うことになります。そういった負担をなくすため、需要家の中には同じ発電事業者と運転・保守の契約を結び直すケースもあります。[7]
[7]自然エネルギー財団「コーポレートPPA実践ガイドブック(2023年版)」
審査を受ける必要がある
オンサイトPPAでは、敷地内に再エネ電源を設置するため、設置基準を満たしているか事前に審査を受ける必要があります。例えば、「発電量が少ない」「強風など環境条件が悪い」といった条件に当てはまる場合、審査基準を満たすことができず、オンサイトPPAが利用できない可能性もあります。発電事業者によって審査基準が異なるため、まずは再エネ電源が設置可能かどうか相談してみましょう。
【まとめ】オンサイトPPAのメリット・デメリットを比較しよう!
オフサイトPPAと並んで、再エネ電力の調達方法として注目されているのがオンサイトPPA(第三者保有型)です。オンサイトPPAは、自社の敷地内に発電事業者が再エネ電源を設置し、自営線・構内線によって電力が供給され、需要家は消費電力量に応じた電気料金を発電事業者へ支払う仕組みです。再エネ電源を設置する費用や、契約期間中のメンテナンス費用は発電事業者が負担する為、需要家の負担はありません。また基本的に再エネ賦課金や託送料金の徴収対象とならないため、オフサイトPPAより電気料金が安くなる場合もあります。
一方、オンサイトPPAには問題点もあるため、メリット・デメリットの両面から考えることが大切です。敷地面積が狭いケースや、再エネ電力を大規模に調達したい場合は、オフサイトPPAという選択肢も検討しましょう。