カーボンニュートラルとは?重要性や取組みの具体例を紹介
2024.05.24
2024.05.24
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2020年10月に、政府が2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言しました[1]。カーボンニュートラルとは、CO2(二酸化炭素)をはじめとした温室効果ガス排出量の削減と、森林資源による吸収作用の保全・強化を行い、排出量と吸収量と均衡させ、全体として差し引きゼロ(実質的に)にする取組みです。

なぜカーボンニュートラルに注目が集まっているのでしょうか。本記事では、カーボンニュートラルの意味や重要性、実現に向けた取組みの具体例について紹介します。

[1]環境省「カーボンニュートラルとは」

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カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルとは、環境省によると『温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる』取組みです[1]。つまり、CO2をはじめとした温室効果ガスの排出量から、人為的な植林を含む森林資源による吸収量を差し引いたときに、その合計が実質的にゼロになるようにすることをカーボンニュートラルと言います。

2015年にパリ協定が採択され、世界の平均気温上昇を抑えるための長期目標が定められました。しかし、平均気温上昇の一因である温室効果ガスの排出量を完全にゼロにするのは、現在の経済社会や産業構造からいって現実的な施策ではありません。

そのため、パリ協定で「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」が合意され、世界各国がカーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいます[1]

カーボンニュートラルに注目が集まっている理由

資源エネルギー庁によると、2021年11月の時点で世界154カ国1地域がカーボンニュートラルの実現を表明しています[2]。このようにカーボンニュートラルに注目が集まっている理由は、地球温暖化をはじめとした気象災害への対策が、世界各国で喫緊の課題となっているからです。

環境省によると、世界の平均気温は2020年の時点で、産業革命以前(1850~1900年)から約1.1℃も上昇しています[1]。また2023年には、世界の平均気温が1891年以降の観測史上最高を記録し、100年当たり0.76℃のペースで気温が上昇していることが明らかになりました[3]

世界の平均気温がこのまま上昇を続けると、豪雨や猛暑などの自然災害の増加や、水資源・自然生態系の破壊、人々の健康や経済活動への影響などが懸念されます。将来の世代が安心して暮らせる持続可能な経済社会をつくる上で、カーボンニュートラルは欠かせない取組みです。

[2]経済産業省 資源エネルギー庁「令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022)」
[3]国土交通省 気象庁「世界の年平均気温」

カーボンニュートラルを実現するための取組み

カーボンニュートラルを実現するための取組み

カーボンニュートラルの実現のため、国は再生可能エネルギーの導入や植林の推進など、さまざまな取組みを行ってきました。

  • 再生可能エネルギーの導入
  • 植林の推進
  • 省エネルギー対策
  • カーボンオフセットの利用

ここでは、カーボンニュートラルに向けた取組みの具体例を4つ紹介します。

再生可能エネルギーの導入

1つ目の取組みは、太陽光や水力、風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーの導入です。

化石燃料を必要とする火力発電などと異なり、太陽光、水力、風力などの再生可能エネルギーは発電時にCO2を排出しないクリーンなエネルギーです。化石燃料への依存から脱却し、再生可能エネルギーの比率を高めることで、CO2の排出量を削減できます。

植林の推進

2つ目は植林を推進し、森林資源によるCO2の吸収量を増やす取組みです。

前述のとおり、カーボンニュートラルはCO2の排出量と吸収量を均衡させる取組みです。日本の国土の約3分の2を占める森林資源には、光合成を通じて大気中のCO2を吸収する働きがあります[4]。植林の推進や、森林資源の適切な管理により、CO2の吸収量を増やしてカーボンニュートラルに貢献できます。

[4]林野庁「森林×脱炭素チャレンジについて」

省エネルギー対策

3つ目は省エネルギー対策を推進し、化石燃料に由来する電力の使用量を減らす取組みです。

カーボンニュートラルを実現するには、非化石エネルギー(再生可能エネルギー)の導入を拡大するとともに、さまざまな省エネルギー対策を通じて、エネルギー使用を合理化(=徹底的な効率の向上を図ること)する必要があります[5]。現行の省エネ法でも、エネルギー使用量が多い特定事業者を対象とし、エネルギーの使用状況を報告する義務などが課されています[6]

[5]環境省「CO2排出削減に関連する既存の制度について」
[6]経済産業省 資源エネルギー庁「2023年4月施行の「改正省エネ法」、何が変わった?」

カーボンオフセットの利用

4つ目はカーボンオフセットと呼ばれる取組みです。

カーボンオフセットとは、事業活動でどうしても発生するCO2の排出分を、他の場所でのCO2の削減分を購入することで埋め合わせる取組みです。日本では、CO2の排出量・吸収量をクレジットとして国が認定し、企業や自治体が購入できるようにしたJクレジット制度が広く知られています。

企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット

企業がカーボンニュートラルに取り組むメリット

カーボンニュートラルの実現に向けた取組みは、企業にとっても大きなメリットがあります。

  • コストを削減できる
  • 企業の認知度や好感度が高まる
  • 資金調達で有利になる

コストを削減できる

1つ目のメリットは、省エネ対策を通じて、電気料金などのエネルギーコストを節約できるという点です。

例えば、電気使用量が多い機器や設備から、よりエネルギー効率の高いものへ更新すれば、光熱費や燃料費を削減できます。節電・省エネ設備の導入を検討している方は、環境省が行っている導入補助事業(脱炭素化事業)を利用しましょう。

企業の認知度や好感度が高まる

2つ目のメリットは、カーボンニュートラルに向けた取組みをPRし、企業価値を高められるという点です。

カーボンニュートラルは、新たなビジネスチャンスの創出にもつながる取組みです。例えば、SNSやコーポレートサイト、プレスリリース、環境経営報告書などを通じてカーボンニュートラルの取組みをPRすれば、環境問題への関心が高い企業・メディアからの認知度や好感度が高まります。新たに生まれたネットワークを活かし、ビジネスパートナーの発掘も期待できます。

資金調達で有利になる

3つ目のメリットは、近年のESG投資への関心の高まりから、機関投資家による投資を呼び込む効果が期待できるという点です。

ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの視点から、事業の持続可能性が高い企業に投資する手法です。長期的なリスクを重視する機関投資家を中心として、ESG投資の考え方が広く浸透しつつあります。

カーボンニュートラルに向けて取り組むことで、ESG投資を重視する大口の投資家から、新たな資金調達を呼び込むきっかけになります。このようにカーボンニュートラルは、企業にとってもさまざまなメリットがある取組みです。

【まとめ】カーボンニュートラルは企業にとってもメリットが大きい

カーボンニュートラルとは、CO2をはじめとした温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、全体として差し引きゼロにすることです。カーボンニュートラルの実現に向けて、再エネ電力の導入や植林の推進、省エネ対策、カーボンオフセットの活用など、さまざまな取組みが行われています。

カーボンニュートラルは、地球温暖化をはじめとした環境問題の解決につながるだけでなく、企業にとっても大きなメリットがあります。例えば、企業の認知度や好感度の向上や、ESG投資による資金調達などの効果が期待できるため、カーボンニュートラルを通じて、新たなビジネスチャンスを創出することも可能です。

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