FEMSとは?工場のエネルギー管理が経営課題となる理由や導入メリット、活用できる支援制度まで解説
エネルギー価格の高止まりが続く中、工場を運営する企業にとって、エネルギーコストの管理は経営に直結する課題となっています。さらに、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた脱炭素化(GX)の要請や、DX・GXの進展に伴う電力需要増加の見通しなど、工場を取り巻くエネルギー環境は大きく変化しています。
こうした課題への対応策として注目されているのが、FEMS(Factory Energy Management System:工場エネルギーマネジメントシステム)です。
本記事では、FEMSの基本的な仕組みや導入が求められる背景、次世代スマートメーターや蓄電池との連携による活用の広がり、導入時に利用できる支援制度について、公的機関の最新資料に基づき解説します。
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目次
FEMSとは?

FEMSの基本的な仕組み
FEMS(フェムス)とは、工場内の受変電設備や生産設備、空調、照明などのエネルギー使用状況を計測・収集して「見える化」し、データに基づいて設備の運転を最適化するエネルギー管理システムです。
電力の使用量をリアルタイムで監視し、契約電力を超えそうなときに警報を出したり設備を制御したりするデマンド監視や、生産計画と連動した設備の運転スケジュール最適化などを通じて、エネルギーコストの削減と生産性の両立を図ります。
BEMS・HEMSとの違い
エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、対象によって呼び方が異なります。
| 名称 | 対象 | 主な管理対象 |
|---|---|---|
| FEMS | 工場 | 生産設備、受変電設備、空調、照明など |
| BEMS | ビル・商業施設 | 空調、照明、昇降機など |
| HEMS | 一般住宅 | 家電、太陽光発電、蓄電池など |
FEMSの特徴は、生産活動と一体でエネルギーを管理する点にあります。単に使用量を減らすのではなく、生産への影響を考慮しながらエネルギー効率を高めることが求められます。
FEMSの導入が求められる3つの背景

電気料金の高止まりと時限的な支援策
エネルギー価格の高騰を受け、国は電気料金の負担軽減策を実施してきました。高圧契約の工場も対象となり、たとえば電気・ガス価格激変緩和対策事業では1kWhあたり最大1.8円(2023年9月から2024年4月使用分まで)、2024年夏の「酷暑乗り切り緊急支援」では8・9月使用分に1kWhあたり2.0円の値引きが行われ、2026年7~9月も中東情勢を背景として燃料価格高騰対策として電気・ガス料金の支援が予定されています。
ただし、これらはいずれも期間限定の時限措置です。支援の有無に左右されない収益構造をつくるには、FEMSによる恒常的なエネルギーコストの最適化が有効です。
GX(脱炭素化)と「徹底した省エネ」の要請
2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、S+3E(安全性・安定供給・経済効率性・環境適合性)を基本的視点としつつ、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素を同時に実現する観点から、徹底した省エネルギー、非化石エネルギーへの転換、製造業における燃料転換などを進める方針が示されました。
また、GX・DXの進展により、データセンターや半導体工場、工場の脱炭素化・電化といった大規模な電力需要の投資が全国で進んでいます。工場の電化が進むほど電力管理の重要性は増すため、FEMSはその基盤として位置づけられます。
電力需給のひっ迫リスクとレジリエンス強化
2025年度夏季には、全国的な猛暑により、10年に一度の猛暑を想定した需要(猛暑H1想定需要)を上回るエリアも発生しました。需給がひっ迫する時間帯に使用を抑えられる体制は、安定操業のリスク管理としても重要です。また、激甚化する災害による大規模停電への備えとして、エネルギー供給のレジリエンス強化も課題となっており、FEMSは非常時の電源運用を支える役割も担います。
FEMSで何ができるのか

エネルギー使用状況の見える化とデマンド監視
FEMS導入の第一歩は、どの設備が・いつ・どれだけエネルギーを使っているかの見える化です。工場全体の使用量だけでなく、生産ラインや工程ごとの内訳まで把握できれば、無駄の大きい箇所を特定して優先的に対策を打てます。
高圧・特別高圧契約では実量制が適用される場合(特別高圧や500kW以上は協議制の場合が多いです)、過去の最大需要電力(デマンド値)に基づいて契約電力が決まり、その契約電力をもとに基本料金が算定されるため、わずかな時間のピークが年間の電気料金を押し上げることがあります。FEMSでデマンドを常時監視し、ピークカット(最大需要電力の抑制)やピークシフト(使用時間帯の移動)を行えば、基本料金・電力量料金の双方を抑えることができます。
スマートメーターのデータ活用
工場などの高圧部門では、2016年度までにスマートメーターの導入が完了しており、30分ごとの計量データは電力取引や需給管理の基盤としてすでに活用されています。FEMSはこうした計量データと工場内の設備データを組み合わせることで、より精緻な分析を可能にします。
次世代(第二世代)スマートメーターによる高度化
現行スマートメーターの検定有効期間満了に伴う更新に合わせて導入が進む次世代(第二世代)スマートメーターでは、従来の30分値に加えより細かい粒度のデータ活用が検討・整理されており、エネルギーマネジメントの高度化や分散型エネルギーリソース(DER)の導入拡大への対応が期待されています。
設計段階からセキュリティを組み込む「セキュリティ・バイ・デザイン」や「サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワーク」などの考え方も取り入れられており、FEMS側でも通信・制御系のセキュリティ対策が前提となります。
広がるFEMSの活用領域

蓄電池との組み合わせ
近年、系統用蓄電池を中心に接続検討・系統接続の申込みが増加しており、電力市場での運用による収益化も進んでいます。工場に設置した蓄電池をFEMSで制御すれば、電力価格の安い時間帯に充電し高い時間帯に放電する運用や、非常時のバックアップ電源としての活用が可能になります。
マイクログリッド・自営線との連携
再生可能エネルギーを地域で活用するマイクログリッドは、脱炭素化に加え、災害などによる停電時にも電力を確保できる防災性向上の効果が期待されています。工場が地域マイクログリッドの一員となる場合、FEMSは構内の需給バランスを調整する中核システムとなります。
デマンドレスポンス(DR)への対応
需要側リソースの拡大に伴い、電力取引のニーズは多様化が進むと指摘されています。電力需給がひっ迫する時間帯に工場の負荷を抑えるデマンドレスポンス(DR)に参加すれば、エネルギー管理の取り組みを新たな収益や対価につなげることも可能です。FEMSによる自動的な負荷制御の仕組みは、DR参加の実務的な前提となります。
FEMS導入時に活用できる補助金・支援制度

国の電気料金支援が主に低圧・高圧契約を対象とするのに対し、特別高圧で受電する中小企業や工場向けには各都道府県が独自の支援金を設けてきました。
一例として以下のような支援金が実施されてきました(募集が終了しているものや、過去実施されたものも含むため、検討の際には必ず各自治体の最新情報を確認してください)。
| 自治体 | 制度名(例) |
|---|---|
| 千葉県 | 特別高圧電気料金高騰対策事業支援金 |
| 愛知県 | 中小企業特別高圧電力価格高騰対策支援金 |
| 京都府 | LPガス・特別高圧電力利用事業者経営改善支援事業 |
このほか、省エネ設備の更新やエネルギーマネジメントシステムの導入を対象とする国の省エネ補助金も毎年度公募されています。申請期間が限られるため、導入検討の早い段階で最新の公募情報を確認しましょう。
FEMS導入を成功させるポイント

FEMSの導入にあたっては、次の点を押さえることが重要です。
- 現状把握から始める:まずは計量データを活用して使用実態を把握し、削減余地の大きい工程を特定する
- 目的を明確にする:コスト削減か、脱炭素対応か、BCP(事業継続)強化かによって必要な機能や設備規模が変わる
- 拡張性を確認する:太陽光発電や蓄電池、EV充電器などを将来追加しても一元管理できるシステムを選ぶ
- 運用体制を整える:データを分析して改善を回す担当者・パートナーを確保する
【まとめ】FEMSで工場のエネルギー管理を経営戦略に

FEMSは、工場のエネルギー使用を見える化し、コスト削減・脱炭素化・レジリエンス強化を同時に実現するための基盤です。電気料金の支援策が時限的なものにとどまる中、エネルギーコストを自律的にコントロールできる体制づくりの価値は高まっています。
次世代スマートメーターの高度化や蓄電池の普及など、FEMSを取り巻く環境は今後さらに進化していきます。補助金・支援制度も活用しながら、自社の工場に合ったエネルギーマネジメントの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

