CDPとは?企業が取り組むメリットやスコア向上のポイント、最新動向を徹底解説

2026.05.25
2026.07.08
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世界の平均気温は上昇を続けており、気候変動問題への対応は人類共通の喫緊の課題となっています。このような背景から、パリ協定が掲げる「世界の気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃以内に抑える」という目標に向け、企業にも脱炭素経営への移行が強く求められるようになりました。

投資家や顧客などのステークホルダーは、もはや財務情報だけでなく、企業の環境に対する取組やリスク管理の状況を厳しく評価するようになっています。その評価のデファクトスタンダード(事実上の標準)として世界的に確立されているのが「CDP」です。

本記事では、CDPの概要や企業が取り組むメリット、スコア向上のための具体的な戦略、そしてGHGプロトコル改訂をはじめとする最新の動向について、専門的な視点から詳しく解説します。

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CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)とは

CDPの概要と運営体制

CDP(旧称:Carbon Disclosure Project)は、企業や自治体等に対する環境情報開示プラットフォームを運営する国際的な非営利団体です。2000年に英国で設立され、現在は「気候変動」「水セキュリティ」「森林」の3つの領域で、世界最大の環境情報開示プログラムを運営しています。

CDPは、以下の4つの国際機関が共同で運営する「SBTi(Science Based Targets initiative)」の構成機関の一つでもあります。

  • CDP(環境情報開示を運営するNGO)
  • 国連グローバル・コンパクト(UNGC(持続可能な価値観を求めるイニシアティブ)
  • 世界資源研究所(WRI(自然資源の持続可能性を研究するシンクタンク)
  • 世界自然保護基金(WWF(環境保全団体)

2025年には、22,100を超える企業がCDPを通じて環境データを開示しています。これらの情報は、包括的な環境用法を継続的に求めるだけでなく、意思決定を推進するにあたってその情報にますます価値を見出しています。CDPを通じて明らかになったデータは、データに基づく意思決定に不可欠な知見を企業、投資家、政策立案者に提供されています。

情報開示の流れと評価体系

CDPは毎年、世界の主要企業に対して環境課題に関する質問書を送付します。企業はこれに回答することで、自社の温室効果ガス(GHG)排出量や気候変動への戦略、リスクと機会を開示します。

回答内容はCDP独自の採点基準によって評価され、最高位の「Aリスト」から「D-」までの8段階でスコアリングされます。特に「Aリスト」に選定されることは、環境経営におけるグローバルリーダーとしての地位を証明することになり、世界中のステークホルダーから高い信頼を得ることに直結します。Aを獲得した企業のうち一定条件を満たす場合には、Aリスト企業として公表されます。

企業がCDPに取り組む4つの大きなメリット

機関投資家からの評価向上とESG投資の呼び込み

年金基金などの機関投資家は、中長期的なリターンを最大化するために、企業の持続可能性(サステナビリティ)を重視しています。CDPで高いスコアを獲得することは、気候変動リスクを適切に管理し、脱炭素社会への移行をビジネスチャンスに変えられる企業であるという強力なアピールになります。

実際に、CDPの質問書においてSBT認定を受けている企業は「リーダーシップ」の得点を獲得しやすく、投資家からのESG投資を呼び込む上で非常に有利に働きます。

サプライチェーンにおける競争力の強化

近年、Appleやセブン&アイ・グループなどの大手企業は、自社だけでなくサプライヤーに対しても脱炭素化を求める「サプライヤー・エンゲージメント」を強化しています。

CDPの回答を求められるのは、投資家からだけではありません。主要な顧客企業から「CDPサプライチェーンプログラム」を通じて回答を要請されるケースが急増しています。これに対応することは、取引の継続や新規受注における必須条件となりつつあります。

社内イノベーションの促進とコスト削減

CDPへの回答プロセスでは、自社のGHG排出量をScope 1(直接排出)、Scope 2(間接排出)、Scope 3(サプライチェーン排出)の全範囲で把握する必要があります。この「見える化」により、エネルギーの無駄や非効率なプロセスが浮き彫りになります。

野心的な削減目標を掲げることで、既存技術の延長線上にはない画期的なイノベーション(省エネ技術の導入や新素材の開発など)が促進され、結果として中長期的なコスト削減と競争力の向上につながります。

資金調達における優位性(グリーンファイナンス)

環境への取組が評価されることで、資金調達の条件が有利になるケースが増えています。これが「グリーンファイナンス」です。例えば、「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」では、CDPスコアやGHG削減率などの「サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)」の達成状況に応じて、借入金利が優遇される仕組みが導入されています。CDPでの情報開示は、こうした先進的な金融手法を活用するための強力な基盤となります。

CDPスコア向上のための具体的な戦略

SBT(Science Based Targets)の認定取得

SBTは、パリ協定が求める水準(世界の気温上昇を1.5℃以内に抑える)と整合した、科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標のことです。CDPの評価では、科学的根拠に基づく目標設定や気候移行計画が重視されており、SBTi認定を取得していることは「リーダーシップ」得点の獲得にプラス要素となり得ます。SBT(Near-term)の主な基準は以下の通りです。

  • 目標年: 申請時から5年~10年先。
  • 削減水準: Scope 1および2において、毎年4.2%以上の削減(1.5℃水準)。
    • Scope 3の扱い: 全排出量の40%以上をScope 3が占める場合、Scope 3の目標設定も必須。

 RE100の達成に向けた自然エネルギーの調達

事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー(自然エネルギー)で賄うことを目指す「RE100」への取組も、CDPにおいて高く評価されます。電力を単に購入するだけでなく、その「質」が問われるようになっています。ただし、RE100参加そのものがCDPスコア向上を直接保証するわけではないため、再エネ調達の実態や開示内容とあわせて説明する方が適切です。

自然エネルギーの主な調達手法と評価のポイントを以下の表にまとめました。

調達手法特徴評価・メリット
自家発電・オンサイトPPA敷地内に太陽光パネル等を
設置し直接消費。
追加性の観点で評価されやすい調達手法の一つ。
オフサイトPPA遠隔地の発電所から
送電網経由で電力を購入。
長期的な価格固定が可能。
新設の発電設備であれば
高い追加性が認められる。
非化石証書(トラッキング付環境価値を証書として購入。
発電所を特定。
低コストで導入可能。
RE100等の国際基準に適合するためにはトラッキングが必須。
グリーン電力証書自家消費分や系統売電分の
環境価値を証書化。
発電設備を特定して購入可能。バイオマス等の熱価値にも
対応。

GHGプロトコルに基づく正確な排出量算定

CDPの報告は、国際的な算定基準である「GHGプロトコル」に準拠する必要があります。特に以下の3つのScopeを漏れなく正確に算定することが基本です。

  • Scope 1: 自社での燃料燃焼や工業プロセスによる直接排出。
  • Scope 2: 他社から供給された電気や熱の使用に伴う間接排出。
  • Scope 3: 原材料調達、輸送、製品の使用・廃棄など、自社の活動に関連する他社の排出。

知っておくべき最新動向と注意点

環境情報開示のルールは急速に進化しており、昨日の正解が今日の不十分になることも珍しくありません。

GHGプロトコルの大規模改訂(2027年目途)

現在、GHGプロトコルでは主要な基準の改訂作業が進められており、2027年頃に最終化される見通しです。

特にScope 2(電気の使用に伴う排出)においては、以下の「アワリーマッチング」や「デリバラビリティ」の導入が検討されています。

  • アワリーマッチング(Hourly matching): 年単位での相殺ではなく、1時間単位で消費電力と再エネ発電を一致させることを求める考え方。
  • デリバラビリティ(Deliverability): 物理的に電力を供給可能な範囲内(同一市場境界内)での証書調達を求める要件。

これにより、時間整合性(hourly matching)や地域・系統整合性(deliverability など)を重視する方向性が論点となっており、従来の「どこからでも証書を買えば良い」という手法が通用しなくなる可能性があるため、早期の対策検討が必要です。(今後の制度設計次第では再エネ調達戦略の見直しが必要になる可能性があります。)

 SBT Net-Zero基準と長期目標の設定

これまでの短期的なSBT(Near-term SBT)に加え、2050年までに排出量を実質ゼロにする「SBT Net-Zero」基準が策定されました。

この基準では、2050年までにScope 1, 2, 3の全範囲で排出量を90%以上削減し、どうしても削減できない残余排出量(10%未満)については、大気中からの炭素除去によって中和(Neutralization)することが求められます(バリューチェーン全体で深い排出削減を行ったうえで、残余排出に対して中和(neutralization)を行う考え方)。CDPの評価においても、このネットゼロへのコミットメントが重視されるようになっています。

Scope 3算定の義務化とデータ品質の向上

Scope 3の算定は、これまで「任意」とされる項目もありましたが、今後は「義務(Shall)」へと格上げされる議論が進んでいます。

  • カテゴリ5(廃棄物): 廃棄物処理だけでなく、処理場への輸送も算定対象とする検討。
  • カテゴリ6(出張): 出張者の宿泊に伴う排出の算定を義務化する検討。
  • カテゴリ7(通勤): リモートワークに伴う自宅でのエネルギー消費(エアコン等)の算定を義務化する検討。

また、単なる金額ベースの推計(二次データ)ではなく、サプライヤーから直接取得した「一次データ」の活用割合を高めることが、高いスコアを獲得するための鍵となります。

まとめ

CDPへの回答とスコア向上は、単なる環境活動の報告ではなく、企業の「稼ぐ力」と「持続可能性」を世界に示す戦略的な経営課題です。

SBTの認定取得や、PPA等を活用した追加性のある再エネ調達、そしてGHGプロトコルの最新動向を踏まえた正確な排出量算定は、ESG投資の呼び込みだけでなく、サプライチェーンにおける優位性の確保、さらにはグリーンファイナンスを通じた有利な資金調達にも直結します。GHGプロトコルの改訂やネットゼロ基準の厳格化など、ルールは年々高度化していますが、これらを先取りして対応することは、将来のリスクを低減し、新たなビジネスチャンスを創出することに他なりません。

脱炭素経営のグローバルリーダーを目指し、CDPを最大限に活用した企業価値の向上に取り組んでいきましょう。

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