ピークカットで電気代削減と脱炭素を両立!最新の電力需給対策とは

2026.06.23
2026.07.08
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近年、ロシアによるウクライナ侵略に端を発した世界的な燃料価格の高騰や、国内の発電設備の老朽化、さらには再生可能エネルギーの導入拡大に伴う系統制約など、日本の電力事情は大きな転換期を迎えています。特に法人企業にとって、電気料金の上昇は経営を圧迫する深刻な課題であり、いかにして電力コストを抑え、同時に脱炭素化(カーボンニュートラル)を推進するかが問われています。

その解決策として注目されているのが「ピークカット」です。ピークカットは単なる節電とは異なり、電力需要の「山」を削ることで、基本料金の抑制と社会全体の電力安定供給に寄与する手法です。

本記事では、ピークカットの基礎知識から最新の電力需給見通し、実践手法など法人担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

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ピークカットとは?その定義とピークシフトとの違い

ピークカットの基本的な仕組み

ピークカットとは、1日の中で最も電力消費量が多い時間帯(ピーク時)の電力を削減することを指します。法人の電気料金、特に高圧・特別高圧契約においては、過去1年間の「最大需要電力(デマンド値)」によって基本料金が決定される仕組みになっています(実量制の場合)。

そのため、短時間であっても突出した電力使用が発生すると、その後の1年間の基本料金が上昇したまま固定されてしまうリスクがあります。ピークカットはこの「山」を物理的に削ることで、コスト削減を狙うものです。

ピークシフトとの違い

よく混同される概念に「ピークシフト」がありますが、これらは目的が共通していても手法が異なります。

項目対象主な管理対象
内容ピーク時の電力使用そのものを削減する。ピーク時の使用分を、需要の少ない夜間等にずらす。
主な手法設備の停止、自社発電、蓄電池の放電。蓄電池への夜間充電・昼間放電、生産ラインの稼働時間変更。
コスト効果基本料金(デマンド値)の抑制。基本料金の抑制 + 単価の安い夜間電力の活用。

法人の場合、空調の温度設定変更や照明の消灯といった運用改善に加え、蓄電池や自家発電設備の導入による自動的なピークカットが一般的です。

なぜ今ピークカットが必要なのか?電力需給の現状と系統制約

ピークカットが企業の喫緊の課題となっている背景には、日本の電力供給構造が抱える「需給バランス制約」と「系統制約」という二つの大きな問題があります。

電力需給の予断を許さない状況

2025年度から2026年度にかけての電力需給見通しは、非常に厳しい状況が予測されています。資源エネルギー庁の報告によると、2026年度夏季の東京エリアにおける予備率は、厳気象(10年に一度の猛暑)において「0.9%」(※)という、安定供給に最低限必要な3%を大幅に下回る速報値が出ています。

これは複数の大型火力発電所の補修停止や休止が重なる「電源移行の過渡期」特有の現象です。このような状況下では、国からの節電要請や需給ひっ迫注意報の発令が予想され、企業には自発的なピークカットによる負荷軽減が求められます。

※出典:経済産業省 東京エリアにおける2026年度夏季の追加供給力公募結果の事後確認について

再エネ導入拡大と出力制御

一方で、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入が進んだことで、逆に「電力が余る」ことによる出力制御も増加しています。2025年度には、再エネの出力制御エリアは全国に拡大しており、九州エリアでは年間出力制御率が6%を超える見込みです。

日本版コネクト&マネージとノンファーム型接続

さらに、既存の送電網を有効活用するための「日本版コネクト&マネージ」の導入が進んでいます。その柱となる「ノンファーム型接続」は、系統の混雑時に出力制御を受けることを条件に、新たな電源接続を認める仕組みです。

2023年4月からはローカル系統にも適用が拡大されており、今後、再エネ設備を持つ企業は、系統混雑時の出力制御(=発電ピークのカット)を適切に管理しなければ、事業予見性が低下するリスクを抱えています。加えて、2025年12月には、事業者が短期的な系統混雑を予見できるよう、今後1年間の電源接続見通しといった系統情報を各一般送配電事業者が公開する方向性も示されており、出力制御を前提とした計画的な需給運用の重要性が一段と増しています。

ピークカットがもたらすコスト削減と環境価値の向上

ピークカットは単なる「コスト削減」の手段から、企業の「環境価値」を高めるための戦略的手段へと進化しています。

基本料金の抑制効果

高圧・特別高圧の電気料金は主に、基本料金、電力量料金、再エネ賦課金で構成されます。基本料金は「契約電力×単価」で決まりますが、この契約電力は実量制の場合「過去1年間の各月の最大需要電力のうち、最も大きい値」が適用されます。

つまり、1年間のうちたった30分間だけでも高い負荷が発生すれば、その後1年間の基本料金に影響します。ピークカットによってこの最大値を抑えることは、直接的な固定費削減に直結します。

GHGプロトコル改訂と「アワリーマッチング」

世界的な脱炭素の基準であるGHGプロトコル(温室効果ガス排出量の算定・報告基準)の改訂が現在進められており、2027年には最終化される見通しです。この改訂案で注目すべきは、Scope2(購入電力の排出量)における「アワリーマッチング(時間単位のマッチング)」の導入です。

これまでは年間単位で再エネ証書を購入すれば「再エネ100%」と見なされてきましたが、今後の制度設計次第では、「電力を使用したその時間帯」に発電された再エネを紐付けることが求められるようになります。ピークカットを行い、再エネ供給が不足する時間帯の需要を抑えるなどの行動は、将来的に高い環境価値を維持するために不可欠となります。

こうした環境価値の調達手段として一般的なのが「非化石証書」です。2024年度分からは、すべての非化石証書に発電種別・発電所名・所在地などの「トラッキング情報」を付与する全量トラッキングが実現しており、どの電源に由来する環境価値かを特定したうえで活用できるようになりました。時間単位での再エネ紐付けが重視される流れの中で、ピークカットによる需要の最適化と、トラッキング付き証書による環境価値の調達を組み合わせる視点が一段と重要になります。

実践的なピークカットの手法と最新リソースの活用

効果的なピークカットを実現するためには、最新の技術や市場制度を活用することが推奨されます。

電力データの可視化とスマートメーターの活用

ピークカットの第一歩は、自社の電力使用状況を「見える化」することです。スマートメーターの普及により、30分単位の電力使用量(30分値)を把握できる環境が整っており、これらのデータを分析することで、いつ・どの設備がデマンドを押し上げているかを特定できます。デマンドの傾向を把握したうえで、蓄電池の放電や設備制御のタイミングを設計することが、業務に支障をきたさない無理のないピークカットの基盤となります。

蓄電池とBEMSの活用

産業用蓄電池を導入し、需要がピークに達する直前に放電を開始することで、系統からの受電量を物理的にカットします。これをBEMS(ビルエネルギー管理システム)と連携させ、デマンド予測に基づき自動制御することで、業務に支障をきたさず確実にデマンド値を抑制できます。

デマンド・リスポンス(DR)への参加

DRとは、電力需給が厳しい時に、一般送配電事業者や小売電気事業者の要請に応じて需要を減らす取組です。これに協力することで、報酬(インセンティブ)を得ることが可能です。2023年4月施行の改正省エネ法では、大規模需要家に対しDRの取組状況を報告することが義務化されており、企業の社会的責任としても重要視されています。

市場連動型プランと価格リスクヘッジ

近年、卸電力取引所(JEPX)の価格に連動した電力プランを選択する企業も増えています。市場価格が高騰する時間帯にピークカットを行うことは、電力量料金の直接的な回避につながります。

一方で、市場価格高騰時には料金上昇リスクもあるため、契約条件やリスク許容度に応じた検討が必要です。

【まとめ】ピークカットを軸とした次世代エネルギー戦略

2026年度に向けた深刻な供給力不足の見通しや、GHGプロトコルによる環境価値算定の厳格化を背景に、ピークカットはもはや「余裕があればやるべき節電」ではなく、企業の存続と競争力を左右する「不可欠な投資」へと変貌しました。

デマンド値の抑制による基本料金の削減、DR参加によるインセンティブ獲得、そしてアワリーマッチングを見据えた環境価値の維持。これらを同時に実現するためには、蓄電池や再エネの活用に加えて、自動制御システムの導入が有効な手段となります。自社の電力使用状況を可視化し、適切なタイミングでピークカットを実践することは、コスト削減のみならず、持続可能な社会への貢献という大きな付加価値を自社にもたらすでしょう。

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