燃料費調整額とは?仕組みや計算方法をわかりやすく解説

2024.05.31
2024.05.31
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毎月の電気料金に影響を及ぼすのが、燃料費調整額(燃料費調整単価)という項目です。燃料費調整額は、原油や石炭、液化天然ガス(LNG)などの燃料価格に応じて変動し、各月の燃料調整費単価に使用電力量を乗じて算定される仕組みです。

電力会社やプランごとに燃料費調整額の上限に違いがあるため、電力会社選びの参考にしてください。本記事では、燃料費調整額の仕組みや導入された背景、計算方法について解説します。

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燃料費調整額とは?

燃料費調整額とは、火力発電に使われる燃料価格(原油や石炭、LNG)の変動に合わせて、月々の電気料金を調整する金額のことです。燃料費調整額は毎月見直しが行われ、燃料価格が高騰すると電気料金に上乗せされ、燃料価格が下落すると電気料金から差し引かれます。

2022年には、資源大国であるロシアのウクライナ侵攻や、新興国のエネルギー需要の高まりなどの要因が重なって、世界的に燃料価格が高騰しました。例えば、2022年のピーク時の燃料輸入価格は対2022年1月比で原油は約1.7倍、石炭は約2.8倍、LNGは約1.7倍に高騰しています[1]。その結果、燃料費調整額も上昇し、日本国内の電気料金も一斉に値上がりしました。

ただし、燃料価格が高騰すると、その価格上昇分が際限なく電気料金に反映されるわけではありません。旧一般電気事業者が提供している電力自由化以前のプラン(規制料金)では電気料金の改定に経済産業大臣の認可が必要で、燃料費調整額にも上限が設けられています[1]

なお、旧一般電気事業者とは、2016年4月に行われた電力自由化以前に、電気事業の地域独占を行っていた10の大手電力会社です[2]

【参考】
旧一般電気事業者:北海道電力(北海道エリア)、東北電力(東北エリア)、東京電力エナジーパートナー(関東エリア)、中部電力ミライズ(中部エリア)、北陸電力(北陸エリア)、関西電力(近畿エリア)、中国電力(中国エリア)、四国電力(四国エリア)、九州電力(九州エリア)、沖縄電力(沖縄エリア)

2022年のエネルギー危機においても、毎月の電気料金に反映させる燃料費調整額の仕組みがあったおかげで、日本は他の主要国と比べて電気料金の値上げ幅が抑えられました[1]

なお、電力自由化後に設立された一部の電力会社(新電力)が提供するプランには燃料費調整額の上限が決められていない場合もあります。地域の電力会社と同じ燃料費調整額を採用している新電力もあれば、独自の燃料費調整額を設定しているところもあるため、電力会社選びの際に燃料費調整額の算定条件をチェックしましょう。

※現在、丸紅新電力では「燃料調整費額」の上限は設けておりません。
他社様の条件につきましては、各会社様にご確認ください。

[1]経済産業省 資源エネルギー庁「2023年6月の電気料金、なぜ値上がりするの?いくらになるの?」
[2]経済産業省 資源エネルギー庁「電気料金の改定について(2023年6月実施)」

燃料費調整額が導入された背景

燃料費調整額(制度19961月、電力会社の経営環境の安定化を図るために導入されました[3]

日本は原油や石炭、LNGなど、火力発電に欠かせない燃料の大部分を海外からの輸入に依存しています。燃料価格が高騰すると、火力発電の燃料調達コストも上昇するため、電力会社の負担が大きくなります。

そこで導入されたのが、燃料価格の変動を自動的に電気料金へ反映する燃料費調整制度です。当初は4半期ごとに電気料金を調整していましたが(例えば、1~3月の燃料価格が同年7~9月の電気料金に反映される)、2008年に燃料価格の大幅かつ急激な変動が起こったことを受けて、2009年に制度が見直されました[4]

現在は燃料価格をより速やかに電気料金へ反映させる仕組みに変わりました。(例えば、1~3月の燃料価格が同年6月の電気料金に反映される)

[3]資源エネルギー庁「総合資源エネルギー調査会電気事業分科会 第1次報告」
[4]経済産業省 資源エネルギー庁「燃料費調整制度について」

燃料費調整額の仕組み

燃料費調整額の仕組み

ここでは、燃料費調整額によって電気料金が決まる仕組みや、プラス調整・マイナス調整について解説します。

電気料金の計算式

電気料金の一般的な計算式は以下のとおりです。

電気料金=基本料金+電力量料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金

燃料費調整額は、毎月の使用電力量(kWh)に応じて決まる電力量料金を調整するためのものです。電力量料金は、1カ月の使用電力量と、電力会社ごとの電力量料金単価を掛け算して計算します。

この電力量料金に対して、その時々の燃料価格に応じて自動的に料金を値上げしたり、値下げしたりする仕組みが燃料費調整額です。

燃料費調整額のプラス調整・マイナス調整

燃料費調整額は、プラス調整(加算)やマイナス調整(減算)を受けて毎月変動します。

燃料費調整額がプラス調整になるか、マイナス調整になるかを決める基準となっているのは、直近3カ月の燃料価格を加重平均した基準燃料価格という指標です。

毎月の電気料金が決まる仕組みに興味がある方は、燃料費調整額の計算方法について知っておきましょう。

燃料費調整額の計算方法

燃料費調整額の計算方法

燃料費調整額の計算式は以下のとおりです[4]

燃料費調整額[円/kWh]=(実績燃料価格[円/kl]-基準燃料価格[円/kl])×基準単価[円/kWh]÷1,000

毎月の燃料費調整額を求めるには、実績燃料価格、基準燃料価格、基準単価の3つの項目が必要となります。

実績燃料価格

実績燃料価格は、電気料金に反映する月の3~5カ月前を対象として、原油・LNG・石炭の貿易統計価格の加重平均した値を指します。例えば、2024年6月の料金には、3~5カ月前である2024年1月から3月にかけての実績燃料価格が反映されます。

実績燃料価格が基準燃料価格を上回ると燃料費調整額のプラス調整が行われ、下回るとマイナス調整が行われます。

基準燃料価格

基準燃料価格は、”料金改定申請時の直近3カ月の原油・LNG・石炭の貿易統計価格の加重平均値”です[4]

なお、電力会社ごとの火力発電に占める燃料構成比(LNGや石炭を原油の発熱量に置き換えて計算)を加味して算出されています。

基準単価

基準単価は、”平均燃料価格が1,000円/kl変動した場合の1kWhあたりの変動額”です。
基準単価は、各電力会社の火力発電における燃料消費量を原油に換算し、販売電力量で割ることで算出されます。

燃料費調整額の推移

燃料費調整額は、その時々の燃料価格の変動に応じて、毎月見直しが行われます。また燃料費調整額は、電力会社や供給電圧の区分(特別高圧や高圧など)によって差があります。

例えば、東京電力エナジーパートナーの高圧季節別時間帯別電力プラン(契約電力:1,300kW、使用電力量:52万kWh)を例に挙げると、これまでの燃料費調整額の推移は以下のとおりです[5]

以下の例を見ると、2022年のエネルギー危機の影響を受け、燃料費調整額の値上がりが続いてきたことがわかります。ただし2023年2月以降は、国が電気・ガス価格激変緩和対策事業を実施したため、2023年5月に燃料費調整額がプラスからマイナスに転じました。

なお、電気・ガス価格激変緩和対策事業とは、”国民生活・事業活動を守るため、各小売事業者などを通じて、電気・ガスの使用量に応じた料金の値引きを行い、料金の上昇によって影響を受ける家庭・企業などを支援する事業”のことです[6]

年月燃料費調整額(円/kWh)
2022年7月4.01
2022年8月4.93
2022年9月6.27
2022年10月7.80
2022年11月9.39
2022年12月11.51
2023年1月12.54
2023年2月9.09
2023年3月7.79
2023年4月0.90
2023年5月-1.04
2023年6月-3.40
2023年7月-5.22
2023年8月-6.47
2023年9月-6.85
2023年10月-5.30
2023年11月-4.96
2023年12月-5.07
2024年1月-4.72
2024年2月-4.68
2024年3月-4.71
2024年4月-2.16
2024年5月-2.52

※2023年4月から2024年3月までは新料金適用前、2024年4月以降は新料金適用後の料金プランで算定

電気料金を少しでも安く抑えたい方は、各電力会社の燃料費調整額を確認しましょう。

[5]東京電力「燃料費調整単価等一覧」
[6]経済産業省 資源エネルギー庁「電気・ガス価格激変緩和対策事業」

【まとめ】燃料費調整額の仕組みを知り、お得な電力会社を選ぼう

燃料費調整額は、その時々の燃料価格に応じて、毎月の電気料金を調整するための金額です。燃料価格が高騰すると電気料金のプラス調整が行われ、下落するとマイナス調整が行われます。

規制料金には燃料費調整額の上限が決められていますが、自由料金には上限がないため、電力会社によって設定している燃料費調整額の上限が異なります。電力プランを選ぶ際はチェックしてみましょう。

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