2025年度最新!FIT/非FITのトラッキング付き非化石証書の仕組みとメリットを徹底解説
持続可能な社会の実現に向けて、企業や自治体が採用するエネルギーの選択肢として「非化石証書」が注目を集めています。非化石証書は、再生可能エネルギーの利用促進と企業の環境負荷低減に寄与する重要なツールです。しかし、従来の非化石証書には発行時点でのトラッキング情報が不十分であるなどの課題がありました。2024年度から「全量トラッキング」(発行段階から属性情報を一体付与)へ移行したことで、発行から移転まで一貫して属性が紐づく運用に整理され、後付けトラッキングの不確実性は大幅に改善しています。本記事では、FIT/非FITのトラッキング付き非化石証書の仕組みやその利点、さらに企業が直面するコーポレートPPA(Power Purchase Agreement)の課題とその解決策について詳しく解説します。
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目次
非化石証書とは?

非化石証書の基本概念
非化石証書(Non-Fossil Certificate)は、発電事業者が化石燃料を使用せずに発電(再生可能エネルギーや原子力)した電力量の環境価値を証明するための証書です。
この証書を購入することで、企業や個人は自らの電力使用量に証書をひも付け・償却することで、排出係数低減や実質再エネの達成を主張することが可能になります。これにより、企業は環境負荷を低減し、持続可能な社会への貢献をアピールできます。
従来の非化石証書の課題
従来の非化石証書にはいくつかの課題が存在していました。
特に、小売電気事業者や需要家が証書を購入する際に、発行時点でのトラッキング情報が含まれていなかったため、後からトラッキング情報を追加する必要がありました。このため、需要家が希望する条件での非化石証書を選択することが難しかったのです。さらに、証書の透明性や信頼性に対する懸念も指摘されていました。
FITと非FITの違い

FIT(固定価格買取制度)の概要
FIT(フィードインタリフ)は、再生可能エネルギーの普及を目的として導入された制度で、発電事業者が発電した電力を固定価格で長期間にわたり電力会社が買い取ることを保証するものです。
これにより、発電事業者は安定した収益を確保でき、再生可能エネルギーの導入が促進されます。FITの対象となる電力には、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスが含まれます。
非FIT電気の特徴
一方、非FIT電気とは、FITの対象外となる発電設備で生成された電力のことを指します。
非FITの発電設備には、運転開始から20年以上(住宅用は10年以上)を経過した設備や、FITの買取期間を終了した卒FITの発電設備が含まれます。最近では、太陽光発電や風力発電のコスト低下に伴い、FIT適用外となる新設の発電設備が増加しています。これらの非FIT電気は、FIP(フィードインプレミアム)対象の電源もあれば、FIPの対象外(商用品や卒FIT電源等)も含まれます(非FIT=FIPではありません)。
トラッキング付き非化石証書の仕組み

全量トラッキングの導入
2024年度から導入された「全量トラッキング」制度により、全ての非化石価値に対して発行段階から属性情報を付した証書(トラッキング情報)として取引・移転される運用に整理されました。これにより、非FIT電気も含めた全ての非化石証書が詳細な情報を持つこととなり、需要家は購入時により正確な選択が可能となります。
トラッキング情報の付与方法
全量トラッキングでは、非化石証書に以下のトラッキング情報が含まれるようになっています。
- 発電方法
太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど具体的な発電方法が明記されます。 - 発電所名
発電所の名称が記載され、どの施設から発電されているかが明確になります。 - 発電所所在地
発電が行われている場所が詳細に記載され、地域ごとのエネルギー特性を把握できます。 - 運転開始後15年未満か否か
RE100などの国際的な環境イニシアチブが求める「追加性(新たな再エネ設備への貢献)」を示すための情報です。運転開始から15年以内の新しい発電所からの電力・証書は、環境価値が高いと評価されます。
これにより、購入者は証書の内容を基に、自社の環境目標に最適な証書を選択できるようになります。さらに、将来的にはブロックチェーン技術などを活用して情報の改ざん防止と透明性の確保が図られています。これにより、証書の信頼性が一層高まり、企業や需要家は安心して証書を購入・利用することができます。
認定申請時の発電設備区分
発電事業者が非化石証書の認定を受ける際には、発電方法について詳細に区分し登録することが求められます。
ここでは、発電設備の規模や技術的特徴も考慮され、正確な情報がトラッキング情報として含まれます。このプロセスにより、証書の信頼性が大幅に向上し、需要家が安心して証書を購入できる基盤が整います。また、認定申請時には発電設備の運転開始日や所在地などの詳細情報を提出する必要があり、これらの情報は証書に反映されます。
トラッキング付き非化石証書のメリット

透明性の向上
トラッキング情報の付与により、非化石証書の内容が明確化され、透明性が大幅に向上します。
これにより、企業は信頼性の高い情報に基づいて証書を購入することができ、環境報告書への記載も正確になります。透明性の向上は、企業のCSR活動の一環としても重要であり、ステークホルダーからの信頼獲得につながります。
さらに、全量トラッキングの導入により、証書の発行から消費までの過程が一貫して追跡可能となり、不正や重複の防止にも寄与します。これにより、市場全体の信頼性が向上し、非化石証書の有効性が高まります。
環境負荷の適正評価
発電所の所在地や運転開始日といった詳細情報が含まれることで、環境負荷の低減や持続可能性の観点から証書を評価できます。
例えば、特定の地域における再生可能エネルギーの普及状況や発電技術の最新動向を考慮し、より環境に配慮した電力選択が可能となります。さらに、「運転開始後15年未満か否か」は、RE100などで求められる「追加性」(新たな再エネ導入への貢献)を示すため、証書の価値を判断する重要な指標となります。
企業の信頼向上
トラッキング付非化石証書は、発電所の詳細情報(所在地や発電方法など)を明確にすることで、企業の環境貢献活動に高い透明性をもたらします。
これにより、消費者や投資家からの信頼を獲得し、ブランド価値を向上させることが可能となります。また、ESGレポートや環境報告書において、単なる「再生可能エネルギーの利用」ではなく、「特定の地域にある、太陽光発電由来の再エネを使用している」といった具体的な情報を記載できるため、報告内容の信頼性が大きく向上します。これにより、持続可能な経営戦略の一環としてのエネルギー管理が効果的に行われ、長期的な企業価値の向上につながります。
| メリット | 内容 | 企業への効果 |
|---|---|---|
| 透明性の向上 | 発電方法・発電所名・所在地などを証書に明記 | ステークホルダーへの説明責任が果たしやすい |
| 環境負荷の適正評価 | 設備年数や地域特性から環境寄与度を評価 | ESGレポートや温対法対応で有利 |
| 信頼性の強化 | ブロックチェーン等による改ざん防止 | 投資家・顧客からの信頼向上 |
| 選択肢の拡大 | FIT・非FIT両方を条件付きで選択可 | 自社戦略に応じた柔軟な調達が可能 |
コーポレートPPAの課題と非化石証書による代替・補完の戦略

本章では、企業が再生可能エネルギーを直接調達する手段として広がるコーポレートPPA(Power Purchase Agreement)の特有の課題を整理したうえで、その課題に対して非化石証書が持つ利点を対比させます。
また、両者を組み合わせることで実現できるハイブリッド調達戦略についても検討します。ここで示す非化石証書は、全量トラッキング制度の導入により透明性を確保しつつ、PPA単独では克服しにくい制約を補完する役割を担うものです。
コーポレートPPAの課題
- 建設用地の確保の難しさ
PPAに基づき新規発電設備を建設するには、多くの土地が必要となります。
土地利用規制や地域条件の違い、高額な取得コストが企業の大きな負担となり、計画段階での調整やリスク回避策が不可欠です。そのため、プロジェクト実現性を阻害する要因となることがあります。 - 送配電網への接続の課題
発電所の立地によっては既存の送配電網への接続が容易でなく、高額な接続工事費や技術的課題が発生する場合があります。
これにより、供給の安定性や調達効率が損なわれる可能性があります。 - 長期契約に伴うリスク
PPAは10年以上に及ぶ長期契約で締結されるのが一般的です。
そのため、契約期間中に発電設備の故障や需要変動、拠点変更といった予見困難なリスクが発生し得ます。こうした不確実性は、事業計画の柔軟性を損ない、企業・発電事業者双方にリスク管理の負担を与えます。
非化石証書の利点 ― PPAの代替・補完として
- 柔軟性と物理的制約の回避
非化石証書は、土地確保や送配電網接続といった物理的制約を伴わずに、環境価値そのものを証書として取引できます。
これにより、大規模なインフラ投資を必要とせず、短期間で柔軟に調達が可能です。 - 透明性と説明責任への対応
全量トラッキング制度の導入により、証書には発電方法や所在地、運転開始日といった情報が付与されます。
企業は調達電力の環境特性を精緻に把握でき、CSR報告や投資家・取引先への説明責任にも対応しやすくなります。 - 補完策としてのハイブリッド調達
非化石証書はPPAを「代替」するだけでなく、「補完」する手段としても有効です。
例えば、PPA導入に伴う用地確保や長期リスクに直面した場合でも、証書を市場で調達することで不足分を補い、再エネ100%を実現する道が拓けます。このように、PPAと非化石証書を併用するハイブリッド調達戦略は、リスク分散と調達安定性の向上に寄与します。
制度の変更点と展望

資源エネルギー庁の動向
資源エネルギー庁は、2024年度から全量トラッキングを制度として正式に導入しました。
この変更により、非化石証書の発行時点でトラッキング情報が全て含まれるようになり、信頼性と透明性が大幅に向上しています。また、入札時の希望制に移行し、事前トラッキング予約が廃止されたことで、需要家は入札時に希望するトラッキング情報を選択できるようになりました。さらに、非化石証書の受け渡し時には必ずトラッキング情報を選択する必要があり、量のみでの受け渡しは不可となっています。
加えて、資源エネルギー庁は証書管理システムのさらなる強化を進めており、デジタルプラットフォームを通じた効率的な証書取引と管理が可能となっています。これにより、市場の透明性が一層高まり、参加者全体の信頼性が向上しています。
市場への影響と企業の対応
まず非化石証書のトラッキング対象の拡大が検討されています。
現在の制度では、3種類の非化石証書のうち、FIT非化石証書のみが全量トラッキングの対象となっています。
非化石証書購入時のポイント

トラッキング情報の確認方法
非化石証書を購入する際には、証書に含まれるトラッキング情報を詳細に確認することが重要です。
具体的には、以下の点に注意しましょう。
- 発電方法
太陽光、風力、水力、地熱など、企業の環境目標に合致する発電方法を選択。 - 設備所在地
地域ごとのエネルギー供給状況や法規制を考慮。 - 運転開始日
最新技術を用いた設備を選ぶことで、効率的なエネルギー利用が可能。 - 運転開始後15年未満か否か
設備の新旧を確認し、最新技術の導入状況を把握。
これらの情報を基に、企業は自社の環境戦略に最も適した証書を選択することができます。また、証書管理システムを活用して、複数の証書を比較検討することで、最適なエネルギー調達が実現できます。
条件に合った証書の選び方
企業は自社のエネルギー使用状況や環境目標に応じて、条件に合った非化石証書を選択する必要があります。
例えば、再生可能エネルギーの利用比率を高めたい企業は、太陽光や風力発電の証書を優先的に選ぶと良いでしょう。また、発電設備の所在地域や運転開始日を基に、長期的なエネルギー戦略を策定することが重要です。
さらに、費用負担方法の見直しにより、企業はコスト効率の良い証書選択が可能となっています。これにより、企業は予算内で最大の環境効果を得ることができ、持続可能なエネルギー利用を実現できます。
また、トラッキング情報を活用することで、企業はエネルギー供給の透明性を高め、ステークホルダーへの報告をより正確に行うことができます。これにより、企業の環境責任が明確に示され、信頼性の向上につながります。
【まとめ】

トラッキング付き非化石証書は、従来の課題を解決し、企業や需要家にとって多くのメリットをもたらしています。
2024年度から導入された全量トラッキングにより、透明性と信頼性が大幅に向上し、環境負荷の適正評価も可能となりました。これにより、持続可能なエネルギー選択をサポートする重要なツールとして期待されています。さらに、コーポレートPPAにおける課題解決にも寄与し、再生可能エネルギーの普及促進に大きく貢献しています。企業は多様なエネルギー調達オプションを活用でき、柔軟かつ効果的な環境戦略を実施することが可能となります。特に、非FIT電気の増加に伴い、FIP(フィードインプレミアム)制度との連携が進むことで、再生可能エネルギーの市場がさらに活性化しています。
企業は制度の変更を把握し、発電方法や発電所の所在地、運転開始日などの詳細なトラッキング情報を基に最適な証書を選択することで、環境負荷の低減と持続可能な成長を実現できます。透明性の向上や環境負荷の適正評価、企業の信頼向上など、複数の側面でのメリットを享受し、競争力を高めることが可能となります。持続可能な社会の実現に向けて、トラッキング付き非化石証書を活用した効果的なエネルギー戦略の構築が求められています。

