CCUSとは?仕組みやメリット、日本の現状と2030年に向けた課題を徹底解説

2026.08.28
2026.08.28
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2050年のカーボンニュートラル実現に向け、世界中で脱炭素化の取り組みが加速しています。再生可能エネルギーの導入や電化が進む一方で、鉄鋼やセメント、化学などの産業分野や火力発電所など、どうしてもCO2(二酸化炭素)の排出をゼロにすることが難しい領域が存在します。
こうした「脱炭素化が困難な分野(ハード・トゥ・アベート)」における解決策として期待されているのが、CCUS(二酸化炭素回収・有効利用・貯留)です。日本政府も「第7次エネルギー基本計画」において、CCUSを安定供給と脱炭素を両立させる不可欠な手段と位置づけています。
本記事では、CCUSの定義や仕組み、日本における最新の法整備状況、そして社会実装に向けた課題について詳しく解説します。

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CCUSとは?CCS・CCUとの違いと仕組み

CCUSとは「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略称で、CO2を分離・回収し、それを有効利用(CCU)したり、地中深くに貯留(CCS)したりする技術の総称です。CO2の回収源には工場・発電所などの排出源のほか、大気中から直接回収する方式もあります。

CCS・CCU・CCUSの定義

CCUSを理解するためには、まずその構成要素である「CCS」と「CCU」の違いを知る必要があります。それぞれの役割を整理すると以下のようになります。定も進められています。

用語正式名称概要
CCSCarbon dioxide Capture and StorageCO2を分離・回収し、輸送したうえで、地中の安定した地層に長期間封じ込める技術(貯留)。
CCUCarbon dioxide Capture and Utilization回収したCO2を資源(化学品、建材など)として捉え、素材や燃料などに再利用する技術(有効利用)。
CCUSCCU + CCS上記の両方(分離・回収・利用・貯蓄)をまとめた概念。状況に応じて包括的に選択・活用する。

さらに近年では、大気中から直接CO2を回収・貯留するDACCS(Direct Air Capture with Carbon Storage)や、バイオマス発電とCCSを組み合わせるBECCSなど、適切なライフサイクル評価、持続可能なバイオマス調達、恒久的な貯留などの条件を満たす場合、大気中のCO2除去(CDR)に寄与し得る手法も注目されています。
※参考:資源エネルギー庁 知っておきたいエネルギーの基礎用語「CDR」

  CO2を地中に閉じ込めるメカニズム

CCS(貯留)においては、地下約1,000~3,000mにある「貯留層」と呼ばれる砂岩などの隙間が多い地層にCO2を圧入します 。この際、CO2が地上に漏れ出さないよう、上部に「遮へい層(泥岩などの通さない地層)」があることが前提となります。

圧入されたCO2は、以下のステップを経て安定化します。

  1. 構造性トラップ:遮へい層の下にCO2が閉じ込められる(貯留)。
  2. 残留ガストラップ:CO2が移動する過程でバブル状になり、流動性を失い岩石の隙間に貯留。
  3. 溶解トラップ:圧入したCO2が深部貯留層内の地層水に溶け込み貯留。
  4. 鉱物化トラップ:長期的にはCO2が溶解した地下水と岩石鉱物とがと化学反応を起こして炭酸塩(岩石鉱物)として固定される 。

なぜ今CCUSが必要なのか?背景と重要性

世界がカーボンニュートラルを目指す中で、CCUSが注目される理由は、単なる補助的な技術ではなく「脱炭素化が難しい分野での排出削減に寄与し得る技術」だからです。

脱炭素化が難しい分野の救世主

鉄鋼、セメント、化学、石油精製といった産業は、製造プロセスそのものでCO2が発生するため、単なる「電力の再エネ化」だけでは脱炭素化が困難です。また、大型トラックや船舶、航空機などの運輸部門も電化が難しいとされています。これらの分野で排出を避けられない「残余排出」を相殺し、実質ゼロを達成するためには、排出されたCO2を捕まえて処理するCCUSやCDR(二酸化炭素除去)の技術が不可欠となります 。

  エネルギー基本計画における位置づけ

2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では、CCUSはエネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現に不可欠な技術と明記されています 。特に、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、最大限の排出削減努力をした後でも残るCO2を処理する最後の手段として期待されています。

政府は2030年までのCCS事業開始を目指しており、GX(グリーントランスフォーメーション)推進戦略の一環として、官民一体となった投資が進められています 。

日本におけるCCUSの現状と最新動向

日本では現在、実証実験の段階から、実際の事業化を見据えた「実行フェーズ」へと移行しています。

「CCS事業法」の成立と法的枠組み

2024年5月、CCS事業の適切な運営と安全確保を目的とした「二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS事業法)」が成立しました 。これにより、これまで不明確だった貯留に関する権利関係や保安規制が整備されました。

この法律の主なポイントは以下の通りです。

  • 導管輸送事業の整備
    CO2を長距離輸送するためのパイプライン事業に関する届け出制度を創設 。
  • 許可制度の創設
    経済産業大臣が特定区域を指定し、当該区域で試掘や貯留事業を適切に実施できる事業者を募集したうえで、試掘権・貯留権を設定。
    (※海域の特定区域指定や貯留事業の許可には、環境大臣の同意が必要)
  • 事業規制・保安規制
    操業中のモニタリング義務化や、事故発生時の報告義務、資金確保のための引当金積立などを規定 し、圧入停止後の管理も含めた安全・適正運用を図る仕組み。

    一定要件を満たした場合には、管理業務をJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)へ移管できる制度もある。

先進的CCS事業と貯留ポテンシャル

政府は2030年までに年間600万~1,200万トンのCO2貯留量を確保することを目指しています 。これに向け、2024年度には「先進的CCS事業」として9件のプロジェクトが採択されました (※1)。

日本の近海には、約1,460~2,360億トンのCO2貯留可能量があると推計されています 。これは日本国内の年間CO2排出量の100年分以上に相当します(※2)。現在、北海道苫小牧市や新潟県長岡市などでの実証試験を経て、さらなる適地の調査が進められています。

※1 2024年度採択事例:JOGMEC CCS事業化に向けた先進的取り組み
※2 環境省 CCUSについて

CCUS普及に向けた課題と解決のポイント

CCUSの社会実装には、技術的な確立だけでなく、経済性や社会的な受容性といった高いハードルが存在します。

コスト低減とバリューチェーンの構築

CCUSの最大の課題は、CO2の分離・回収、輸送、貯留にかかる多大なコストです。現在のコスト水準では、企業が自発的に取り組むには負担が大きすぎるため、政府は「先進的CCS事業」等を通じて、コスト競争力のあるバリューチェーン構築を支援しています 。

また、「カーボンリサイクルロードマップ」に基づき、回収したCO2をコンクリートや化学品、合成燃料(e-fuel)として再利用することで、CO2に付加価値を付け、経済性を改善する取り組みも進められています 。

地域の理解促進と安全性の確保

CCS事業は地下深くに大量のCO2を封じ込めるため、周辺住民や関係自治体の理解が欠かせません。過去の石油増産技術(EOR)などの知見を活かしつつ、地震・誘発地震、漏えい、地下水や海洋環境への影響などのリスクについて、地点ごとの地質評価、圧入圧力の管理、モニタリング、情報公開に基づいて丁寧に説明していく必要があります 。事業者は、モニタリングデータの公表や地域社会への貢献を通じて、信頼関係を築くことが求められます。

海外貯留という選択肢

日本政府が掲げる2050年のカーボンニュートラル達成には年間1.2億〜2.4億トンのCO2貯留(CCS)が必要と試算されていますが、国内での貯留適地確保には限界がある可能性を見据え、海外での「越境CCS」も有力な選択肢となっています。

現在、マレーシアやインドネシアなどの国営石油会社等と連携し、枯渇した油田・ガス田を活用した共同調査や事業開始に向けた検討が加速しています。実現に向けては、日本の貢献度を評価する二国間クレジット制度(JCM)の適用に向けた枠組みづくりに加え、ロンドン議定書に準拠したCO2越境輸送の二国間合意や、船舶・貯留施設の国際的な技術仕様の共通化など、外交・環境政策面でのルール形成が急ピッチで進められています。

【まとめ】CCUSの進展が日本のカーボンニュートラルを左右する

CCUSは、鉄鋼や火力発電といった日本の基幹産業を維持しながら脱炭素化を達成するための、極めて重要なテクノロジーです。

2024年の「CCS事業法」成立により、2030年の事業開始に向けた法的な基盤が整いました。今後は、技術開発によるコスト低減、効率的な輸送網(バリューチェーン)の構築、そして地域住民との合意形成が成功の鍵を握ります。
CCUSは単なる環境対策ではなく、日本の国際競争力を維持し、新たなカーボンリサイクル産業を創出する大きなチャンスでもあります。官民が連携してこの課題を乗り越えることが、日本の2050年カーボンニュートラル実現への確かな一歩となるでしょう。

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