SSBJ(サステナビリティ基準委員会)とは?改正を踏まえた日本版サステナビリティ開示基準の概要と企業が準備すべきポイントを徹底解説

2026.09.28
2026.09.28
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昨今、企業の持続可能性(サステナビリティ)に関する情報の開示は、投資家が企業の長期的な価値を評価する上で欠かせない要素のうちの一つとなっています。これを受け、日本においても国際的な整合性を保ちつつ、国内の実情に即した開示基準の整備が進められてきました。

その中心的な役割を担うのが、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)です。SSBJは、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が公表したグローバル・ベースラインを基に、日本版の「サステナビリティ開示基準」を開発し、2025年3月に最初の確定基準を策定・公表しました。

本記事では、SSBJの設立背景から、策定された基準の具体的な内容、そして企業が今後どのように対応すべきかについて詳しく解説します。

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SSBJ(サステナビリティ基準委員会)とは?

SSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)は、日本におけるサステナビリティ開示基準を開発・策定することを目的に、2022年7月に設立された組織です。公益財団法人財務会計基準機構(FASF)の中に設置されており、日本の会計基準を策定する企業会計基準委員会(ASBJ)のサステナビリティ版といえる存在です。則10年間、出力10kW以上は原則20年間)が満了することを指します。

SSBJの設立目的と役割

SSBJの主な目的は、高品質で国際的に整合性のあるサステナビリティ開示基準を開発することにあります。これにより、日本企業が提供する情報の信頼性を高め、国内外の投資家による適切な投資判断を支援することを目指しています。

SSBJの役割を整理すると、以下の通りとなります。

  • 国際的な基準(IFRSサステナビリティ開示基準)との整合性を保ちつつ、国内の実務や法制度に配慮した日本版の基準を開発・策定する。
  • ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)に対して、日本市場の意見を発信する。
  • サステナビリティ開示に関する専門的な知見を蓄積し、関係者へ情報提供を行う。

IFRSサステナビリティ開示基準との関係

SSBJが開発する基準は、国際的な「グローバル・ベースライン」として位置付けられているIFRSサステナビリティ開示基準と高い整合性を持つように設計されています。

ISSBは2023年6月に、最初の基準であるIFRS S1号(全般的要求事項)およびIFRS S2号(気候関連開示)を公表しました。SSBJは、これらの国際基準の内容を反映させた日本版の基準(SSBJ基準)を2025年3月に正式に発表しました。SSBJ基準は、IFRSサステナビリティ開示基準との相互運用可能性を確保することを目指しており、日本企業の開示情報の国際的な比較可能性を高めることが期待されています。

日本版サステナビリティ開示基準の構成と内容

SSBJが開発しているサステナビリティ開示基準は、大きく分けて「ユニバーサル基準」と「テーマ別基準」の2つの層で構成されています。

基準の全体像

025年3月には、我が国最初のサステナビリティ開示基準(2025年基準)が公表されました。具体的な基準の構成は以下の通りです。

表1:サステナビリティ開示基準の構成

基準の区分基準の名称対応する国際基準
ユニバーサル基準サステナビリティ開示基準の適用基準全体の適用ルールを規定
テーマ別基準第1号一般開示基準IFRS S1号に相
テーマ別基準第2号気候関連開示基準IFRS S2号に相当

ユニバーサル基準は、すべてのサステナビリティ開示に共通して適用される原則や適用時期などを定めたものです。一方、テーマ別基準は特定の項目に焦点を当てたもので、現在は「一般開示」と「気候関連」の2つが整備されています。

開示が求められる「4つの構成要素」

SSBJの基準では、投資家が企業のサステナビリティ関連のリスクや機会を評価できるよう、以下の4つの柱(コア・コンテンツ)に沿った情報開示を求めています。

  1. ガバナンス:サステナビリティ関連のリスクおよび機会を監視・管理するために企業が用いるガバナンスのプロセス、統制および手続。
  2. 戦略:サステナビリティ関連のリスクおよび機会に対処するために企業が用いるアプローチ。
  3. リスク管理:サステナビリティ関連のリスクおよび機会を識別し、評価し、管理するために企業が用いるプロセス。
  4. 指標及び目標:サステナビリティ関連のリスクおよび機会に関連する企業のパフォーマンス(設定した目標に対する進捗状況を含む)。

    ※参照:サステナビリティ基準委員会「サステナビリティ開示テーマ別基準第1号 一般開示基準」

この4つの構成要素は、現在の「気候関連」だけでなく、今後追加されるあらゆるサステナビリティテーマに共通して適用される骨組みです。また、すでに多くの日本企業が採用しているTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言とも整合しており、企業にとっては既存の開示体制をベースに発展させやすい構造となっています。

ただし、SSBJ基準はTCFD提言よりもさらに厳密な開示を求めています。例えば、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope 3)の算定・開示が原則必須となるなど、より高度なデータ収集と財務影響の評価が求められる点には留意が必要です。

サステナビリティ情報の質的特性と報告の原則

SSBJの基準に従って開示される情報は、投資家にとって「有用」でなければなりません。そのため、情報の質に関する厳格な特性が定義されています。

 有用な情報の質的特性

サステナビリティ関連財務情報の質的特性は、大きく「基礎的質的特性」と「補足的質的特性」に分けられます。

表2:情報の質的特性

区分特性内容
基礎的質的特性関連性情報が利用者による意思決定に差異を生じさせる能力を有すること。
忠実な表現経済的現象の実態を漏れなく、完全に、中立的に、正確に描写すること。
補足的基礎的特性比較可能性他企業の情報や、同一企業の過去の情報と比較できること。
検証可能性知識豊富な第三者が、描写が忠実であるという合意に達すること。
適時性意思決定に影響を及ぼし得るタイミングで情報が利用可能であること。
理解可能性情報が明確かつ簡潔に分類・特徴付け・提示されていること。

これらの特性を満たすことにより、企業のサステナビリティ情報が財務報告書と「つながりのある情報」として機能し、投資家からの信頼を獲得することが可能になります。 ※参照:サステナビリティ基準委員会「サステナビリティ開示基準の適用」

報告企業とバリュー・チェーンの範囲

SSBJ基準では、報告企業は関連する財務諸表の報告企業と同一である必要があります。また、自社の活動だけでなく、上流から下流に至るバリュー・チェーンにおけるサステナビリティ関連のリスクおよび機会についても、報告企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る場合には、開示対象となります。

ただし、サステナビリティ関連の機会に関する情報は、開示により商業上の機密情報が損なわれることが見込まれ、その悪影響が開示による便益を上回る場合、一定の条件の下で開示を省略できる定めがあります。この取扱いは、リスクに関する情報には適用されません。

なお、バリュー・チェーン全体の情報を集めるには膨大なコストと労力がかかるため、SSBJ基準では実務負担を軽減するための「経過措置(猶予規定)」が複数用意されています。例えば、最も対応が難しいとされる「Scope 3(サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量)」の開示については、基準の適用初年度の開示を免除する(2年目からの開示で足りる)といった、段階的な対応を認める仕組みが整えられています。

基準策定の経緯と今後のスケジュール

SSBJは短期間で集中的に審議を行い、基準の策定を進めてきました。その経緯を振り返ることで、現在の基準がどのような議論を経て成立したのかを理解することができます。

2024年から2026年にかけての進展

準策定の主要なマイルストーンは以下の通りです。

  • 2024年3月:サステナビリティ開示基準の「公開草案」を公表し、広く意見を募集。
  • 2024年11月:指標の報告のための算定期間に関する再提案を含む「公開草案第2号」を公表。
  • 2025年3月:寄せられた意見を踏まえ、我が国最初の確定基準(2025年基準)を公表。
  • 2026年2月: 【制度面の進展】金融庁が内閣府令の改正を公表し、2027年3月期からの有価証券報告書での開示義務化スケジュールが正式決定。
  • 2026年3月:ISSBによる修正などに対応するため、確定基準の改正(2026年改正基準)を公表。
  • 2026年6月: 日本独自の排出量報告制度(温対法)との連携をスムーズにするため、初の実務対応基準(第1号)を公表。

このように、SSBJは一度基準を策定して終わりではなく、国際的な動向や実務上の課題に合わせて、継続的に基準のブラッシュアップを行っています。

 適用に向けた企業の準備

SSBJ基準の適用時期については、上記マイルストーンにもあるように2026年2月の内閣府令改正により、東証プライム上場企業を対象とした段階的な義務化スケジュールが正式に決定しました。まずは2027年3月期より、平均時価総額3兆円以上の大規模企業から、有価証券報告書等での法定開示が順次求められます。

企業が準備すべきポイントとしては、以下の3点が挙げられます。

  1. 内部統制とガバナンスの構築
    サステナビリティ情報は財務情報と同等の信頼性が求められます。取締役会による監視体制の整備や、情報収集プロセスの構築が急務となります。
  2. データの収集・分析基盤の整備
    特に「気候関連開示基準」における温室効果ガス(GHG)排出量の算定など、バリュー・チェーン全体にわたる正確なデータの把握が必要となります。
  3. 第三者保証(サステナビリティ監査)への対応準備
    SSBJ基準に基づく有価証券報告書での開示は、適用の翌年度から独立した第三者による「保証(限定的保証)」を受けることが義務付けられます。そのため、単に数値を集めて開示するだけでなく、外部の監査人がその算定プロセスを検証・追跡できるよう、証跡の残る強固な業務フローを今のうちから設計しておく必要があります。

【まとめ】SSBJ基準を理解し、持続可能な企業価値の開示へ

SSBJ(サステナビリティ基準委員会)が策定する日本版サステナビリティ開示基準は、日本企業がグローバルな投資環境において適切に評価されるための「共通言語」です。

本基準は、IFRSサステナビリティ開示基準と整合性を持ちつつ、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」という4つの柱を中心とした透明性の高い情報開示を求めています。2025年3月に最初の基準が公表され、2026年にも迅速な改正が行われるなど、有価証券報告書での義務化(2027年3月期〜)に向けたカウントダウンはすでに始まっています。

企業にとっては、単なる法令遵守(コンプライアンス)としての対応にとどまらず、自社のサステナビリティ関連のリスクと機会を再認識し、経営戦略に統合していく絶好の機会でもあります。SSBJの最新情報を常に確認し、早期に準備を開始することが、長期的な企業価値の向上につながるでしょう。

>> 【法人のお客様向け】再生可能エネルギー由来の電力を組み合わせた環境配慮型電力プラン

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