卒FITとは?太陽光発電の活用方法と売電・自家消費のメリットを徹底解説
再生可能エネルギーの普及を目的として始まった「固定価格買取制度(FIT)」ですが、10年間の買取期間を終える「卒FIT」世帯が年々増加しています。これまで高い単価で売電できていた電力を、期間終了後にどのように扱うべきかは、多くの太陽光発電設置者にとって共通の課題です。
特に2024年から2026年にかけては、電力市場のルール変更や環境価値の取引制度の進化により、卒FIT電力の価値は単なる「余った電気」以上の意味を持つようになっています。自治体による地産地消の取り組みや、企業による環境貢献への活用など、卒FITを取り巻く環境は大きく変化しています。
本記事では、卒FITの定義や現状といった基礎知識から、終了後の具体的な選択肢、最新の市場動向、そして自社や家庭に最適なプランを選ぶためのポイントまで、詳しく解説します。 なお、卒FITは一般家庭(個人)だけの話ではありません。法人の事業所であっても、太陽光発電では出力10kW未満の設備は原則10年間、出力10kW以上の設備は原則20年間でFITの買取期間が満了します。
また、卒FIT電力を「調達する側(需要家)」として脱炭素経営に活かす法人も増えています。
本記事では、個人・法人それぞれの立場で押さえるべきポイントにも触れていきます。
目次
卒FITとは?制度の概要と現状

卒FITとは、住宅用太陽光発電(出力10kW未満)をはじめとする再生可能エネルギー設備において、国が定める固定価格での買取期間(出力10kW未満は原則10年間、出力10kW以上は原則20年間)が満了することを指します。
買取制度の変遷と「2019年問題」
住宅用の太陽光発電における余剰電力の買取は、現在のFIT制度が開始される前の2009年11月に「余剰電力買取制度」として始まりました。その後、2012年7月から現在の「再生可能エネルギー特別措置法(FIT)」へと移行しました。
制度開始から10年が経過した2019年11月以降、順次買取期間を終了する設備が現れ始め、これが「卒FIT」あるいは「2019年問題」と呼ばれ、社会的な関心を集めるようになりました。買取期間終了後は、法律による一律の買取義務がなくなるため、発電した電力は自家消費できるほか、小売電気事業者等と契約することで余剰電力を売電できます。買取価格・契約条件は売電先によって異なります。
卒FIT電力量の規模と将来見通し
卒FITを迎える設備は年々積み上がっており、その規模は非常に大きなものとなっています。資源エネルギー庁の「エネルギー白書2025」によるは、住宅用の太陽光発電設備は、2025年までの累積で約200万件・860万kWが卒FITを迎える(買取期間が満了する)と試算されています。
これらの設備が運転を継続し、発電した電力のうち30%を自家消費に回すと想定した場合、残りの余剰電力は年間で約60億kWhにものぼる見込みです。これだけで膨大な再生可能エネルギーの電力量となり、重要な供給源として期待されています。
卒FIT後の主な選択肢

買取期間が終了した後、発電した電力の活用方法は大きく分けて「売電」と「自家消費」の2つに集約されます。
小売電気事業者への売電(余剰電力の販売)
卒FIT後も、多くの小売電気事業者が余剰電力を買い取るメニューを用意しています。2019年当時の買取価格は1kWhあたり8〜10円程度が主流でしたが、近年のエネルギー価格高騰や自然エネルギーへの需要増加を受け、現在では新電力の独自プランなどで10円以上で買い取るケースも出てきています。
小売電気事業者にとっては、一般住宅から小規模な電力を集約する手間はかかりますが、卒FIT電力は「環境価値を伴う再生可能エネルギー」として価値が高いため、積極的な買取が行われています。
自家消費の拡大(蓄電池等の活用)
売電価格が購入する電気の単価を下回る場合、発電した電気を売らずに自ら使う「自家消費」のメリットが大きくなります。蓄電池や電気自動車(EV)、エコキュートなどを導入し、昼間の発電分を蓄電したり、昼間にお湯を沸かして夜間に活用したりすること(おひさまエコキュート)で、電力会社から購入する電気量を減らし、電気料金の削減につなげることができます。
個人と法人で異なる卒FIT後の選択肢
- 個人(一般家庭)の場合
買取期間が満了すると、余剰電力の売電先は自由に選べるようになります。
現在の電力会社で継続するほか、より条件の良い小売電気事業者へ買取先だけを切り替えることも可能です。
切り替えの際は、契約手数料や解約金の有無、対応エリア、買取単価、売電収入の振込頻度(支払いサイクル)などを確認しましょう。 - 丸紅新電力でも、契約手数料・解約金なしで全国(離島を除く)の卒FIT電力を買い取る個人向け「卒FIT買取サービス」を提供しています。
買取先の切り替えのみでも申し込めるため、電気の購入契約はそのままに売電先だけを見直すことができます。
- 法人(事業者)の場合
出力10kW未満の設備を持つ事業所は、個人と同様に売電先の切り替えや自家消費の拡大が選択肢になります。
一方、出力10kW以上の事業用設備は買取期間が20年のため、制度開始当初(2012年度)に認定を受け、運転を開始した設備でも卒FITを迎えるのは2032年度以降です。
ただし、卒FIT後は買取価格が大きく下がる前提で、自家消費率の引き上げ、蓄電池の併設、FIP制度への移行※、需要家との相対契約(コーポレートPPA)といった出口戦略を今から検討しておくことが重要です。さらに、発電設備を持たない法人であっても、卒FIT電力を再エネ電力や非化石証書として調達し、RE100やSBTといった自社の脱炭素目標の達成(Scope2削減など)に活用するという関わり方があります(第3章・第4章参照)。
※FIP制度の活用可否は、設備の認定状況、対象区分、申請時期等に左右されるため、卒FIT後の設備が一律に移行できるわけではありません。最新の公募・認定要件を確認してください。
卒FIT電力の活用事例と市場動向

卒FIT電力は、単なる電気としての価値だけでなく「CO2を排出しない」という環境価値に注目が集まっており、企業のRE100対応や脱炭素経営(Scope2削減)の手段として、その市場価値は年々高まっています。
自治体による「地産地消」の取り組みの革新
卒FIT電力を地域の活性化や企業支援に活用する自治体が増えています。
例えば埼玉県では、県内の卒FIT太陽光発電の余剰電力を集約し、「埼玉県産CO2オフセット電力(彩の国ふるさとでんき)」として県内の企業に販売しています。埼玉県は住宅用太陽光の導入件数が全国2位という背景を活かし、地元の電力を地元の企業が消費する「地産地消」のモデルを構築しています。
また、神奈川県横浜市でも同様の取り組みが行われており、市が運営するごみ焼却工場のバイオマス発電と卒FIT電力を組み合わせたメニュー「はまっこ電気」を企業向けに提供しています。これらの取り組みは、地域貢献を重視する企業にとって魅力的な選択肢となっています。
国内外の取り組みと成功事例
海外では、GoogleやAmazonなどの大手IT企業が、自社データセンターの効率化とクリーンエネルギー利用に巨額の投資を行っており、Googleは全拠点で平均PUE1.09以下(2024年実績)を達成するなど、世界をリードする実績を挙げています。国内においても、NTTグループや地域密着型の新電力会社が、エネルギー管理の最適化や地域連携を強化することで、省エネ対策と再生可能エネルギーの導入を着実に進めています。これにより、法人向け電力料金の削減や、各地域における電力供給の安定化が期待され、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた取り組みが加速しています。
非化石証書としての環境価値
卒FIT電力は、市場において「非FIT非化石証書」として取引されます。非化石証書とは、電気そのものが持つ「非化石価値」を取り出し、証書化したものです。
非化石証書にはいくつかの種類がありますが、卒FIT電力は「非FIT非化石証書(再エネ指定)」に分類されます。
■ 非化石証書の種類と概要
| 名称 | FIT非化石証書 | 非FIT非化石証書 (再エネ指定あり) | 非FIT非化石証書 (再エネ指定なし |
|---|---|---|---|
| 対象 | FIT適用設備 | 卒FIT太陽光、FIP認定設備、大型水力等 | 原子力、廃プラスチック等 |
| 発電方法 | 太陽光、風力、バイオマス等 | 卒FIT再エネ、大型水力 | 原子力、水素、アンモニア等 |
| 環境価値 | あり(再エネ) | あり(再エネ) | あり(ただし、自然エネルギーとみなさないため再エネ価値はなし。CO2を排出しないゼロエミッション価値のみ) |
| 主な購入者 | 小売電気事業者、需要家(一般企業も直接購入可能) | 小売電気事業者、需要家(一部[コーポレートPPA等]) | 小売電気事業者 |
卒FIT電力から得られる「再エネ指定」の証書は、CO2排出量を実質ゼロとみなすことができるため、脱炭素経営を目指す企業にとって重要な資産となります。
制度変更と今後の注目ポイント

卒FITを取り巻く制度や国際的な基準は、現在進行形で変化しています。
GHGプロトコル改定の影響
温室効果ガスの排出量を算定する国際的な規約「GHGプロトコル」の改定検討が進められています。検討中の改定案によっては、現在一般的に利用されている「FIT非化石証書」が排出量算定に使えなくなる可能性が指摘されています。一方で、卒FIT電力などの「非FIT」電源は、その価値がより高く評価される可能性があるため、今後の動向に注意が必要です。期待されています。
FIP制度への移行と直接取引の拡大
従来のFIT制度に加え、市場価格にプレミアムを上乗せする「FIP制度(フィードインプレミアム)」への移行が進んでいます。 2025年からは、従来認められていた卒FIT電源に加えて、FIP電源(FIT→FIPへ移行した設備も含む)の環境価値についても、発電事業者と需要家との直接取引が可能となっています 。これにより、発電事業者は販路が拡大し、需要家は必要な再エネ価値を中長期的に安定して確保しやすくなることが期待されています。
出力制御ルールの変更
再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、供給過剰時に発電を停止させる「出力制御」が課題となっています。2026年度末から2027年度にかけて(※記事作成時点)、優先給電ルールの変更(全国運用)が予定されており、出力制御の順番が「FIT電源→FIP電源」の順となるなど、より市場への貢献度を考慮した運用へとシフトしていく見込みです。
卒FIT後に向けた最適なプラン選びのポイント

卒FITを迎えるにあたり、どのような基準で新しいプランを選ぶべきでしょうか。
買取価格と付加価値の比較
まず確認すべきは1kWhあたりの買取単価です。しかし、単価だけでなく、以下のような付加価値も考慮する必要があります。
- セット割引:電気やガスの購入契約とセットにすることで、全体の光熱費が安くなるケース。
- ポイント付与:買取金額に応じて、地域のポイントや共通ポイントが付与されるケース。
- 蓄電池等の優待:蓄電池の設置を検討している場合、機器代金の割引や工事費のサポートがあるケース。
なお、法人(事業者)が卒FIT設備の売電先を選ぶ際は、買取単価に加えて、環境価値(非化石証書)の帰属先、自社の電力購入契約との一体提案の有無、複数拠点をまとめて契約できるかといった点も比較のポイントになります。
地域貢献や環境価値の考慮
自身の発電した電力をどのように役立てたいか、という視点も重要です。
- 環境価値の譲渡:自身の発電した電力が非化石証書として適切に活用され、日本の再生可能エネルギー比率向上に寄与しているかを確認することも、社会貢献の一環となります。
- 地産地消:埼玉県や横浜市の事例のように、地元の企業や公共施設に電力を供給するプランを選ぶことで、地域経済の活性化に貢献できます。
【まとめ】卒FITの価値を再認識し、最適な活用方法を選択しよう

卒FITは、(住宅用の場合)10年間の買取期間が終了する節目ですが、それは同時に「自らの電力を自由に、より価値高く活用できる新しいステージ」の始まりでもあります。
2025年までの累積でには860万kWという膨大な設備が卒FITとなり、その余剰電力は日本のエネルギー転換を支える重要なリソースとなります。選択しは多岐にわたり、小売電気事業者への買取価格の比較はもちろん、蓄電池やEV(電気自動車)の活用による自家消費での光熱費削減、自治体を通じた地域循環型エネルギーへの貢献、そして非化石証書としての環境価値の提供などが挙げられます。
特に近年のエネルギー情勢の変化による電気料金高騰リスクや、GHGプロトコルなどの国際基準の動向、企業の場合はRE100やCDPといった国際基準への対応やサプライチェーン全体での脱炭素要請を踏まえると、卒FIT電力が持つ「再生可能エネルギー由来の環境価値」への関心は高まっています。個人であればライフスタイルや価値観に合わせ、法人であれば脱炭素目標や電力調達方針に照らして、最新の市場情報を確認しながら、最適な電力プランを選択してください。