CO2排出係数とは?電気事業者の算定方法と企業が取るべき対策を徹底解説
脱炭素社会の実現に向け、企業には自社の温室効果ガス(GHG)排出量を正確に把握し、削減することが強く求められています。その算出において、最も基本的かつ重要な指標となるのが「CO2排出係数」です。
特に、電力の使用に伴う排出量(Scope 2)は、多くの企業にとって総排出量の大きな割合を占めており、どの電気事業者からどのようなメニューで電力を調達するかによって、企業の環境評価は大きく左右されます。
本記事では、CO2排出係数の定義から、電気事業者による算定の仕組み、国際基準であるGHGプロトコルへの対応、そして企業が取るべき具体的な脱炭素対策について徹底解説します。
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目次
CO2排出係数とは?基本概念と重要性

CO2排出係数の定義
CO2排出係数(炭素排出係数)とは、単位あたりの活動量(電力の場合は1kWhの使用)に対して、どれだけの二酸化炭素を排出するかを数値化したものです。単位は一般的に「kg-CO2/kWh」で表されます。
例えば、排出係数が「0.450 kg-CO2/kWh」の小売電気事業者から電力供給を受ける企業が、年間1,000kWhの電力を使用した場合、その排出量は450kg-CO2となります。
基礎排出係数と調整後排出係数の違い
日本の「温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)」に基づく報告制度では、以下の2種類の係数が使い分けられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基礎排出係数 | 発電時に実際に排出したCO2量を、販売電力量で割った純粋な数値。 ただし国内制度では算定方法や反映項目が見直されることがあるため、定義は各年度の公表資料・制度説明に沿って確認します。 |
| 調整後排出係数 | 基礎排出係数に対して、制度で定められた環境価値(非化石証書等)やクレジットの反映ルールに基づき調整した係数です※。 |
企業が温対法に基づき国へ報告する際は、原則としてこの「調整後排出係数」を用いて算出します。
また、令和7年度報告から電気の基礎排出係数の算出方法が変更され、基礎排出係数もメニュー別で公表される運用となっています。
電気事業者がCO2排出係数を算定する仕組み

電気事業者は、自社発電の燃料消費量等に加え、他社からの受電や市場調達等を制度で定められた算定ルールに沿って整理し、年度ごとに排出係数を算定します。
発電方式別の排出量
電力の排出係数は、その電気が「何によって作られたか」に大きく依存します。
| 発電方式 | 主な燃料 | 目安の排出係数(kg-CO2/kWh) |
|---|---|---|
| 石炭火力 | 石炭 | 約 0.9 ~ 1.0 |
| 石油火力 | 石油 | 約 0.7 ~ 0.8 |
| LNG火力 | 天然ガス | 約 0.4 ~ 0.5 |
| 再生可能エネルギー | 太陽光・風力・水力等 | 0.0(発電時の直接CO2) |
| 原子力 | ウラン | 0.0(発電時の直接CO2) |
※発電効率や設備条件で変動します。代表値の目安としてIEA等の公開情報を参照。
電気事業者は、これらの電源構成(エネルギーミックス)を組み合わせることで、事業者全体の平均係数を算出しています。近年では、特定の需要家向けに「再エネ100%メニュー」などのメニュー別排出係数を公表する事業者が増えています。
係数公表のサイクルと確認方法
環境省および経済産業省は、電気事業者から提出された実績値を取りまとめ、実績年度の翌年度の冬頃(概ね1〜2月頃)を目安に「電気事業者別排出係数(基礎/調整後等)」を公表します。公表後に内容が修正され「一部更新」として差し替えられる場合もあります。
(例:2024年度(令和6年度)実績の係数は、令和8年(2026年)1月9日に公表され、同年2月25日に一部更新されています。)
これは温対法に基づく正式な数値であり、環境省の公表資料(PDF/Excel)や、電気事業者が掲示する係数情報から確認が可能です。
※参考資料名称:環境省・経済産業省「電気事業者別排出係数(特定排出者の温室効果ガス排出量算定用)R6年度実績」(令和8年1月9日公表、令和8年2月25日一部更新)
企業におけるCO2排出量の算定方法

企業が自社の排出量を計算する際、電力の使用量(kWh)に使用している電力メニューの排出係数を乗じるのが基本です。
国内法(温対法)に基づく算定
日本の温対法制度下では、原則として、環境省・経済産業省が公表する「電気事業者別排出係数(提出用)」のうち、契約先事業者(および該当メニュー)の「調整後排出係数」を用います。
CO2排出量(t-CO2) = 年間電力使用量(kWh) × 調整後排出係数(kg-CO2/kWh) ÷ 1000
証書(非化石証書等)を活用した削減計算
企業が「非化石証書」等の証書やクレジットを活用する際は、温対法(法定報告)とGHGプロトコル(任意開示)でルールが異なる点に注意が必要です。
・温対法(法定報告):証書等の反映は、制度・報告様式の定めに従って行います。係数への反映や、控除・加算の扱いは制度上のルールに依存するため、需要家が独自に一般式で一律に「差し引き」計算するのではなく、公表されている係数や様式上の算定ルールに沿って整理することが重要です。
・GHGプロトコル:非化石証書等のEAC(環境属性証書)を、報告期間の電力使用量(kWh)に紐づけて主張し、Market-based算定に反映します。
※J-クレジット等のオフセットは、GHGプロトコルではScope 1–3排出量から差し引かず、別枠(オフセット)として開示します。
排出量(t-CO2e)=〔(EACで主張できるkWh×係数)+(残りのkWh×Residual mix等の係数)〕÷1000
※Market-basedでは、「証書1kWh×全国平均係数を控除する」といった一律の差引式で整理するのではなく、電力使用量に対してEAC等の属性を割り当てて算定する考え方が基本です。注意点として、再エネメニューや証書を用いる場合は、二重計上防止や期間(vintage)・地理的一致(市場境界)など、主張の前提条件を満たしているかを確認する必要があります。
算定における留意点:二重計上と時間帯の概念
排出量の算定にあたっては、経済産業省の指針等により以下の不正・誤認防止ルールが設けられています。
- 二重計上の禁止: 特定の環境価値(再エネ属性など)を複数の需要家に同時に販売することはできません。
- 時間帯の移転制限: 留意点として重要なのは、二重計上の防止と、証書等の地理的一致(市場境界)や期間(vintage)の一致です。
時間帯(昼夜)の一致は、GHGプロトコルの必須要件ではありません。
国際基準「GHGプロトコル」とScope 2への対応

グローバルに展開する企業や、CDP・RE100といった国際イニシアチブに参加する企業は、国内法だけでなく「GHGプロトコル」という世界共通基準に従う必要があります。
ロケーション基準とマーケット基準
GHGプロトコルでは、Scope 2(他社から供給された電気の使用)の報告に対し、以下の2つの基準での算出・報告が推奨されています(デュアル・レポーティング)。
- ロケーション基準(Location-based):
企業が所在する地域の平均的な電力系統(グリッド)の排出係数を用いて算出します。個別の契約内容に関わらず、地域の電源構成そのものを反映します。 - マーケット基準(Market-based):再エネ100%メニューを契約している場合でも、Market-basedでゼロ(または極小)として報告するには、環境属性(EAC)が品質要件を満たし、需要家向けに償却(無効化)され、二重計上がないこと等の条件を満たす必要があります。
残余ミックス(Residual Mix)の考え方
マーケット基準で算出する際、再エネ属性が特定されていない「通常の電気」に対しては、**「残余ミックス(Residual Mix)」**という係数を適用することが国際的な推奨となっています。これは、国全体の電源構成から、既に誰かに売却された再エネ価値(証書分など)を差し引いた、残りの電力の排出係数です。ただし残余ミックスが整備・入手できない場合は、Scope 2 Guidanceに従いグリッド平均係数等をフォールバックとして用います。
企業が取るべき脱炭素対策と電力調達のポイント

CO2排出係数を理解した上で、企業はどのようにアクションを起こすべきでしょうか。
CO2排出係数の低い電力メニューの選択
最も手軽な対策は、排出係数の低い、あるいは「ゼロ」を謳う電力プランへの切り替えです。
- FIT電気+証書: 再エネ指定の非化石証書(必要に応じてトラッキング付き)を、需要家向けに償却(無効化)したうえで実質再エネ(Market-basedで係数ゼロ等)として整理するプラン。
- 生グリーン電力: 発電所を特定し、直接その再エネ価値を調達するプラン。
コーポレートPPAと自家消費の検討
2026年現在、電力価格の変動リスク回避と確実な脱炭素化を両立させる手法として、「PPA(電力購入契約)」は導入が拡大しています。
- オンサイトPPA: 自社の屋根などに他社が太陽光パネルを設置し、発電された電気を買い取る。
- オフサイトPPA: 遠隔地の発電所から、一般の送配電網を介して直接再エネを調達する。(契約により再エネ価値と紐づけて調達する)
これらは、新規電源の開発につながる設計(長期契約等)の場合には追加性が期待でき、国際的に非常に高く評価されやすいです。
国際イニシアチブ(CDP・RE100)への対応
- CDPやRE100等では、再エネ調達について、調達手段(自家消費、PPA、再エネメニュー、証書等)や証書の品質(トラッキング、償却、二重計上防止)の開示が重視されます。推奨される考え方は、「再エネ属性を確実に主張できる手段を優先して組み立てる」ことです。自社拠点の敷地内での再エネ発電(自家消費)。
- 排出係数が極めて低い(またはゼロの)電気事業者との契約。
- どうしても削減できない残差分に対する証書の購入。
特に石炭火力比率が高い事業者の電力を使い続け、証書だけで相殺する手法は、近年「グリーンウォッシュ(見せかけの環境対策)」と批判されるリスクがあるため、慎重な検討が必要です。
まとめ:持続可能な経営に向けた排出係数の活用

CO2排出係数は、単なる計算上の数値ではなく、企業の「環境への誠実さ」を測るバロメーターとなっています。2026年のビジネス環境において、排出係数の低い電力への切り替えや再エネ導入は、単なる環境貢献にとどまらず、サプライチェーン維持や資金調達(ESG投資)における必須条件です。自社が契約している電気事業者の係数(基礎・調整後)を把握し、GHGプロトコルに沿った透明性の高い報告を行うことが、持続可能な経営の第一歩となります。まずは現在の契約プランの排出係数を確認し、必要に応じて、非化石証書の活用や再エネ電力への切り替え、PPAの導入といった多角的な検討を始めることをお勧めします。
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